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「ゆづり葉」という詩

今日も、別に何も書くことがないので、代わりにすごく好きな詩を紹介します。

明治から昭和初期にかけて活躍した詩人、河井酔茗(かわいすいめい)が、昭和7年に刊行した詩集「紫羅欄花」の中の一編「ゆづり葉」という詩です。

それでは、どうぞ。

「ゆづり葉」

子供たちよ。
これは譲り葉の木です。
この譲り葉は
新しい葉が出来ると
入り代つてふるい葉が落ちてしまふのです。

こんなに厚い葉
こんなに大きい葉でも
新しい葉が出来ると無造作に落ちる
新しい葉にいのちを譲つてーー。

子供たちよ
お前たちは何を欲しがらないでも
凡てのものがお前たちに譲られるのです。
太陽の廻るかぎり
譲られるものは絶えません。

輝ける大都会も
そつくりお前たちが譲り受けるのです。
読みきれないほどの書物も
みんなお前たちの手に受取るのです。
幸福なる子供たちよ。
お前たちの手はまだ小さいけれどーー。

君のお父さん、お母さんたちは
何一つ持つてゆかない。
みんなお前たちに譲つてゆくために
いのちあるもの、よいもの、美しいものを、
一生懸命に造つてゐます。

今、お前たちは気が付かないけれど
ひとりでにいのちは延びる。
鳥のやうにうたひ、花のやうに笑つてゐる間に
気が付いてきます。

そしたら子供たちよ。
もう一度譲り葉の木の下に立つて
譲り葉を見る時が来るでせう。


いい詩ですね。大好きなんです。

「ひとりでにいのちは延びる」とは、「知らない間に年齢を重ねる」という意味だそうです。

ちなみに、ユズリハはこんな木なのだとか。

https://www.uekipedia.jp/常緑広葉樹-ヤ-ラ行/ユズリハ/

葉っぱが入れ替わるとき。

https://www.uekipedia.jp/常緑広葉樹-ヤ-ラ行/ユズリハ/


ということで、また明日。

おやすみなさい。

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