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632時間銀行 地域福祉の原型

NHKの報道番組で「時間銀行」の紹介をしていた。Aさんが忙しいときに、Bさんが代わりにAさんの犬の散歩をしてあげる。その2時間をBさんは“貯金”しておき、そのうち1時間をCさんが主宰する料理学校での授業料として使う。Cさんは授業料として得た時間貯蓄を、自分の父親の介護を手伝ってくれるDさんへの支払いに充てる。Dさんは職探し中で、必要なスキルをAさんから学んでいる。
…詳細は忘れたが、ざっとこんな感じ。
交換価値を評価する単位はマネー(円とかドルとか)だが、各自の保有額が違う。それで不平等が生じる。だれもが公平に持っているのが時間。それを共通の交換価値にするというコンセプト。考えてみれば、わが国に昔からあったとされる「ユイ」とか「モヤイ」という共同作業や助け合いも、基準は労力提供した時間。その交換記録をパソコン管理等で正確にできるようにしたものと理解すればよい。
仕組みに参加しているAさん、Bさん、Cさん、Dさん…みんなが満足できれば、それでよい。交換価値基準を法律で定めるなどまったく余計なおせっかい。

ネットを見るとボクにはいいろいろ解説が出ていた。その一つが下記。
スペイン:お金ではなく「時間」をやりとりする新たな経済の誕生? 日本が発祥、スペインで目下流行中の「時間銀行」とはどういうものか | 週刊エコノミスト Online (mainichi.jp)
事例としてスペインのタルーニャ州ジローナにある「ポン・ダル・ディモニ」時間銀行を挙げている。運営管理者の一人、元電話会社技術者のパブロ・リドイさん(60)によると、彼らの時間銀行には890人のメンバーがおり、大半の人が独自のウェブサイトに自分の時間預金口座を持っている。各メンバーの連絡先と提供できるサービスもサイトに掲載されているので、サービスは直接頼んでもいいし、パブロさんのような運営管理者を通して依頼してもいい。

少子高齢社会を乗り切るには地域再生が鍵であり、“地域包括ケアシステム”の振興が重要だとわが日本政府は言い、巨額資金を自治体に交付しているが、その成果は見えない。一歩下がってカネのバラマキをやめ、時間銀行のようなものがどうすれば地域で自発的に発展するかのアイデアを考えるべきだろう。
わが国の社会保障の柱は社会保険という加入者による助け合いである。あらかじめ保険料を納付しておい、給付を受け取る。その保険料がカネではなく、労力の提供であってもいいではないか。介護保険などその典型。若くて健康なときに余暇時間を使って介護労力を提供しておく。それをきっちり記録しておき、自身が要介護になったときに時間貯蓄を取り崩して他人から介護を受ける。これが世代を超えて連綿と続く。介護保険の基本コンセプトはこんなものだ。巨額のカネを介在させる必要などないのだ。
必要なのは要介護状態にある人が必要な介護サービスを受けられること。そのために事前の保険料納付システムを普及させることが必要になる。保険料が「カネでなければならない」ことはない。「時間の方が公平なのではないか」。それを時間銀行が教えてくれる。

資本主義社会なのだからカネは重要だ。しかしすべてをカネに換算しなければならないというのは間違っている。NHKの報道番組の企画者も実はそう思っているのではないか。ひそかに思ったことだ。
「経済価値を有するサービスを交換しているのだから、それで得た利益に課税しなければならない」。わが国の場合、そういう発想のお役人が登場して、せっかくの助け合いの実践である時間銀行がつぶされないよう注視することも必要だ。

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