大人になれない僕らのための異世界転生

 分かった。すごく分かりたくないことが分かってしまった。

 もうそろそろアラサーで、子どもの頃の自分から見れば十分おじさんになりそうな今日この頃。相変わらずニートで鬱屈していて、気晴らしで異世界転生もののなろう小説を読んでて気付いてしまった。なんで、異世界転生ものをよく読むか。大人になれないからである。

 客観的に見ればバレバレのことかも知れないけど、読んでる当人は全然気付いてなかった。いや、全力で気付きたくなかった。要は、上手く歳を取れていないということなので。とても悲しい。

 精神性はどこかで止まったまま、客観的な年齢だけはかさ増しされていく。直視するとしんどい事実。救いを求めた先は異世界転生。記憶持ち越したまま俺TUEEしたいとかそういうことではなく、異性に囲まれてチヤホヤされたいということでもなく。単純に精神年齢に噛み合う立場まで人生を巻き戻したい。世知辛い現実とは距離のある世界で。

 まあすごい力を持って恐れられたり敬われたり、可愛い女の子に一方的に好かれたりはしたいけども。それはそう。

異世界転生の魅力をもうちょっと詳しく

 転移より転生が良い。子どもマインドでも感情移入が出来るから。

 異世界転生はどこか知らない世界で赤ん坊になることから始まり、少年か青年になったあたりで旅に出たり、領地やらの拠点を発展させる。大人にはならない。その世界においても子ども扱いか、大人扱いでも若造程度まで。社会的に幼い、若いマインドを持っても許される、自分を許せるライン。その年齢から社会に参画し、物語によって規模は様々だけど、所属するコミュニティーに影響を与える。未熟な精神性を自分と同一視出来て、かつ現実では満たされない自尊心を満たせる。麻薬的だ。

 大抵常識外れの力を得る。あるいは、ものすごいスピードで成長する。しかし、主人公が自分の力に驕ることはあんまりない。無意識に傲慢になっても、すぐに反省の機会が与えられる。そうでないものもあるけど。力の特異性に無自覚の場合もある。それの何が心地良いか。単純に、現実の無力感やままならなさを忘れられる。そして自分に意味や価値、優越感を感じられる。驕らないというところがキモだ。イキッたヤンキーのような振る舞いは受け入れられない。

 チヤホヤ、もしくは畏怖されるのも大事だ。どっちもコミュニティーにおいて認められているということだから。誰も自分の実力を知らなくてもいい。それは密かな優越感になるし、自分で自分を認めることが出来る。

 最近、『小説家になろう』では追放系が人気だけど、これは良く分からない。追放する側がバカ過ぎてむしろ追放された方が幸せでは、と思ってしまうのでカタルシスがあまりない。楽しみ方が分かる人がいたら教えて欲しい。

 要は、子どもマインドのままで受け入れられてる世界の居心地が良い。

まとめ

 気付きたくないことに気付いてしまうのは、人生チョイチョイある。けど、どれも染み付いた性質だったり取り返しのつかない過失だったりして、悲しい気持ちになって終わる。今回の『気付き』もだからどうするといったことではなく、あぁまた社会不適合性を高めてしまったか、という感想。急に歳は取れないし。

 それにこれは悪いことじゃない。自分が楽しめる世界をちゃんと見つけられているということだから。新しい異世界転生ものを見つけるたびに、人生の夏休みが訪れる。

 他人から悲しい評価をされるという事実に気付いた瞬間は悲しいけど、自分に対する評価を下げればまた楽しく生きていける。多分。

 

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