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ハニーアイランドを愛でる会

 この記事は2021年12月21日に投稿しました。
 12月21日はハニアの日(8月21日)の4ヶ月後です。
 2021年はハニアの年(821年)の1200年後です。


はじめに

 ハニーアイランド。
 それは今や非常に有名であり、最も人気があると言っても過言ではないペンシルパズルです。
 新聞の紙面。電車の中吊り広告。家の天井。ハニーアイランドは、生活の様々なところで見ることができます。若者の間では、ハニーアイランド型スマートフォンが流行の兆しを見せているようです。来年度からは、学校の教科の1つになるとも聞きました。
 また、ハニーアイランドの大会も日夜開催されています。トップの選手は1問平均1.5秒を切っていてすごいと思います。日本人の選手が0.821秒という記録を出し、アジア記録を更新する快挙を成し遂げたことはまだ記憶に新しいです。私は2秒はおろか、3秒を切ったことすら1度しかありません。
 そして、日本政府のハニーアイランド建造計画が先日発表されました。まだ全貌が明らかになっているわけではありませんが、可愛いのは勿論、観光資源としての役割も期待することができるでしょう。
 ただアメリカは、宇宙にハニーアイランドを建設しようとしているようです。流石アメリカというべきなのでしょうか。中国にも似た動きがありますし、苛烈なハニーアイランド開発競争の時代が幕を開けようとしているのかもしれません。

 以上は私の妄想です。


ハニーアイランドとは

盤面のいくつかのマスを黒く塗って、盤面に面積6のシマ(白マスのカタマリ)が6つあるようにしてください。
(Puzzle Squareより引用 2021/11/4)

ハニーアイランド(ペンシルパズル百科)

ハニーアイランドの例。かわいい


 見て分かる通り、非常に単純なルールのペンシルパズルです。略称はハニアです。
 本質的にはグラフと自然数の組(6,6,6,6,6,6)なので、様々なバリエーションを考えることができます(後述)。

ハニーアイランドが解けるところ

パズルスクエア
 ハニーアイランドが100問以上投稿されています。変種ルールもあります。いいねの個数の安定感は折り紙付きです。

ハニーアイランド10000問
 ハニアが10000問あるサイトです。何周もすればよりたくさん遊ぶことができます。私は22000問以上解かせていただいています。問題盤面の黒マスは常に12個のようです。
 私のスマートフォンで確認しているですが、ブラウザの前のページに戻るボタンを押した直後だと「次の問題」ボタンが問題を1つ飛ばしてしまいます。解き損ねると勿体ないので気を付けましょう。


ハニーアイランドの魅力

ルールが簡単
 ルールが非常に簡単です。ただし、六角形盤面は見慣れないかもしれません。
作問が容易
 問題を、誰でも簡単に作ることができます。是非作ってパズルスクエアやツイッターに投稿してみましょう。
ネット上の問題が豊富
 10000問以上あり、ネット上のパズルの中ではかなり多い方だと思います。ただ1問1問が軽いので、かかる時間を比較するとそこまででもないですが。
誰でも解くことができる
 筑駒ハニア部さんも言っていたような気がしますが、ハニアは時間は多少かかるにしても誰でも解くことができます。難しくてどんなに考えても解けない、ということはほぼないと思います。
かわいい🐝
 愛くるしい(私見)見た目をしています。かわいいです。現実の蜂は怖いので苦手です


ハニーアイランドの解き方

 ハニアには手筋がない、という考えをTwitterで見かけました。
 しかし、それはあまり正しくありません。手筋という単語が当てはまるかは微妙ですが、ハニアには、ある程度の定石があります。

①効率良く埋める
↓ ↑
②修正を試みる 詰まったら全消し

 というループをすれば、いつか正解の盤面に辿り着くことができます。一見ただの試行錯誤に思えるかもしれませんが、この①と②には様々なテクニックが存在します。

①効率良く埋める

 空の盤面を眺めていても始まりません。まずは全体をそれっぽく埋めてみます。
 ハニアでは、黒マスは表出されているものを合わせ25個と決まっています。問題が唯一解であることを前提とすると、黒マスは不足気味です。少ない個数の黒マスで分けることが重要です。

 周長定理というものもあります。

 例として、この問題を考えます。

 左上を「効率良く」切り分けてみます。

 これはどうでしょう。黒マス3つで、領域1つが生まれています。
当然、正しいとは限りません。適当に「効率良く」しているだけです。

 さらに、左下も埋めてみます。

 また、黒マス3つで領域が1つ生まれました。しかしこの場合、3つの黒マスの取り方は複数あります。

 どちらなのか確定しないから保留……する必要はありません。そもそも2つのいずれかである確証もありませんし、前者だと思って進めてみます。ただし、可能性が複数あることをなんとなく覚えておくと、②の修正で役に立つかもしれません。

 1つのシマの面積が足りませんが、全体を埋めることができました。これで「①効率良く埋める」は完了です。

 今回は「1マス足りない」状態になりましたが、「1マス多く1マス少ない」状態になることもあります。

 あまりにもマス数が足りなかったり、分裂したりしている場合は、容易に調整できないようなら全消ししてやり直しましょう。この時点で解くことができれば、勿論万々歳です。

 

②修正を試みる

 ハニアは、某snakeとは異なり惜しい盤面から修正して正解することが充分可能です。

 まず、盤面全体の「余裕」を考えます。「余裕」を白マスの個数が36よりいくつ多いか(=黒マスの個数が25よりいくつ少ないか)と定義します。今あるシマの面積が5,6,6,6,6,6なら-1ですし、5,6,6,6,6,7なら0です。当然、最終的には0になる必要があります。

 修正の基本となるのが「1マス移動」です。

 これは分かりやすい例ですが、左上隅の黒マスを1つ右に動かせば正解です。

 こうなっていた場合は、2回動かす必要があります。

 面積が移動している、と考えれば分かりやすいと思います。いうなれば、移動が可能な境界を道とした迷路となっています。

 余裕が0の場合は、適当に「1マス移動」を繰り返すだけでも解けることが多いです。

 また、1マスではないですが、以下のような交換もあります。


 これは、後述するユニークネスと合わせると強力に作用することがあります。

 「1マス移動」で解くことができる例を2つ挙げます。目解きしてみましょう。


余裕を増やす方法

 余裕が負の場合、なんとかして増やす必要があります。また負でなくても、増やしてから減らしたり、逆に減らしてから増やしたりすることもあります。

 余裕を増やすには、主に2つの方法があります。

 1つ目の方法は、黒マスを埋めて、既にあるシマの一部にするイメージです。具体例を挙げます。

 余裕が-1の盤面です。下の部分を少し動かしてみます。

 すると、1つ埋められて仕事がなくなっている黒マスが生まれます。そこを白マスにすることで、余裕を0に増やすことができました。

 (余裕を減らさず埋めることで埋まったマスが白くなり余裕は増えますが、余裕を1つ減らしながらでも埋めることで余裕を減らさないまま盤面を変化させることも可能です。)

 これと「1マス移動」を用いれば、先程挙げた問題も解けるはずです。ここから目解きしてみましょう。

↓下に解答


 2つ目の方法は、2つの黒マスを同じ役割(同じシマの境界)のまま1つの黒マスにまとめるものです。3つから2つにすることもあります。

 折角なので、この問題もここから目解きしてみましょう。

↓下に解答


 では、実際にこれらを使って①で扱った問題を解いてみましょう。

 5マスの領域に「1マス移動」が可能な箇所はありません。そこで、下のシマを動かしてみます。

 すると、迷路の道を辿るように次々と面積を移動することができます。

 右下で余裕を増やすことができます。

あとは一手です。

 これで、解くことができました。最後の形は頻出なので、覚えておくと良いかもしれません。

 適当に面積の移動を繰り返し、解答への道が見えたらそこに進むことが基本方針です。

 しかし、首尾良く解けるとは限りません。先程の盤面には、以下のような選択肢もあります。

2マスに分かれ余裕を1減らし、2マスを埋めて余裕を2増やし、総合で余裕を1増やす大技


 余裕は0なので負ではありませんが、特に左上のシマが間違っていることが厳しく、このまま彷徨っても正解にたどり着くことはかなり難しいでしょう。

 色々修正しても解けない、という時は潔く全消しすることが吉です。
 ①をもう一度行う時は、前回とは別のところから埋め始めたり、敢えて大きく異なる分け方をしたりしてみましょう。

細かいテクニック

ユニークネス

 ユニークネスとは、問題が唯一解であることを前提に問題を解くことです。ハニアでも、ユニークネスを強く意識すると有利な場面があります。

 これは先程扱った移動ですが、この移動したところは、周囲に何も影響を与えていません。その為、この盤面で上の部分を修正するだけで解けてしまうことはあり得ないと分かります。

 ユニークネスが強く作用する例を挙げます。

 この問題の右下は、大体2つ考えられます。

 2つの可能性は、最終的に1つに確定されなければいけません。すると、次のようになると予想することができます。

 このように明確に決まる場合でなくても、すでに埋まっているところが局所的に複数解なら、そこを変える必要があると意識することができます。

 また、表出が線対称/点対称の時解答も線対称/点対称になることもユニークネスですね。

Y字路

 

 私の経験則の1つとして、Y字路は中空によく現れます。

 先程扱った問題を見てみましょう。

 Y字路がたくさんあります。

 Y字路は(周長定理より)効率が良いので、中空という表出の邪魔が少なく効率を重視できる場所で現れやすいのだと思います。

 これは結構よく見ます。

中空が大きい問題の対処
 表出を外周に寄せている問題は結構見ます。大抵ハバネロやアゼンと評価されていますが、
 ・Y字路が頻繁に出現
 ・外周効率(参考)が非常に良いシマが多く出現
することを意識して「①効率良く埋める」→「②修正を試みる」を丁寧に行えばそこまで難しくない、どころか下手に情報量が多く紛れに躓きやすいものより簡単だと思います。

余裕を減らす
 余裕が正なのに解けない、ということはたまにあります。具体的にいうと5,6,6,6,7,7です。この時、ある程度の確率で以下のような移動が最終手になります。

時間を空けて再挑戦する
 
思いこみにより詰まってしまうことはあります。全消しして、時間を空けて再挑戦することも選択肢の1つです。

①と②を同時に行う
 
①と②の2つの段階があるように書いたのは、①でとりあえず全て埋めないと余裕を数えることができないからです。しかし、ある程度慣れれば余裕を実際に数えることなく効率良く分けられているか感覚で判断し、適宜修正しながら埋めることができます。かかる時間を縮めるという点で有用です。

 どうでしょう。ハニアには手筋があることが分かったでしょうか。


ハニーアイランドの作り方

 ハニアの魅力として、簡単に作ることができるということを挙げました。

 ①ハニーアイランドリアルタイムソルバを開く
 ②適当に黒マスを置く
 ③完成

 (ハニーアイランドは、リアルタイムソルバが存在するおかげで成り立っているといっても過言ではないと思います。)

 「適当に黒マスを置く」と書きましたが、実際には何かしらの趣向が存在し、それを満たすような盤面を試行錯誤で探すことが多いです。
 私が知っている趣向を挙げます。

黒マスで文字や模様を書く
 「ハニア」や数字は見たことがあります。hexであることは一長一短です。模様の類も割と見ます。

黒マスの個数を出来るだけ減らす
 黒マスの位置に意味を持たせる場合は余剰が生まれがちですが、余剰を無くして個数を減らす趣向もあります。こんなに少ないのに決まる、というインパクト(≒絶望)もあります。

黒マスを外周に寄せる
 Y字路のテクニックでも触れましたが、中空を大きくする趣向は結構見ます。大抵個数減らしと併用される、というより外周に寄せると必然的に個数は減ります。

埋まる窪みを作る

 感覚に反しているので、割と好まれます。周囲が強引になりがちですが、それを自然に見せることには1つの技量が問われるかもしれません。ハニア10000問でもたまにあります。

同じ列に2つ以上の表出がないようにする
 先日考えましたが、1つ(とそれと合同なもの)しか見つけることができていません。そしてそれは🐝🐝🐝🐝🐝🐝🐝🐝🐝24🐝🐝🐝🐝🐝🐝🐝

・🐝🐝🐝🐝🐝🐝🐝🐝🐝🐝🐝🐝🐝🐝🐝🐝🐝🐝🐝🐝🐝🐝🐝🐝🐝🐝🐝🐝🐝🐝🐝
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ハニーアイランドの変種ルール

 ハニアの変種ルールを考えることには、ソルバーを使うことができないため手動で唯一解確認をする必要があるという障害があります。色々作ってみたいのですが・・・
 以下は私が知っているものや考えたことがあるものです。実際の問題を解いたことがあるとは限りません。

盤面の形状
 ハニアは六角形盤面であることが大きな特徴ですが、ルールとしては六角形である必要は全くありません。そもそもマス目である必要すらなく、グラフの頂点と一般化することができます。これは、角度(直進等)や長さといった概念がルール上扱われていないからです。

マスの面積
 通常ルールでは常に1ですが、マスに大小をつけることも可能です。複数のマスが最初から繋がっている、と捉えるならbordersの親戚かもしれません。

シマの面積、個数
 一般は(6,6,6,6,6,6)ですが、当然いくらでも変えることができます。シマが821個あると八二一アイランドです。
 シマの面積が同じである必要もありません。面積が異なると唯一解にするのに苦心しそうですが。
 面積は常に2、個数は問題によって異なるが自明であり、各領域にシマのマスが2つという追加ルールがあるものをのりのりといいます。

シマの形
 シマの形を与えているものをパズルスクエアで見たことがあります。「1マス移動」等ができないのであまりハニアらしくない気もします。

三角禁(頂点囲み禁)
 考案はわんどさんです。わんどさんに教えていただきました。TapaみたいなルールですねY字路を駆使する必要があります。

黒マスひとつながり
 よくあるルール要素ですが、そこまで制約は強くありません。とりあえず輪っかのシマの出番は無くなります。
・表出でない黒マスひとつながり
 問題を作ることができたことはありませんが闇だと思われます。

白マス表出
 黒マスだけでなく、あるいは代わりに白マスが表出されているというものです。

borders
 片方が白で片方が黒、という壁が表出されているものです。

japanese
 イラストロジックのルール(全列表出ではない)です。PGP2020R6でにょろっぴぃさんが出題されていました。

次の一手ハニーアイランド 
 与えられている表出から確定する黒マス1つを当てるというルールです。

次の一手次の一手ハニーアイランド (二次の一手ハニーアイランド )
 加えることで次の一手ハニーアイランドとして唯一解になる黒マス1つを当てるというルールです。

呼吸禁
 解き終えるまで呼吸してはいけないというルールです。私は5問くらいまとめて行っています。呼吸してしまったら負け、しないで解き終えたら勝ちという勝敗があります。事故が起きても私は責任を取りません。

ハニーアイランドinハニーアイランド(仮称)
 ハニアの各マスにハニアがある、というものです。少し作り始めていましたが、ほぼ同じことを考えていたhomeさんの主催によりハニア以外のパズル種も取り込んだ上でPBR3day8として実現しました。


おわりに

 ハニーアイランドは、多くのペンシルパズルとは異なり、1マスずつ論理的に確定させていくパズルではありません。しかし決して、闇雲な試行錯誤に依存しているわけでもありません。ハニアにはハニア独自の解き方、味があります。
 この記事をきっかけに、ハニーアイランドに少しでも興味を持っていただけたら幸いです。
 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

 以上はペンシルパズル Advent Calendar 2021の21日目の記事です。
 前の記事→ヤジリンを作ってみた+α
 次の記事→パズル双六と新年

参考文献

・パズルスクエア
https://puzsq.jp/main/index.php

・ペンシルパズル百科
https://scrapbox.io/puzzle-pedia/

・Wand's Box
https://scrapbox.io/wandsbox/

・PGP/SGP
https://gp.worldpuzzle.org/

・私の記憶



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