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安倍元首相を悼んで半旗(カンボジア)

昨日(7月10日)に実施された参議院選挙。

自民党が63議席を獲得。大勝したと報じられています。一方でれいわ新選組、NHK党、参政党といった比較的新しい政党も議席を獲得しています。日本は以前、「2大政党制」を志向して選挙制度を変えたわけですが、やはりどうもそれは日本人には馴染めず、多様な選択肢を求める気持ちが強く残っているのかも知れません。そして少数の民意も大切にしようという意図で制度化した比例代表が、その意図通りに機能している、ということでもありましょう。

安倍元総理が凶弾に倒れた、という悲しい事件も、投票に影響を及ぼしたのかも知れません。

日本で選挙のあった7月10日。カンボジアでは、フンセン首相の鶴の一声で、故安倍晋三氏を追悼する日とされました。政府機関が半旗を掲げ、またカラオケやバーは営業禁止。レストランでも、アルコール類の提供が禁止になっています。これは日本人には不思議な印象を与えるかも知れませんが、カンボジアでは(タイでも)、選挙前や重要な仏教行事の日はアルコール類の販売が禁止になりますので、現地の人たちにとってはお馴染みです。もちろん、突然の通達ですから、その点は戸惑い、驚きがあったことでしょう。
※詳しくは下記の「カンボジア経済」サイトをご参照ください。

https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/071671df26615337b1be7297014a40a6?fbclid=IwAR15N78tkLiRt95UNAaKo9zy8LllCvcvTsWIgjhvCHR6IVmpmtyH7XSxyKM

フンセン首相は親中派として知られていますが、実はけっこう親日派なんですよね。

地政学的にも経済的にも、中国との関係を良好に保つ必要があるので親中的な政策を取らざるを得ないのですが、日本への配慮もかなりしているように思います。ただ長期の独裁的な政権ですから、日本の方がフンセン首相を「親日」と認めたくない雰囲気があるように感じています。実は私も、「フンセン首相は親日だ」という表現を避けてきた一人なのですが…。

実は親日派でもあるフンセン首相に対し、どうしても嫌味を言いたくなる心の狭い人間として、私は「7月10日」が重要な事件のおきた日だという事実を指摘させていただきます。

2016年7月10日。
カンボジアの著名な政治評論家かつ医師で、社会福祉NGO「クメール人のためのクメール」創設者でもあったケム・レイ氏が暗殺されました。

同氏は、プノンペン市内のガソリンスタンドに併設されていた喫茶店で休んでいたところを、突然背後から銃撃され即死したのです。容疑者はすぐに逮捕され、借金返済にまつわるトラブルでケム・レイ氏を暗殺した、と自供しています。しかしガソリンスタンドの防犯カメラには、容疑者とは別に自動小銃を持って逃走する人物の姿が記録されていました。また、容疑者の妻はケム・レイ氏との間に金銭トラブルがあったことを否定しています。おそらく容疑者は、当局によって自白を強要されたのでしょう。人権団体などは公正な捜査をカンボジア政府に求めてきましたが、それはカンボジアでは無理な話。
※下のリンクは「ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本語版」に掲載された、ケム・レイ氏暗殺事件に関する記事です。

https://www.hrw.org/ja/news/2018/07/10/320240

ケム・レイ氏はかねてよりフンセン首相批判を繰り返し、暗殺される2日前には、「フンセン首相と彼の一族が、権力を不当に行使し、莫大な個人資産を蓄財している」と公に批判をしています。おそらくそれが、フンセン首相の堪忍袋の緒が切れる直接の原因となったのでしょう(私個人の推測ですが)。

7月10日を、安倍元総理追悼の日としたフンセン首相。

6年前のこの日にケム・レイ氏が暗殺されたことを、ウヤムヤにしようという意図が背後にあるのでは…。私は大した根拠がないにも関わらず、そのように勘ぐってしまう心の狭い人間です。

フンセン首相の真意はわかりません。

しかし多くのカンボジア人が安倍元総理を偲んでくださっていることは、疑いのない事実です。同氏を追悼する下の画像が、カンボジアのネット社会で広がっています。

私は支持者ではありませんでしたが、しかし安倍元首相が傑出した政治家であったことは間違いないでしょう。

近年稀にみる大物政治家だったがゆえに、その死も、政治的に利用されてしまうことがあるのかも知れません。国内でも、国外でも。これは避けられないことなのでしょうね。

あらためて、安倍元総理のご冥福をお祈りいたします。
さらに、ケム・レイ氏のご冥福も合わせてお祈りいたします。
そして、安倍元首相を追悼してくださっているカンボジアの方々に、一人の日本人として心から感謝を捧げたいと思います。

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