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605ふるさと納税 財政面で大丈夫?

大昔に出向していた地域の自治体から郵便物が届きました。ふるさと納税で得た「寄付金の使い道の報告」というカラー刷りの冊子でした。
 この自治体の古城などの景観が好きだったので、何回か寄付したことがあります。400年も守ってきた文化財を維持してほしいな。それだけの気持ち。ただしちょっと返礼品のコシヒカリのお米に惹かれたのも、正直少しはあった。

新聞の隅っこにこんな記事が載っていました。
「民間企業がふるさと納税の寄付を代行し、寄付者には返礼品の代わりに現金を渡す不適切な事業が行われていたことを明らかになった」
 ふるさと納税とは、自身の居住地以外の地方自治体に寄付金した人は、その同額を所得税・住民税から控除されることに加えて、寄付額の3割以下相当の返礼品を寄付先自治体から受け取れる仕組み。返礼品をタダで得たことになる。
 今回、ずる賢い事業者が考案したのは以下のとおり。「寄付者が受け取る返礼品を販売してあげましょう。その手数料を差し引いて、あなたには寄付額の2割相当を現金で振り込みます(自治体の代理でお返しします)」
 10万円寄付したAさんがその3割、3万円相当のコシヒカリをもらえることになっていたとする。事業者はこのお米を裏市場で売却し、Aさんに2万円を支払うというわけだ。事業者はお米の売却手数料として1万円を受け取る。でも少し考えれば分かることだが、事業者が実際にお米を市場に運び込んで競り(せり)にかける手間作業をするはずがない。事業者がその自治体のふるさと納税事業の運営そのものを受託していれば、返礼品の移動などは帳簿上で処理して、関係者に相応の差益を配分すればみんな満足する。事業者は自治体からも事務委託費を受け取っているはずで、それに先ほどの売却手数料として寄付金の1割相当が入るのだから、濡れ手に粟の“やらずぶったくり”。
 ではだれが損しているの? ふるさと納税の仕組みを再確認してみよう。寄付者は寄付金総額を所得税と住民税から差し引かれる。限度いっぱいにふるさと納税を活用すれば、納税を実質回避できるわけだ。運営受託企業の案内には漏れなく、「あなたの税額控除の上限は〇〇万円」と計算できるソフトが組み込まれている。
全国の納税者がこの計算式を熟知して限度いっぱいふるさと納税をするようになったらどうなるか。返礼品がお米の場合、家族で食べる量には限界がある。返礼品がお肉の場合でも、焼酎の場合では事情は同じだ。しかし現金であればもらいすぎて困ることはない。納税者と受託事業者と自治体の間で電子情報が頻繁に交換され、最終的に納税総額は課税額の7割近くにまで落ち込むことになる。言い換えれば行政の事業規模を3割近く圧縮しなければならないことになる
各納税者は2割が返金されるが、国や自治体の税収が3割減るのだから、行政サービスは1割分低下することになる。それならば最初から総額で2割の減税をしてもらった方がマシだろう。
そして1割近くを居ながらにして事業者がかすめ取っていく構図である。わが国に食指を伸ばしている某国のエージェントにしてみれば、これは格好の破壊工作手段になる。
ということに気づいたのだろう。総務大臣が「寄付者が返礼品の代わりに現金を受け取ることは、制度の趣旨から大きく外れたものだ」と断定するに至って、ここで紹介した事業が停止になった。事業者が始めたのが6月8日で、事業者が撤回したのが10日。素早い政府対応で事なきを得たのは朗報。だけどふるさと納税の本質が改められない限り、手を変え、品を変えた同種のことが出てくる。
ふるさと納税は、その自治体を応援したいとの純粋な気持ちからするもののはず。換金可能の返礼品は必要ない。返礼“品”ではなく、返礼“報告”に俗称を変えてはどうか。ボクが一番多く寄付したのは沖縄県の石垣市。尖閣防衛の足しになれば、の気持ちだった。中国艦船の妨害に負けずに尖閣に漁に出ている市民がいる。尖閣海域で獲った魚の拓本のコピーをふるさと納税への返礼とすれば、石垣市への寄付はどっと増えるのではないかしら。これは他の自治体も同じ。わが町でアピールできることは何かを考えることだ。そしてそれを考えることを業者に委託すべきではない。

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