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信教の自由の基本は、宗教法人への差別をなくすこと

 旧統一教会についての国(文科省)は、解散命令など厳正な処分をすべきと京都新聞は社説で主張している。
 過去に解散命令が出されたのはオウム真理教と明覚寺(和歌山県)の2件だけであり、その前例に照らせば解散命令を裁判所が認めるだろうかとの弱気説もあるようだが、京都新聞はそれを一蹴している。その理由として挙げるのが「税制面で優遇する宗教法人に厳しく適格性を問うのは当然のことではないか」との認識。
 これには一も二もなく賛同するが、こうした宗教法人が引き起こす事件の再発防止にはもっと根本的な取り組みが必要なはずだ。
 原点に戻って「なぜ宗教法人活動が非課税なのか」。正常な宗教活動を弾圧すべきではないから、宗教法人狙い撃ちの特別な重課税をしてはならない。例えば宗教法人で働く職員に限って所得税率を2倍にするなどは許されない。半面、税率を特別に半分にすることも許されない。いわんや非課税にすることは宗教法人の特別扱いになり、憲法に違反する。税の減免は補助金支給と同じ経済効果を持つのだから。
 これにはだれも異議がないはずだ。ところが宗教法人の収益に関しては税法で非課税にされている。宗教法人には信徒からの寄付がつきものであり、原則贈与税が課される。自治体への寄付などは非課税だが、それは寄付金が公益目的で使われることが明らかであるためだ。
 では宗教法人の布教活動などは公益活動か。そうであるはずがない。そうなのだ。宗教法人活動が非課税とされていることが、問題の根源なのだ。宗教法人に対する税制上の優遇をすべてやめる。世間にありふれているボランティア団体などと同じ扱いにする。これだけで国民を惑わせてカネ儲けを企む輩が宗教法人の衣を利用する誘引がほぼなくなる。各税法を改正して宗教法人への非課税規定を廃する。国会議員がその気になれば即座にできる。税制度における違憲状態の解消をすると宣言すれば、反対する国民はほぼいないだろう。
 返す刀で課税法人になるということは、収益をごまかすなどの脱税の疑いがあれば、税務当局が調査に入ることが可能になる。これを宗教弾圧という者はいまい。善男善女の施しで信者の魂救済のためにいそしんでいる一般の善良宗教法人の場合、税務署の監査を受けて困ることは何もない。まともな宗教家であれば、むしろ税務Gメンが不況内容に感動して信者が増えるかもしれないとして歓迎するはずだ。
 
【京都新聞社説:旧統一教会調査 解散命令請求、厳正に判断を】(2023年9月5日)
 宗教法人法に基づく世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の調査で、政府は質問権行使に区切りを付け、解散命令請求に向けて検討を進めるという。
 早ければ10月に宗教法人審議会を開いた上で東京地裁に請求する。
 過去に法令違反を理由に解散を命じたのはオウム真理教と明覚寺(和歌山県)の2件で、いずれも教団幹部が刑事事件で責任を問われている。
 旧統一教会に対しては、民事上の責任を認めた判決や高額献金の被害者証言など広範な証拠を総合し、解散命令の要件を満たすとの考えのようだ。
 政府内には「信教の自由」を理由に慎重な意見もあるようだが、税制面で優遇する宗教法人に厳しく適格性を問うのは当然のことではないか。
 教団を巡ってはトラブルを訴える声が全国で上がり、法外な献金集めなどにあえぐ信者家族らの深刻な実態が次々と明らかになった。
 故安倍晋三元首相をはじめ自民党議員らとのつながりも国民の政治不信を深めた。
 岸田文雄政権は政治的な思惑を排して、被害の実態に向き合い、厳正に判断しなくてはならない。
 形だけの請求ではなく、裁判所が決定できるよう証拠をしっかり固めるべきだ。
 文化庁は昨年11月以降、質問権を計7回行使した。質問は少なくとも計600項目に上る。
 だが初回は段ボール箱8個分だった教団の提出資料は、回を重ねるごとに減少した。
 回答していない項目もあるとして、過料の罰則適用を検討するという。
 政府内には「期待したほどの資料は出てきていない」との声も聞かれるが、国民には長引く質疑の途中経過が見えてこなかった。
 強い姿勢を持って組織の実態に迫れたのか。可能な限り情報を公開し、判断に至る過程を検証できるよう求めたい。
 解散命令に至ったとしても、それで終わりではない。被害の救済や抑止などに引き続き取り組まなくてはならない。
 自民党と教団の関係は、安倍氏銃撃事件から1年以上たっても未清算のままである。
 党総裁でもある岸田首相は「過去を反省し、関係を絶つ」と宣言した。だが、選挙で教団票を振り分けていたとの証言がある安倍氏について「本人が亡くなり、限界がある」とし、客観的な調査自体を放棄している。
 票の差配に関与したと疑われる細田博之衆院議長は十分な説明をしておらず、教団の名称変更に自民議員が関与した疑惑も解明されていない。
 教団との深い関係が指摘された議員らが党の要職に復帰したり、次期衆院選の候補に決まったりしている。
 政権と党の姿勢が改めて問われる。

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