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やさしさの違い

11月18日(水)
誰かを支えることで自分が支えられる人、誰かに支えられることで誰かを支える人がいる、ということを考える。何かを差し出すというプラスのやさしさと、何もしないというキープのやさしさの違いにも似ている。

昼はminionのチョモランマカレー。夜は、20時まで仕事をしてから、恋人と定食を食べて、ベンチでエクレアを食べる。私たちは、そこにあるボールの話をするのにも、どちらかが持っているボールの話をするのにも、本当に相性がいいけれど、ふたりでボールを持ったときに話をすることが苦手だね、と話をして同じ家に帰る。

11月19日(木)
オフィスに出社をしても会議難民になることを懸念して、リモートワークのために表参道をあるきまわっている。この考えは大多数の人に共通のようで、スターバックス以外のカフェもPCを前にした人で、静音の中、賑わっている。夜は簡単にパスタで済ませていると、実家に一泊していたこどもがご機嫌で帰ってくる。こどもに多くの居場所があるといい。でも、帰る場所はこの家であるといい。

11月20日(金)
午前中は、全社でストレングスファインダーの研修・WS。親密性、収集心、着想、戦略性、内省。意識しなくても当たり前のように身についている資質が、強すぎるがあまり、弱点になっている面を知りたい。午後には『宇宙兄弟』39巻 記念セットのプロモーション会議があり、サンプルを見せる。好評で、ほっと胸を撫で下ろす。よく話して、よく聞いたから、帰る頃にはつかれてしまう。恋人がごはんを作ってくれるというので、たまよせの吹き寄せを買って、お土産に帰る。こどもも、恋人も、宝石箱のような吹き寄せに驚いてくれるかと楽しみにしていたけれど、ふたりとも落ちついた反応で手だけが早い。

前の冬に気に入ってつけていた手袋を見失ってしまったまま冬を迎えることになりそうだったので、香川県の手ぶくろブランド tet.の手袋をECで注文する。アイボリー×ブラウンのバイカラー。恋人はブルーグリーン。

11月21日(土)
朝から歩いて15分ほどの名パン屋さんで栗あんぱんやきなこクロワッサンやシュガーツイストドーナツや焼きたてのカレーパンを買い込んで、水筒に熱々の紅茶を入れて、川辺でピクニックを、と思っていたのに、いつの間にかお昼を迎えている。柴田元幸選りすぐりの15篇小説集『昨日のように遠い日』を閉じて(家の中に大洋を発見する弟、暗闇の街に唯だひとつ灯りを灯すホルボーン亭、イギリスの灯台守との再会、なんでも知っているトルボチュキン教授の話など、おとぎ話のような空気で、本当がたくさん描かれていてとてもおもしろい)、方角を変えて歩いて10分ほどの名洋食屋に。

私は苦みのあるピーマンがアクセントに効いたオムライスを選び、恋人はクリームソースハンバーグを選ぶ。帰り際、馴染みの奥さんに「おじいちゃんにお子さん預けて、旦那さんとお二人でいいわねえ」と突然言われてぎょっとしてしまいそうにもなるが、そうか、このお店に私の父とこどもと3人で来たことは幾度あっても、前の夫と来たことはなかったのだと思い当たる。

夜は、こどもと3人であん肝鍋。冷凍のあん肝を鍋で乾煎り、すぐにお酒を入れて、ちょっとの生姜で臭みを飛ばして、出汁でお鍋にする。

 彼女はあわててロールをとりに行った。私たちはみんな腰を下ろした。ロールが来ると、私たちはさっさと食べた。食事中、フィリッパ・ロジャーズのテーブルの誰かがお皿を落とした。あなたは顔を上げなかった。あなたは自分のホイート・マーマレードロールを食べた。
 あなたはきれいだった。
レベッカ・ブラウン Rebecca Brown 「パン」『昨日のように遠い日』

 11月22日(日)
朝10時から、父がこどもを連れて、友人たちと孫を連れて落ち合うピクニックに出かけていく。昨年セールで買っておいたフワフワ白いボアジャケットを暫く着てくれなかったこどもも、「お相撲さんみたいなうわぎだよ」と言ってからは「おすもうさんがいい」と着てくれるようになった。かわいくて、かわいい。

お昼は中学からの友人と老舗トラットリア。ひと月に一度の頻度で会っているが、このひと月で友人の身には大変なことが起きていて、ふたりで唸る。釧路のお土産にマグネットとキーホルダーと牡蠣の缶詰めを、大島のお土産にパッションフルーツ&ピーチのコンフィチュールを渡したら、「お土産を忘れてきた」と言って、通りの和菓子屋さんでゼリーを買ってくれる。私にはオレンジマンゴー、恋人にはブルーベリー。ブルーベリーが好きだとなんでわかったの、と言うと、ニヤッと返される。この友人が自分のことをいちばんに考えられますように。

東京駅で落ち合った恋人と日比谷公園を散歩してから、銭湯に。湯上りの日本酒は身体にしんと馴染んでやけに旨い。派手じゃない街のシティホテルに泊まる。傷つけられることに自覚的な私たちにとって、これがお守りみたいな夜になる。

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