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バリウム虫垂炎になりかけた話

健康診断で胃部X線検査をした後にとんでもないことになった経験を銘肝いたします、肝だけに。
体調に関する表現があるので苦手な方は読まないでください。


健康診断翌日の朝

土曜日の4時、まだ暗く肌寒い朝に枕元に置いたiPhoneのアラームが鳴った。布団を捲ると「ごはんですか?散歩しますか?」と寝転んだまま犬が目線をこちらに向ける。いつもなら抱き上げておはようのクンカクンカをするものの、どうにも全身が重たく火照っていたので居間に体温計を取りに行く。寝室に戻ると暫くして計測を終えた音が聞こえた、微熱。犬もまだ眠そうだし、お昼頃に河川敷の方まで長めのお散歩にでも行こうかと抱えて横になる。土曜日の朝と言えば建もの探訪からテレメンタリー、続けて日本のチカラを見るのが習慣になっていたけれどその日は途中で眠ってしまった。
次に目が覚めたのが8時を過ぎた頃で、再度体温を測ると先程よりも随分高い。これはどこかで風邪でももらってきたかなと犬をケージに移して、生き物たちにはそれぞれごはんを食べてもらい、布団に戻った。近くに住む両親に「熱が出たかも」と連絡をしたところまでは記憶があって、そして、とてつもない背中の痛みで飛び起きた。

救急車で最初の病院へ

咄嗟に足を抱えて丸くなったけれど痛みが治まらない。♯7119(※救急安心センター事業)に電話したものの繋がらず、母に来てもらえないかと連絡をした。少し経って母が到着し、以前に胃腸炎で救急外来を受診した時と症状(背中側の内臓から響くような痛み)も似ていることから、救急車を呼んでもらった。痛みからくる吐き気と息苦しさで朦朧としている間に病院に到着して、鎮痛剤の点滴を打った。
前日に健康診断でバリウムを飲んだことを伝えると、「(多分、写らないだろうけど)一応、レントゲンとCTを撮りましょう」と提案してもらったが、結局バリウムが邪魔をして肝心な部分が写らず原因不明のまま痛みが落ち着き、鎮痛剤と胃腸の薬を処方してもらって帰宅となった。
ところが、背中の痛みは落ち着いた筈なのに吐き気が治まらない。帰宅してからも水を一口飲んでは数分後に嘔吐し、更に数分後に吐き続けるのを繰り返して、呼吸しているだけでぐるぐるして船酔いのように気持ち悪かった。深夜になると点滴の効果が無くなったのか下腹部の痛みも出てきた。何時間も吐き続ける上に痛みでのたうち回る私を見かねて母が先程の病院に連絡をすると、再度診てくれるとのことで連れて行ってもらう。当直の先生曰く「症状からバリウム虫垂炎の疑いがあるので、造影剤を用いたCT検査をしましょう」とのことで、大きな病院の紹介状を書いてくれた。

自動車で大きな病院へ

バリウム虫垂炎であれば入院の可能性もあるため、母は一度帰宅し、その間に這いつくばってタオルと着替えを用意した。戻ってきた母にも準備を手伝ってもらったが、吐きそうで筆談しかできなかったので「何をどこに置いてるか」を伝えるのに苦労した。元気になったら入院セットをまとめておこうと誓った。更に車の揺れで下腹部の痛みと吐き気が悪化し、後部座席に仰向けになり窓枠に足を掛けて耐えながら向かったため、傍から見たらホラーだったと思う。
血液検査、造影CT検査、レントゲン検査の結果、急性膵炎であることが判明した。また、バリウム虫垂炎の疑いもあるため入院して暫く絶飲食となったこの時点で日曜日の夕方、貴重な週末に看病と病院の送り迎えをお願いしてしまった母に真っ青な顔でお礼を言って病室から見送った。
何度か呼吸器内科の先生(以降、担当の先生)、外科の先生、看護師さん方が代わる代わる様子を見に来てくれて、急に来た分際ですみませんと情けなくなった。強めの鎮痛剤の点滴をしてもらうと痛みと吐き気が治まり、その間に各所への連絡を済ませてやっと落ち着く。どうやら強い痛み止めと弱めの痛み止めの点滴があるようで、交互に毎日三回ずつ使ってもらった。前者が効いてくると意識が朦朧としつつも夢なのか幻覚なのか分からない状態のまま眠れるが、後者は地味に続く痛みを紛らわしながらただひたすら時間が過ぎるのを待たなければいけなかった。

絶飲食期間と入院食

それから数日間は血液検査、レントゲン検査、超音波検査、MRI検査が続いた。夜中に痛み止めの効果が切れて看護師さんに「あと20分経ったら強い方を使えますからね」と励まされたり、別の日は点滴が漏れてしまって早朝にも関わらず細い静脈を探してもらったり、看護師長から「ジェルネイルは剥がしてください」と詰められたりしたけれど、どうにか点滴が外せるまで回復した。入院してからの数日、体調が良い時はサラリーマンのおっさんがおやじギャグのテロップと共に飲食する動画をYoutubeで見ていたので普通にお腹ペコペコだった。担当の先生から「明日のお昼からごはんを食べてみましょう」と言ってもらった時よ、人の望みの喜びよ。そして入院した日から一週間程度、この担当の先生が朝、昼、晩と一日に三回は病室に診に来てくれていた気がするので、今更ながらに先生休んで…と思った。
最初は五分粥から始まり、それでも久しぶりに口にした柔らかいお米の食感や甘みはおいしかったし、ペースト状のさつまいも等のおかずは優しくお腹を満たしてくれた。段々と全粥、パン、白米と通常の入院食に変わる頃には退院日が決まった。

退院は今日も雨だった

少ない荷物をまとめて、朝ごはんを食べて身の回りの整頓をしていると看護師さんが来てくれた。病室で退院の手続き、と言っても処方してもらった薬を受け取って、腕のリストバンド(※入院患者識別バンド)を渡して帰宅という流れである。今後は自宅療養(と絶飲食な上に寝たきりだったので免疫力と体力回復)に励まなければならない。
入院中は実家でうさぎと犬を世話してもらっていたので、この日はそのまま泊まることになっていた。居間に行くと犬が座ってじっとこちらを見て(否、睨んで)おり、名前を呼んで目の前に座った。数秒間の無言の後、小さい声で唸りながら腕を掴んで恨めしそうに見つめてくる。いきなり飼い主がいなくなったら怒るのも当然なので、ごめんねと謝りながら抱き上げたが数分間は怒っていた。でもそういうところが可愛いよ、ちゃんと喜怒哀楽があるんだよね寂しい思いをさせてしまって申し訳ない。
犬の怒りが落ち着いてから客間にいるうさぎを見に行くと、香箱座りで眠っていた。名前を呼ぶと「待ってた!」と言わんばかりに手に頭を押し付けるので、飽きるまで優しく撫でた。もう9年の付き合いなので色々と察してくれているのだと思う。悠然とした態度に頭が下がります。

バリウムさよなら

結果的に、痛みや吐き気は急性膵炎からきていた。更に、バリウム自体は虫垂には無かったものの体内に長く残ってしまったことでその痛みも伴っていたようだ。元々、胃部X線検査でバリウムを飲むこと自体が苦手だった。弊社の健康診断では胃内視鏡検査に変えるためには抽選(何の基準で選んでいるのか不明だし当たったことはない)か自費で変更申請をしなければならないので億劫だったが、背に腹は代えられない。最初の病院の当直の先生にも、入院先の看護師さん方にも胃カメラをお勧めされたので、今回が人生最後のバリウム検査と相成りました。
最後に、看病から入退院の手続きやお見舞いに送り迎えまでしてくれた母、娘の洗い替えの下着を持ってお見舞いに来てくれた父、実家でいいこにお留守番してくれたうさぎと犬、毎日何度も診てくれた担当の先生、夜中でも早朝でもいるから気にしないで呼んでねと言ってくれた看護師さん方、紹介状を書いてくれた当直の先生、大変お世話になりました。皆様のお陰で無事に仕事復帰して、いつもの日常に戻ることができました。

母と散歩中の向かい風に耐える犬

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