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生き恥スキル ー恥を忍んで最強へー


第拾陸話「世界」



魔法をナルと訓練した日以降も、ナルに訓練をした。
ナルは魔法に関しても才能があり、こちらが伝えたことをガンガン吸収していった。末恐ろしい8歳児である。
俺も9歳児だから大して変わらんか。

ちなみに俺を引率してきたエドガー以下4名は公爵家の騎士団に罵倒込のしごきを受けている。
この前一緒に訓練をしたが、団員たちの目は死にかけ、エドガーはキレたティアナにボコボコにされていた。何故か嬉しそうにボコられてはいたが。あいつも応援団に加入する日は遠くなさそうだ。

ちなみにウィル様に秘剣みーせーて!って聞いたら、やーだーよー!って返ってきたわ。
曰く、見せたら秘剣じゃないじゃん?とのこと。そらそうか。ダメ元みたいなもんだったししゃーないね。


公爵家での滞在が1週間経ち、ようやく帰る日となった。

「アル。また来るのよ。そしてまた魔法を教えてね」

「大体教えちゃいましたけどね」

「まだまだよ。教えることがないなら作っておきなさい」

無茶言うなし。ポンポン新系統なんぞ作れるかいな。まあ魔法にはまだやれることはたくさんありそうだし、時間がある時にでも研究してみよう。

「ナルシアに色々と教えてくれてありがとうね。何を教えてもらったのかは魔法という以外は教えてくれないけどさ」

「いえ。こちらこそ長らく滞在を許してくださりありがとうございます。帰ってからの励みになりました」

「そうだな。仮にいつかシド団長を倒せたら秘剣をみせてあげよう」

「えっ!本当ですか!?良い目標ができました」

「まだまだアルには負けてやれんよ。ワシも更に強くなって待っておるぞ」

まだ強くなる気なんかい。それを聞いたうちの騎士団員たちはビクっと反応していた。

「アル様。私にもまた再戦をさせてくださいね。お待ちしております」

「アル。今度も勝てたらこいつ貰ってやってくれや」

びっくりしたのだが、シド団長とティアナ副団長は親子だったのだ。そして娘を嫁に出そうとするんじゃない。

「いやいや、そんなことでは決めてはいけませんよ。シド団長。ね。ティアナさん」

同意を求めたが満更でもない顔をしてるので、この話題を続けるのはやめよう。

「ではそろそろ出発します。カンザスに着きましたら改めてお手紙をだしますが、ヴィルヘルム公爵閣下とアルネ様にもよろしくお伝えください」

「うん。分かったよ。じゃあ気をつけてね」

ウィル様はカラっとした性格なので、こういう別れ際はサッパリしていて助かる。

一例して馬車へ乗り込む。

エドガーの号令で馬車は出発し、公爵家は遠のいていった。


さて。

今回の公爵家滞在は中々充実したものだった。
剣の訓練は言うに及ばず、魔法に関してもナルに教えることで、自分の中でも再確認ができた。

また、公爵家の書庫にも入らせてもらい色々と知ることもできた。

のんびりとした道中だ。
今後のことも考えて、今まで知り得た情報の整理と進路の検討をしていこうか。




まずは、この世界についてだ。

今、俺がいる大陸はリンド大陸と呼ばれている。リース王国はその中にある国家の1つだ。

大陸はざっくりと横長の楕円形のような形をしており、リース王国はその楕円形の大陸の中で北東部に位置している。


その他には……

北西部にはバルディア帝国。
領土は広大で軍備の増強に余念がない。現在の皇帝は5代目で建国からまだ100年程度しか経ってはいない。

南西部にはユートリア王国。
こちらは農業が盛んで、比較的温厚な国柄ではある。
ただし、一致団結し事にあたる場合は強国として力を発揮するようだ。

南東部にはミーマイナ共和国。
各都市から代表者を選び、中央議会にて運営を行っているようだ。貿易に強く、別の大陸とも商売をしているらしい。

最後に中央部にはミカレス神聖国。
一神教であり、神であるミカレスを信仰している。元々はちっぽけな村のようなものだったらしいが、他の国家から流れてくる者が増え今のような国としての体になったようだ。
中立国となっており、緩衝地帯としての役割を果たしている。

以上が大陸内の五大国家と呼ばれている国で、他にも小さな国や村が存在している。

また、ミーマイナが貿易をしているように、大陸外にも国は存在しているらしい。
どのような文化圏なのかは分からないが、学院に行けば学ぶことができるだろうか。

また神についてだが、はるか昔には神は普通に人々の生活圏にも現れていたらしい。何故かは分からんけどその時代はなくなり、今ではミカレスという神が信仰されている。ただ、その神々の時代の末裔の国があるようで、いつかそちらにも行ってみたいものだ。
俺にふざけたスキルを与えた疑惑があるので、こちらも少しずつ調べていこう。



次に魔物のことだ。

魔物は主に自然界において現れる。
魔力による変化を経て、繁殖していったのが今の魔物とされる生き物ということだ。

そして、モルスの森にもいるとされる進化種の存在だ。おそらく魔物たちにもレベルのようなものがあり、魔物同士や人間を屠ることで進化をしていくのだろう。ここらへんは詳しいことが分かってはいない。
ただ、進化した個体のうち「名付き」と呼ばれる個体がいる。ネームドのことだろう。
これらは知能が高く、戦うとかなりの被害がでる。
かつて名付きが統率する魔物が街を襲い壊滅させられたこともあるようだ。

そして、魔物といえば冒険者だ。
嬉しいことに冒険者ギルドはしっかり存在していた。
国家間を跨ぐ不干渉組織で、魔物の討伐や素材の加工、未知の発見などを生業としている。
いつかは自分も冒険者登録をして未知のなにかを発見してみたいと思う。
楽しみの1つだ。


最後に自分のこれからについてだ。

ダリルに跡を継いでもらうことをどのタイミングで言うべきか迷っている。まだ早すぎる気もするしなあ。
ダリルが10歳くらいなってからでいいかな。
適当ではあるけど。うちの両親もそこまで問題視はしない気もするし。

そして、学院ではより世界のことを知りたい。
正直、オストみたいなやつが他にもいるだろうし、面倒くささが強いが色々な領地や街から来ている人間の話は聞いておくべきだろう。
それに、友人がナルだけというのもどうかと思うし。
むしろ、ナルに友達ができるのか疑問ですらある。次々と家来とか言わなければよいが。

学院と並行で冒険者の登録もできたらしてしまいたいし、休暇には他の国や、叶うかは分からないが他の大陸にも足を伸ばしてみたい。


あとは、そうだな。
タバコが吸いたい。
なんかたまに手が寂しいと思っていたんだよ。
よく考えたら前世は喫煙者だった。
この世界に来てからタバコも葉巻もみていない。おそらく存在していないのだろう。
タバコを作るか、もしくは別の大陸に存在しているのか。ミーマイナに売ってないかな。
思い出したら吸いたくなってきたわ。


そんなことを考えているうちに、意識は途切れカンザスへと揺られて行った。

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