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【MLBトレード】マックス・シャーザーのTEX入り

 TEXがNYMからマックス・シャーザー(残り1年半※プレイヤーオプションを行使)と35M超の金銭を獲得しました。NYMはルイスアンヘル・アクーニャ(残り6年)を獲得。


〇ファーストインプレッション

 TEXが6月途中当たりから不調が続く先発陣をテコ入れしました。一方、NYMはレンタル選手を売るだけかと思いきや、本格的な売り手となりました。獲得したプロスペクトを見ればトレード自体は成功と言えそうです。

〇TEXサイド

 5年185Mと大金を払ってFA獲得したデグロームが開幕から数試合で離脱し、トミー・ジョン手術となってしまったものの、同じくFAで加入したイオバルディ、前年にFAで加入したグレイ、元トッププロスペクトのダニングらの頑張りもあり、先発陣の不安は少ない印象でした。しかし、7月に入ると、それまでよすぎたイオバルディが一転して打ち込まれるようになり、他の投手も追随するかのように不調となり、7月の先発防御率は5.69まで悪化。下には同じくデッドラインで先発投手の補強を目論むARIと絶賛再建中のWSHしかいない状況に陥りました。

 短期的な視点で見れば、2位から追い上げてくるであろう優勝経験豊富なHOUを振り切るために上質なスターターの補強は必須でした。シャーザーは今季こそERA4.01、xERAも3.65と年俸に見合わない働きですが、19試合に先発して107.2回を投げており、平均投球回は6回を超えます。ベテランになってもタフネスぶりが衰えておらず、コンテンダーで投げるとなれば、かつてのサバシアやバーランダーのようにパフォーマンスを一気に上げる可能性は十分にあると思います。

 また、今回のトレードはシャーザーにプレーヤーオプションを行使させたうえでトレードとなっています。中期的な視点で見れば、デグローム復帰のタイミングまで保有したいというのがTEXの考えだったと思われます。デグロームがトミー・ジョン手術を受けたのが6月上旬、保守的に見れば復帰に14~15か月は要すると見られ、来シーズン復帰するにしても8月以降の公算が大きいのではないでしょうか。仮にその通りのスケジュールだと2024年も先発ローテは1人分穴が開くことになるため、シャーザーにプレーヤーオプションを行使させることでその穴を塞いだということでしょう。

 さらに注目すべき点としてNYMから35M超の年俸負担を引き出したことです。TEXの負担は今季残り2ヶ月+来年1年合わせて22.5Mとなり、1年を6か月として計算すると、約17Mの年俸でシャーザーを起用できることになります。もちろん、ロナルド・アクーニャの弟であるルイスアンヘル・アクーニャを放出したことに対する見返りと言えるのかもしれませんが、NYMの負担は想像以上でした。

〇NYMサイド

 レンタル選手を売るだけか、来年以降もコントロールできる選手も売るのか不透明な部分がありましたが、今年は純粋な売り手に徹することにしたようです。1ヶ月ほど前に投稿した記事にて、NYMのリスクマネジメントに言及しましたが、ここまで決断できるとは考えていませんでした。とにかく、理解力のあるオーナーだと思います。

 ルイスアンヘル・アクーニャはロナルド・アクーニャの弟で21歳にしてAAで好成績を残しています。wRC+は121とリーグ平均を大きく上回る打撃パフォーマンスを示しており、三振率は20%を下回ります。42盗塁に対して失敗はわずかに5と、単に足が速いだけでなく盗塁成功率が高い点も魅力です。今季は外野手を守る機会も生じていますが、TEX傘下でミドルインフィルダーが多い影響のようです。NYM移籍で再びショートメインとなるでしょう。

 また、NYMの年俸負担は非常に大きなものとなりました。しかし、NYMから見れば、元々払うはずだった年俸が22.5M減っただけで翌年以降の補強資金はプラスとなっていることになります。さらにプレミアムなプロスペクトも獲得しています。エースレベルからソリッドなイニングイーターへとパフォーマンスを下げたシャーザーで22.5Mとプレミアムなプロスペクトを獲得できたと考えるとリスクが低いのはNYMかもしれません。

〇総評

 TEXは先発投手陣が崩壊気味な中で衰えたとはいえ未だにローテを計算できる投手をしっかり確保しました。TEXがシャーザーに払うコストは1年当たり約17Mです。衰えが見え始めたとはいえ、シャーザーに現状のパフォーマンスを維持してもらえれば、お釣りが返ってくるでしょう。一方、NYMはそのまシャーザーを残せば、1年当たり43Mの働きをしてもらわないとペイできないという計算でした。今回のトレードでコストカットとプレミアムなプロスペクトの獲得ができたのは大きかったと言えます。同じシャーザーという選手でも両チームからみたコストパフォーマンスは異なるということが今回のトレードで如実に表されたのではないでしょうか。

※画像はMLB公式


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