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380台湾有事と日本の民主政体護持

ちょうど1週間前、2021年8月7日のプライムニュース。「台湾有事に関して徹底議論する」との触れ込みだったが、内容的には消化不良感が残った。出演者は自民党の石破茂、立憲民主党の福山哲郎、日本共産党の小池晃の各国会議員。安全保障問題の代表的論客としての人選だったのだろうが、議論がまったくかみ合わない。
台湾有事にわが国はいかに対処すべきかが設題だが、福山、小池両氏は、「中国が台湾を併合しようとすればアメリカが黙っていない。両国間で戦争になれば、世界は終わりだ」との認識を示す。だからそうした事態の議論はしないという。都合が悪いことは起きないはずというのでは討論にならない。
起きてほしくないことではあるが、それが万一起きた場合にどうすべきかを問うているのだとの再質問に対しては、日本には憲法9条があるから介入できないとして、その後の議論を拒絶する。むしろアメリカが国内基地から出撃すると、日本が中国からの攻撃対象になる。よってそうしたことにならないよう外交を進めろと政府に迫る。
だけどどういう外交交渉をすれば、中国が台湾侵攻の意図を取り下げるのか。国際仲介裁判所の「南シナ海での中国領有権の主張には根拠がない」との裁定を「都合が悪いものは紙くず」と切り捨て、平和利用と国際社会に宣言して埋め立てた環礁を軍事要塞化して恥じないのが中国共産党である。立憲民主党や日本共産党に中国共産党の侵略意図をに翻意させる外交秘策があるとするのであれば、披露してもらいたいし、視聴者、有権者は聞きたい。
その点、石破氏が「台湾が専制中国の手に落ちれば、日本の民主主義体制も危ない」とする点は正しい。日本国憲法は民主制以外の政体を認めない。日本国の存立にかかわる事態である。「民主主義の維持(憲法前文)」と「戦争放棄(9条)」のいずれがより重要かよく考えて答えよと迫れば、大多数の国民は前者を選ぶはずだ。だって民主主義は基本的な価値観であり、戦争放棄は単なる手段なのだから。
だが石破氏が「自衛隊法を含む関連法制の手直しをしなければ対応できない」と評論家的な言い方に終始するのはいかがなものか。安保法制には条件反射的に反対するのが平和ボケ勢力である。その抵抗を抑えて、必要な国内法制整備や自衛隊装備の一新増強をするには、国民の圧倒的多数の賛成を得ることだ。その舞台として秋の総選挙は絶好の機会のはず。与党内を説得して、これを単一マターに総選挙に臨み、国民に決断を迫るくらいの肚(はら)がなくては、安全保障政策の根本的変更はありえない。「選挙の争点はコロナではない。台湾及び尖閣の有事であることを正々堂々選挙公約にしよう」と菅総理に決断を迫らなくてどうする。
中国が台湾回復を公然と口にすることの意味を日本の政治家はどう捉えているのか。中国共産党は旧領(歴史的には疑問符なのだが)を取り戻すのは当然の権利だと言っているわけだが、同じことを日本が言えばこうなるはずだ。「北方領土はわが国の固有の領土。ロシアが自発的に返さないのであれば、軍事力で取り返すまでだ。このことを国内法に書き込み、実力行使の準備を始める」。現状を力で変更する主張は世界を危機に導く無謀であるとするなら、中国の台湾侵攻明言も無謀のはずだ。



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