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読書録~The premonition by Michael Lewis 指揮官不在のアメリカのパンデミック対策

Liars Poker等の著作で有名なMichael Lewis氏の新作は、アメリカのパンデミック対応の陰で活躍した人々と、CDCのInactionに焦点を当てた作品で、相変わらずとても面白かったです。

CDCのトップは、現在は大統領が選任する役職だそうです。ホワイトハウスのスタッフは、大統領が変わると総入れ替え、政府の要職の多くもそうです。そのために、知識や経験が蓄積されず、データや経験に基づいた判断や政策が行われない問題について、彼は前作のFifth Riskでも取り上げています。

パンデミックの対応を主導することが期待されているCDCが全く動かないため、各カウンティのPublic Health Officerが、自分の政治生命にとどまらず、まさに命を賭して、先陣を切ってStay At Home Order等の対応を始めることになったそうです。(最初に動いたカリフォルニア州のオレンジカウンティやサンタクレアの長官達は、家にDeath Thredが届いたり、24時間体制の警察の警護が必要になったりしたそうです)

著者は、一般の私たちが知らない、でも世の中に大きなインパクトを与えている影の功労者の人たちを見つけて、取り上げるのが本当に凄いと思います。


例えば、Charity Dean氏。彼女は、サンタバーバラのPublic Health Officerを経て、Covid-19が発生した際は、カリフォルニア州のAssistan Public Officerの職についていた人です。サンタバーバラでの結核の拡大の予防や、カリフォルニア州の急速なCovidテスト実施力の拡大に貢献した人で、Covid-19のついて早期に警鐘を鳴らしてたそう。

それから、ブッシュ・オバマ政権でパンデミック対応策を作った、Carter Mescher氏をはじめとするドクター達。1918年のスペイン風邪の大流行のデータを再解釈し、早期のSocial Distancing等の介入が後の流行に大きく貢献することを導き出した人たちです。彼らもまた、Covid-19の危機について早くから気が付き、対策を考えていました。

それから、カリフォルニア大学で遺伝子解析のラボを率いて、様々な謎の病気の診断に貢献するJoe Dersi氏。

そんなカッコいい人たちの活躍に胸を撃たれ、感謝しつつ、物凄い勇気のある人たちの犠牲で何とかシステムが回っている状態なのは、怖いなあと、、。

Premonitionという単語、今まであまり見たことがなかったのですが、予感、予兆といった意味でしょうか。この未曽有の事態から、公衆衛生や伝染病予防の領域で、変化が起きることに期待です。


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