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男が好きで、男が嫌いで。#11 ーセクハラする力ー

「セクハラする力(りょく)」なんて、さも炎上商法みたいなタイトルをつけてみたけれど、自分の拙い語彙で、どう言っていいものかわからなかったので、とりあえずこれで書き進めていこうと思う。

セクシャルハラスメントなんて、言語道断の話だし、20代半ば、自分がヒゲを生やして生活し始めたくらいからだろうか、特に女の子たちとは物理的に一定の距離を保つようになっていた。ゲイだろうがなんだろうが、ヒゲ面の男が距離近いって、ちょっと怖いし嫌でしょ?


ーセクハラする力

セクハラする力(りょく)。
ゲイ村(ゲイヴィレッジ)の端っこでなんとなーく生活するようになって、これはある種のパワーだとと思うようになった今日この頃。

というのも、先日ホモがたくさん集まる飲み会にお邪魔させていただいた。(都内に住んでいると、こんな私にもそういう場にお声がかかることがたまにある)気の知れた友人主催のもので、結構な人数がレンタルスペースに集まった。

久しぶりに会う人ももちろんいるが、はじめましてがほとんどで、初対面の人が多すぎると率先して話す気が失せてしまう自分は、盛り上がっていないテーブルを見つけて腰を据えてしまう。お喋りのスイッチが入らないとこうやって変に冷めてしまう癖は、学生の頃から1ミリも成長しておらず、教室の後ろからクラスメートが賑わう姿を見ていた光景が一瞬フラッシュバックする。

ームラっとするけど、イラっとする

と、まあ、そんな話は置いておいて、せっかく来たし、お金払ってるし、美しく盛られた料理と大量の酒をかなぐり捨てる気にもなれず、元を取る程度に談笑して、別の友人と約束していたお座敷にさっさと合流してしまおうと思いながら過ごしていた。

そのとき、友人の友人として紹介された(40~50代くらいの)お兄さんに自己紹介し、軽く談笑した。
そんなにゆっくりと話すこともなかったので、ご挨拶程度でその場を切り上げた。

さて、そろそろお暇しますかね、と主催の友人に声をかけ、飲み会から消えようとすると、「写真撮ろうよ!」というまあお決まりの流れになる。

おー、そうだよ写真撮らなきゃ! と、自分の友人たちとたまたまその場にいたその他知らない人とがギュッとなって、その場限りの仲なのに大層仲良さげに見える写真が撮られる。

その、ギュッと人が集まった瞬間、先ほど挨拶したお兄さんが自分の後ろにまわり、そっと肩に手を置いた。あ、どうも〜、と目だけで挨拶すると、お兄さんはニコッと微笑み、スルっと俺のケツを撫でた。おっさんツバのつけ方手慣れてんねー、と、その時は感心してしまった。

写真を撮ってると、別の友人が「もう帰るの!?」「こっちでも撮ろうよ!」なんてバタバタと会話をしながらまた写真を撮る流れになって、案の定お兄さんにまたケツを触られたのだが、そのときは明確にイラついた。いや厳密に言おう。

ムラッとしたけど、イラっとした。

ーモテ男のセクハラ

モテてきた、いや多分現在進行形でモテそうな感じのお兄さんだった。

この不思議な気持ちを抱えた帰り道みち、これってたぶんイラっとしてる怒りが主なんだけど、一瞬、ほんとに一瞬、他人に肯定された感じが、まあいっかに繋がっているのかもと考えた。

男から男へのセクハラの、なにがたちが悪いのかというと、(ボディタッチ程度の)セクハラ=露骨な嫌悪に結びつきづらいところかも。

そもそも自分自身、イケない人には、まずセクハラさせる隙を俺は与えない。お前が俺に触っていいわけないだろ? この一線を越えてくるんじゃねえぞ? と殺気立つ。

しかし、たぶん今回はその一線が曖昧だったのだろう。酔っていたし、もしかしたら寒くて寂しかったのかもしれない。とにかく一瞬ムラッとしてしまったのだ。自分が隙を与えたうえに、お兄さんの手つきから察する、彼の成功体験の数々。これでいい思いをしたことがあるのだろうな、というモテを感じる手つき。

ー「セクハラ力=押しの強さ」なのか?

一度あしらっただけでは負けないメンタルと押しの強さ。成功体験があってこその自信と余裕のあるセクハラ。こんなことは言いたくないが、その押しの強さ、お見事だ。

あの時、自分がこのセクハラに応えていたらどうなっていただろう? 自己肯定感が上がるモーメントがその先にはあったかもしれない。
だがその一方で、非モテ根性が根っこにある自分は、ああいった類の自信に、同じ男として少々あてられてしまう。

ーセクハラされる力

する力もあれば、される力(りょく)もある。

このゲイ村で、そういう押しの強さに、色っぽい返しをしている村人を見ると、つくづくセクハラの需要と供給がある村だなと思う。

以前、ゲイヒエラルキーのトップオブトップの方とお喋りする機会があった。

秋口くらいだっただろうか? 彼に「寒くなってきたけど、何着て寝てるの?」という話題を振られた。キャバ接待的なものをうまく捌けない私は、普通に「あー、睡眠の質が上がるって聞いて、いわゆるパジャマみたいなやつ着て寝てますよ」と答えてから瞬時に、しまった! と思った。

おそらくここでの正解は「パンイチですよー」とか「服着てると落ち着かないので裸なんです///」とか答えないと、彼がこれから繰り広げようとしていた「じゃあ添い寝とかしてあったまりたいよね?」的なリップサービスの流れにならない。

色気ねえー。色気のなさすぎる自分の回答に半笑いになってしまった。

2つのセクハラ力が欠落してる自分にいささか嫌気がさす。

そしてこの中途半端な位置でこの需要と供給を文章にしてしまっている自分は、薄らサムイのではないかという気にさえなってくる。

他人様にセクハラするほどの押しの強さは持ち合わせておらず、されたらされたで男の性欲をすべて包括する器もない。

ムラっとしたりイラっとしたり、気持ちがごちゃごちゃと入れ替わって、自尊心の場所が定まらない。

このnoteを書き出して、思い出したセリフがあった。

ゲイバーで飲み始めたころ、お店のママに「男だけになるとセクハラ、アルハラ。ハラスメントのオンパレードだね」とポロっとこぼしたことがあった。ママはそのとき、「そうよ。ここで鍛えられるから、みんな会社で出世してくのよ。」とケロッと言われた。

男社会最悪。本気でそう思ったけれど、そりゃ俺は会社で出世もしねえわ。と腑に落ちてしまい、大きなものに負けた気がした。


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