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637高齢者福祉とイヌ.ネコの役割

介護保険の財政が厳しさを増しています。ご存じのように「保険」と名乗っていますが、給付費の半分は国や自治体の一般財政からの繰入金。つまり政府や自治体の他の行政経費を圧迫しています。
繰入れ制度をなくせば、国は防衛費の増額ができますし、自治体の首長は選挙で約束したそれぞれの独自政策の資金目処が立つことになります。
そのためには介護の費用を節減する必要があります。ずばり半減する秘策はあるか。「ある」と言い切りましょう。
介護保険の給付を要する人のことを要介護者といいます。大きく分類すると体の動きが不自由になって身体介護を受ける人と。認知機能が損なわれて見守り介護を受ける人。歳をとるとだれもがそうなるのか。そう考えがちですが、大きな誤り。元気で頭もぼけていない高齢者の方が多数派です。その状態をできるだけ長く続けることで要介護者の数を減らせます。
呼吸をしなくなって生物的な生を終えることを寿命が尽きると言います。そうなった年齢の平均が平均寿命。呼吸をしてはいるけれど、重度の要介護になってしまった年齢の平均を健康寿命と呼んでいます。進んで要介護状態になりたい人はいません。そこでいかにして健康寿命を延ばすか。これが政府の方策、「健康日本21」の目指すところです。
健康寿命をどんどん伸ばして平均寿命にできるだけ近づける。要介護状態の人が限りなく少ない社会が望ましい。俗に「PPK(ピンピンコロリ=元気に年を重ねてバタッと死ぬ)」と呼ばれます。
ではどうしたら元気を維持できるか。そのためには体も頭もほどよく働かせること。でも分かっていても、散歩やクイズ挑戦などはなかなか続きません。楽しくなければ本能が拒否します。
そこで効果的とされるのが、イヌやネコとのふれあいです。
新聞(読売2022年7月6日)に「保護犬猫元気なシニアへ」の記事が載っていました。「ペット好きの高齢者に保護犬、保護猫と暮らす選択肢を提供するNPO法人などが出てきている。…元気なシニアに門戸を開き、行き場のない保護犬猫を一匹でも多く救おうという考え方のようだ。…」
こうした仕組みこそ介護保険財政安定の観点から推奨すべきではないでしょうか。することがなく無為をかこつことが不調の原因になります。孫の世話をすればいいのでしょうが、人間の子はすぐに手がかからなくなり、祖父母業をお役御免、その後は寄り付きません。その点、イヌ、ネコの世話はその生涯続きます。そしてその間、遊び相手、話し相手になってくれます。
介護保険として本気で要介護予防に取り組む気があるならば、元気な高齢者にイヌ、ネコの貸与事業を始めるべきだと思います。ついでですからその仕組みも考えてみましょう。記事にあるように飼い主から飼育放棄された迷いイヌ、ネコを登録高齢者に預けて飼育させます。高齢者への見返りは特になし。
それでも事務経費は生じます。そこで非高齢者のイヌ、ネコ飼育者に登録料を課します。徴収するのは市町村の介護保険課。「なんでその課が担当?」なんて野暮な質問はなし。介護保険財政が厳しくなることで負担が上がって困るのは現役世代でしょうと説得します。
野生化するイヌ、ネコはいなくなって、動物愛護法の目的は達成されます。高齢者の要介護率は下がります。その結果、介護保険の給付費が減って、若い世代にも税や保険料の負担減で返ってきます。そして介護従事労働力を減らせますから、国全体の労働力確保に寄与します。そして最大の効果は、「歳とっても要介護になる確率は下がる」ことになり、精神的な老後不安が見に見えて小さくなることです。
行政施策の目的を実現するにはカネがかかるという誤った認識を変えることです。目標、目的が明確であれば、知恵次第で方法はいくらでもあり得るのです。
ちなみにパーキンソン病の治療薬など既に上市されている薬の投与で、対象者の5分の4に認知能力低下を遅らせる効果が観測されたなどの報告がされています。重篤な要介護状態になりたくないのが国民共通の願いです。「介護保険の給付額を10年内で半減させる」。厚生労働省にはそうした前向きの決意と挑戦を願いたいものです。

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