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842 保護司制度の改革 なり手確保へ踏み込め 山陽新聞社説 2023年6月21日

 この社説の文脈は、「保護司の成り手が減っている。年齢制限を緩めてなり手を増やせ」に尽きる。

 保護司さえ増えれば犯罪者の社会復帰がうまくいくとの思い込みが前提になっているのだが、それは検証されているのか。一般国民が知りたいのはそこだろう。「務所帰り者に報復されるのではないか。」犯罪被害者やその家族、さらには目撃通報などの警察協力者がどれほどおびえて暮らしていることか。

「罪を憎んで人を憎まず」は哲学としてまったく正しい。ポリコレだ。そういう心がけでいたいものだ。だが、ほんとうに刑務所と保護司によって更生しているのか。

 社説は「京都で21年に開かれた初の世界保護司会議では、戦前から日本で根付き、発展してきた保護司制度は、犯罪者の社会復帰や平和なコミュニティーの構築に大きく貢献しているとして、国際的に高く評価された」と手放しで賞賛している。

 業界内の賞賛ごっこではないのと思ってしまうのは、ボクの心が曇っているからだろうか。

 国が変われば対策は基本的に異なる事例が行われていることが世界に知れ渡ることになった。ロシアの民間戦争企業、ワグネルが始めた刑務所での兵士リクルートである。一生出所できそうにない凶悪犯罪者でも応募して6か月戦闘に従事すれば、即座に刑期を終えた扱いになる。

 法治国家が許すはずがないと思うのは民主主義国の常識に過ぎないことがすぐに証明された。というのは正規軍でもこの方式を採用したようであるからだ。国家としては刑務所費用や看守の数を節減できるし、銃弾で相当数がこの世から消え、運よく生き残った者は命の大切さを知って更生するだろう。説明はそんなところだろう。

 日本でまったく同じことをするべきだとまでは言うつもりはない。聞くところでは、ロシアでは男は刑務所に収監されて一人前との伝統観もあるという。ただ日本でも、刑務所に入ることで箔をつけるという困った人種も増えつつあるようだ。堀江貴文氏や佐藤優氏などはその事例だろう。世間にもそうした気配がみられる。

 そうであれば刑余者について、一律に支援を必要とする“社会的弱者”であるという認識のままでいいものなのか。言論界の雄を自認する新聞人の代表格の論説委員であれば、刑事政策の根本を問い直すレベルの提言を期待したいものだ。

 

社説本文

 罪を犯した人の立ち直りを支援する民間の保護司が減っていることを受け、法務省は、なり手確保策を議論する有識者の検討会を立ち上げた。原則として66歳以下に限るとしている年齢制限の緩和を検討するほか、無報酬としている現行制度の見直しも協議する。2025年初めまでにまとめる報告書を踏まえ、法務省が法改正など必要な手続きに着手する。 

 保護司は刑務所から仮釈放された人や保護観察中の少年らと定期的に面会し、生活や仕事の相談に乗るボランティアで、法相が委嘱する。罪を犯した人たちの更生支援に重要な役割を担っており、再犯防止や安全な地域づくりに不可欠な存在である。検討会の議論では、保護司を巡る課題に丁寧に向き合い、対策を打ち出してもらいたい。 

 保護司法では、定数を「全国で5万2500人を超えない」としている。ただ、近年はなり手が減り、今年1月時点では、特例として再任した70代後半の1300人余りを除き4万5654人。60歳以上が多く平均年齢は約65歳となっている。岡山県内でも現在955人が活動しているが、高齢化が進んでおり、減少傾向にあるという。 

 検討会での論点の一つは、年齢制限の緩和だ。近年は民間企業で定年延長や再雇用といった継続雇用制度の導入が広がり、高齢になっても働く人が増えている。年齢制限を緩め、そうした長年の会社勤めを終えてリタイアした高齢者への委嘱を拡大することは妥当だろう。 

 待遇面の見直しも重要だ。保護司法は「給与を支給しない」としている。だが、保護司の中には「日中、夜間、土日に時間を割くことも多く、ボランティアの域を超えている」など活動の大変さを指摘し、一定の報酬を出すべきだとの声もある。なり手を現役世代に広げるため、報酬の可否を巡る議論は欠かせない。

  推薦の手順も課題となる。新たな保護司の確保は主に、保護司個人の人脈に頼ったり、地域の各種団体から人材情報を集めたりすることで行われている。ただ、地域での人間関係の希薄化などを背景に、こうした形での人材確保は難しくなっている。 

 このため検討会は公募制導入についても話し合う。公募により、保護司としての適性の見極めが一層重要になるのは確かだ。とはいえ、保護司の活動に関心や意欲のある人に対して門戸を広げる意義は大きいと言えよう。この他、更生支援の広報活動といった業務の一部のみを担う制度の導入なども議論の対象だ。 

 京都で21年に開かれた初の世界保護司会議では、戦前から日本で根付き、発展してきた保護司制度は、犯罪者の社会復帰や平和なコミュニティーの構築に大きく貢献しているとして、国際的に高く評価された。持続可能な保護司制度の確立へ向けて議論を深めたい。

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