好きな人のパーカーのフードには、何か入れたくなるらしいよ

「あのとき始まったことのすべて」という小説を読んだ。

社会人3年目、営業マンとして働く主人公が、中学時代の同級生と10年ぶりに再会する。奈良の東大寺を訪れた修学旅行や、複雑な気持ちを秘めて別れた卒業式、、当時の面影を残す彼女を前に、楽しかった思い出が一気に甦る。
そして恋が芽生えるというストーリー。

きらきらと輝いていたあの頃を丹念に掬い上げた、切なくて甘酸っぱい最高純度のラブストーリーになっている。

明るいエモさが満載。

それはズルいよと思う切な良いやりとりが詰まってて、きゅんとする素敵な本でした。

私はずーっと女子校だったから昔仲の良かった男の子という存在がいなくて、こんな淡い記憶から再開する優しい恋は憧れしかない。

甘酸っぱい共学特有の青春や、男女の友情が時を経て男女の愛情に変わるような運命とは縁遠いけれど、女子校は女子校で馬鹿みたいに楽しくて、その頃のしょうもないやりとりが今振り返ってみれば宝物だというのはよく分かる。

学生の頃のくだらないこと全ては大人になって振り返ってみれば宝物に変わるから、投資だと思って目一杯友達と思い出作った方がいいよ、と思う。

そして。

両想いだけど付き合えない。
苦しくなるから完全にお別れする。
悲しいけど思いが通じ合ってるから報われていて、優しい思い出として整理する、、

素敵な結末だと思うしその方が良いに決まってるんだけど本当にそうできるのって相当強いよね。

私は無理だった笑
一度そうしようとしてやっぱり違うとひっくり返し、懇願の後すっかり忘れられるのが怖くて極端な言葉で傷でもいいから自分の存在を残そうと、敵としてでもいいから脳内の一箇所を確保しようとした上に、その心情をストレートに伝え理解まで得ようとした私とは大違いですよ、、

悪い意味で新たな自分の一面を知った瞬間だったね。

でも本当に好きなら良い思い出と良い関係性をぶち壊す覚悟を持ってでも手を離すなよ!と思う部分も未だにあるので笑、この世界で色々学んで成長する余白が自分にはまだまだあるんだろうなと思う。

「好きな人のパーカーのフードには、何か入れたくなるらしいよ」

「誰かが誰かの特別になるというのは、とても不思議なことだ。特別というのは順位の問題ではないし、こだわりや好みともあまり関係ない。運命といったら違う気もするし、縁というのもぴんとこない。きっと偶然や必然を孕みながら二つの物語が交差し、誰かは誰かの特別になる。」

「始まったことを大切にしたい気持ちがあって、それを大切にできたなら、それが何かに昇華する日は、きっとくる。執着とか欲望から離れて、あのときは嬉しかったな、とか、思い返したり話したりする日が、きっとくる。」

「教わるときより、教えるときのほうが人間ってのは成長するんだよ」

「女子ってのはめんどくせーだろ?女子はおれらよりも、めんどくせーものを、自分の中にいっぱい抱えてるんだよ。だからまあな、そういうことから守れるといいよなって話だよ」

「今の自分たちのポケットに、普段入ってるものを言い合った。見果てぬ夢や折り合い、ささやかな喜びや月曜の秘訣。ため息やシーサイドメモリー、お気に入りのポップチューンや週末の余韻。四年目の余裕や初心、ガッツや経験。不確かな未来や遥かな地平線。他には文明人の孤独や果たすつもりの約束や天使のウィンク──、  そんなものが、今の僕らのポケットには入っている。」

今の私は何をポケットに入れているだろう。
夢物語や確信の前身、希望と絶望が拮抗する綱引きに私はここにいるという叫び、結局凪、
などという言葉が浮かぶ自分に少し慌てた。笑

好きな人のパーカーに何か入れちゃうような青春は、やっぱりしてみたかったな。

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