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過去最大の防衛費要求 議論なき膨張許されない

 2024年度予算要求における防衛費が前年度対比で1兆円以上増額になることに懸念を表明する新聞社説。
 国の財政は大赤字。経済は成長せず、足元ではインフレがヒタヒタ押し寄せる。防衛費にムダ金を使う余裕はこの国にはないはずだという論法は国民受けしやすい。でもこの種の議論はどこかおかしい。
 その馬脚が社説の最期部分。
「敵基地攻撃能力を実装してしまえば、政府がいくら「専守防衛」と強弁しようと、憲法9条に基づく平和国家という国際的な信用は揺らぐ。近隣外交と両輪でない防衛費の増額は、軍事的な緊張を高める。日本をどういう国にしていくのか、確かな安全保障とは。その議論を置き去りにしての膨張は許されない。」
「日本をどういう国にしていくのか」と社説は問いかけるが、その前に「どのようにして日本の国の独立を守るか」の問題提起があるべきだろう。中国共産党政権の近年のやり口をみていれば、近隣諸国を併呑し、ゆくゆくは世界を暗黒帝国にする意思が見え見えだ。そしてその武力はプーチン・ロシアの比ではない。プーチンがウクライナに仕掛けている「特別軍事作戦」を習近平が学習しているのは確実だ。民主主義国同士では「専守防衛」であるべきだが、正義も科学論理も通じない相手では隙を見せれば攻めて来る。
社説では「今年5月に共同通信がまとめた世論調査では、防衛費を43兆円に増やす方針について58%が「適切ではない」とし、防衛力強化のための増税は80%が「支持しない」と答えた。借金がかさむ財政や社会保障費へのしわ寄せを考えれば、当然だろう。」とも書いている。この下りでのポイントは、謝金がかさむ財政への国民の危機感だ。防衛費が増えると社会保障費にしわ寄せがあるとの解釈だが、これは順序が逆。社会保障(ご飯)と国防(命)のどちらが優先するか。考えるまでもない。財政負担をこれ以上増やさずに防衛費を増やすには、水膨れになっている社会保障のスリム化をすべきなのだ。わが国の社会保障の基本である社会保険制度は、保険料という独自財源を持っている。にもかかわらず一般会計から補助(繰り入れ)をしており、制度運営が杜撰になっている。
防衛費はアメリカから言われるからではなく、日本国民の判断として拡充しなければならないと思う。
【中国新聞:過去最大の防衛費要求 議論なき膨張許されない】 2023年9月7日
 説明が不足したまま、国民的な議論も抜きに突き進むつもりだろうか。
 2024年度の政府予算編成に向けた概算要求で防衛省は、岸田文雄政権が掲げる防衛力の抜本的強化に沿って過去最大の7兆7385億円を計上した。23年度当初から1兆円余りも上回る。
 23~27年度の5年間の総額を約43兆円とする防衛力整備計画を昨年末に閣議決定している。筋書き通りなら近い将来、防衛費は米国、中国に次ぐ世界3位規模に膨らむ。いわば「軍事大国」だ。
 政府は概算要求基準の段階で、上限を設ける対象から防衛費を外した。しかも金額を示さない「事項要求」まで認めた。政策を積み上げた上で厳しく査定する予算編成の原則は、全く見られない。
 そもそも整備計画は、北大西洋条約機構(NATO)の基準である国内総生産(GDP)比2%まで増やそうとする前提だ。本当に必要な装備なのか、議論を尽くした結果ではない。概算要求はまさに「増額ありき」で、生煮えの中身を詰め込んだと映る。
 敵国からのミサイルを迎撃する「イージス・システム搭載艦」2隻の建造費には、約3800億円を投じる。3年前に断念した地上配備型の「イージス・アショア」の代替策だ。これまでの経費を含めた1隻当たりの取得経費は想定の1・5倍に上る。物価高の影響を差し引いても甘い見通しと言わざるを得ない。
 しかも高度な装備を増やしたとして、使いこなせるのか懸念がある。自衛隊は定員を割り込む慢性的な人員不足だ。ハラスメント対策も後手に回る中、急に人を集められるとは思えない。無用の長物になりはしないか。
 米国の言いなりで計上した印象の強い項目も目立つ。音速の5倍以上で飛ぶ兵器を迎撃する新型ミサイルの日米共同開発費に約750億円、敵基地攻撃能力(反撃能力)を念頭に長射程ミサイル量産化を含む「スタンド・オフ防衛能力」には約7551億円を計上したのが象徴だろう。
 振り返れば、岸田氏は防衛費増額を昨年5月の日米首脳会談でバイデン大統領に約束していた。国民に表明するより相当前である。一方、国会審議では増額の必要性について「現実的なシミュレーションを行った」と述べるにとどめ詳細を明らかにしていない。これでは到底、主権者である国民の理解は得られない。
 今年5月に共同通信がまとめた世論調査では、防衛費を43兆円に増やす方針について58%が「適切ではない」とし、防衛力強化のための増税は80%が「支持しない」と答えた。借金がかさむ財政や社会保障費へのしわ寄せを考えれば、当然だろう。
 敵基地攻撃能力を実装してしまえば、政府がいくら「専守防衛」と強弁しようと、憲法9条に基づく平和国家という国際的な信用は揺らぐ。近隣外交と両輪でない防衛費の増額は、軍事的な緊張を高める。日本をどういう国にしていくのか、確かな安全保障とは。その議論を置き去りにしての膨張は許されない。

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