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ミャンマー選管、不正行為発表!

今年2月1日に「軍事クーデター」によって実権を掌握したミャンマー国軍。

その国軍によってあらたに任命された「選挙管理委員会」が、スーチー国家顧問らが主導したと主張している、選挙不正について中間報告を発表しました。

中間報告といっても、不正が確認された総数と概略のみの発表であり、詳細については触れていません。

まぁ、国軍が任命した選管委員ですから、公平性や信頼性が大きく欠けていることに間違いありませんけれど、一応彼らの主張をまとめますと…。

確認された選挙不正総数は、1,130万5,390件にのぼったとのこと。315選挙区すべてで、何らかの不正が確認されたそうです。

特に件数が多かった不正は、「選挙人登録に関する不正」と「複数回投票の不正」。こうした不正があったから、「国民民主連盟(NLD)」が選挙で大勝したのだ、というわけです。

まぁ、国軍はクーデターを起こした当初から、スーチー国家顧問らによる1,100万件以上の選挙不正があったから、「止むを得ず」実力行使をせざるを得なかった、と主張してきました。それゆえ今回の発表は、特に驚くことではありません。ちなみに昨年11月、総選挙が行われた時の有権者数は、およそ3,800万人。投票率は72%ということで、つまり2,750万人が投票したことになります。そのうちの約4割が不正だったというわけですから、これはまた、大風呂敷を広げたものです。なお、昨年の選挙には日本も含め、欧米諸国が「選挙監視団」を派遣しています。その監視団が、組織的かつ大掛かりな不正を見つけていません。英国BBCが、ミャンマー選挙の実態と共に、国軍が「不正」と指摘している内容を分析しています。

ちなみに2019年に行われたタイの総選挙では、何者かが正式な開票前に投票箱を差し替えたり、公務員が票を取り出して別の票と入れ替えたりしている写真が SNS に出回りました。その真偽は不明ですが、しかしタイと比較して、ミャンマーの方がまだ公正な選挙だったように感じています。もちろん、完璧な住民登録制度が確立されていない事情がありますから、そのため混乱があったことは間違いないでしょう。しかしそれを不正としたら、開発途上国では選挙ができなくなってしまいます。

それにしても、このタイミングで与党による選挙不正をあらためて発表した理由は、スーチー氏率いる「国民民主連盟(NLD)」の解党手続きを進めるためだと思われます。ということは、国軍はやはり、最初の約束通り来年2月1日までには再選挙を行うつもりなのでしょう。国軍が主体となって制定した憲法では、クーデターで実権を掌握しても、1年以内に選挙を行わなければならいと記述されていますから、それは守るつもりなのかも知れません。もちろん、国軍に協力的な政党のみを承認し、投票人名簿も都合のよいように改ざんして、が前提です。これはカンボジアのフンセン首相がお得意としているやり口ですね。

一方、国軍の弾圧を逃れ地方、特に少数山岳民族の支配地域に逃れた青年たちの中には、逃避先の少数民族が組織している民兵軍に加わって、訓練を受けている者も少なくないようです。

ミャンマーの少数民族の一部は、自治権拡充を求めて長年、ミャンマー政府と対峙してきました。第2次世界大戦以降(ないし1948年のミャンマー独立以降)、ずっと国軍と武力衝突を繰り返してきています。すなわち、戦闘経験は極めて豊富。特にゲリラ戦については、国軍の攻略を悉く退治してきた実績があります。国軍に追われて都市部から逃げて来た青年たちにとって、少数民族軍の訓練は過酷なものでしょうけれど、それでも彼らには国軍を打ち負かしたいという、強い動機があるのです。

但し、別の視点からみますと、少数山岳民族の軍資金は、麻薬密売が一定の割合を占めています(他には、天然資源の取引があります)。また国軍側も、欧米からの経済制裁を受けて、国軍と友好関係にある少数民族グループに対し、麻薬売買を承認しています(取り締まらない代わりに、国軍に上納金を納めろ、というわけです)。このため麻薬の供給が増加中。そこにコロナ禍での失業者が増えているため、比較的安い報酬で密輸を請け負う素人も増えている、という悪循環が起きています。

治安を回復し、民衆を抑圧したうえで、国軍が総選挙を実施できるのか。

国軍が主導する選挙をボイコットし、そのまま内戦に向かっていくのか。

ミャンマーはますます、余談を許さない情勢になっています。

※下の写真は軍事訓練を受けている青年たちです。

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