目の前の男は、本当に実の兄なのか?『闇に香る嘘』
いつかの夏に書いた読書感想文です。
文庫版で発売されたと同時に初版で買ったものの、手を付けていなかった下村淳史さんの『闇に香る嘘』を読み終えました。
私は江戸川乱歩氏が大好きなこともあり、江戸川乱歩賞の受賞作品はいろいろと読んでいます。
『闇に香る嘘』は、第60回江戸川乱歩賞受賞作です。
2014年の単行本発売時から大絶賛されているので、ずっと気になっていて文庫本で発売されたときに即購入しました。
物語の簡単すぎるあらすじは、
主人公は28年前に失明し盲目となった村上和久である主人公の失明後、中国残留孤児の兄・村上竜彦が永住帰国する。
主人公の孫娘は腎臓病を患っており生体移植の必要がある。
そのため、和久は兄に適合検査を依頼。
しかし、兄は検査を断固拒否して受けようとしない。
これがきっかけで兼ねてから抱いていた「帰国した兄は本物の兄でないのではないか」という疑惑で頭がいっぱいとなり調査を始める。
こんな流れです。
主人公は盲目で、娘との溝も深く兄も他人なのではないかと中盤に向けてどんどんと疑心暗鬼になっていきます。
まったく平和なお話ではありません。
正直なところ読んでいて、特に物語の後半までは、あまり良い気持ちではなかったです。
ただ、後半は温かい気持ちになりました。
どんでん返しではないのですが、おおおっ!となる結末と、周りは常に優しさで溢れていたんだな……というあたたかいものが残る読了感。
読んでよかったと思いました。
主人公が疑心暗鬼になってどんどんと悪い方へ考えてしまう場面が何度もあるのですが、
そこでの勘違いにあとから気付いて心も明るくなる部分は
なんだよもう!そういうことだったのか!よかったーー!
と思わず口から漏れるほど。
『闇に香る嘘』の明るいとはいえない内容と
この夏のどんより具合が非常にマッチしてました。
それにしても、
東京では連続17日も雨が降っているだなんて
梅雨よりも梅雨っぽい不思議な夏ですね。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?