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18/n シン・左右のカッター チェンソー、ソーチェーン(チェンソー用チェーン)、目立ての正しい理解

ソーチェーンサービスジャパン(略: SSJ)です。

SSJは当事業体(2024年2月スタート予定)の宣伝も兼ねて、タイトルの記事をシリーズ化してnote上に公開することにしました。本記事の内容はXアカウントのhttps://twitter.com/SSJP2023 固定ツイートで先行公開していますが、noteで公開する内容は、Xアカウントで公開中の資料 「4D Sawchain Study」の「 V.1.25」以降の内容となります。

左右のカッター

 「カッターは右と左で角度や長さを同じようになるように目立てをしましょう」と、これはメンテナンス講習やチェンソー講習、伐倒研修、目立て講習など、チェンソーを扱う場面では99%出てくる決まり文句と言ってよいと思います。但し、このフレーズはあまりに物事を簡単に表現し過ぎているので「左右で必ず同じでなければならない」というユーザーの強迫観念や、教える側と教えられる側の間で「都合の良い逃げ道」を産んでいるような気がします(「ヤニが上刃の天面に付いていると切れ味が悪い」も同様です)。
 「チェンソーが切れ曲がった」の原因が「左右が等しくなかった」であることはありますが、「左右が等しくないと切れ曲がる」は常に必ず起こるわけではありません(少し昔のインターネットなテーマを持ち出すと「無職」だから必ず犯罪者予備群というわけではありません)。

左右のカッターの差を埋める要素

 4/nで述べたように、ソーチェーンのカッターは「チェーン」であるのでリジットな刃物ではありません(「動く」とうことはすなわちクリアランスがあるということです。クリアランスがきつくなるほど摩擦で物体は動かなくなります)。リジットではなくフレキシブルなものである為、そのフレキシブルでカバーできる分は、リジットな部分=左右の差をカバーできます。よくわからない方は続きカッター(1本のループ内で右カッターや左カッターが交互ではなく連続して続く配置があること)のことを考えてください。角度や長さだと言う前に、左右で同じぐらいカッターの頂点が鋭くなっていることが大事です。左右の仕上がり差によって「速く切れる」→「切れる」→「切り口の表面が波打つ」→「曲がって切れる」→「曲がりが大きすぎて(バーが材に当たって)切れなくなる(チェーンだけ空回りする)」と状況が変わっていきます。

また、左右のカッターを完全に等しく揃えたソーチェーンであっても、そのソーチェーン上のカッター全てが常に100%働いているわけではありません。これは3/nの末で述べたように、バーを側面から見た場合の1つのカッターが成す切削面は曲面を描くのと、左右のカッターが後述のTop Endをお互いのつっかえ棒にしながら交互に切り進めているので、この範囲の「フレキシブル」に収まる「リジットな差」は吸収されていきます。これはピッチやカッターシーケンスが大きくなる程、フレキシブルの許容量は大きくなっていきます。続きカッターはほとんど働かないので邪魔なら吹き飛ばしてください。


Top Endは左右のカッターでオーバーラップします

左右のカッターの差を埋める要素、の補助

 ガイドバーの硬さ(強度や耐久性とはまた異なります)、長さ(短い程切れ曲がらない)、レールの摩耗度、直進の慣性を生み出す本体のパワーです。ちなみに、ですが、フルチゼルよりセミチゼルやマイクロチゼルの方がワーキングコーナーのジオメトリーと働きによって切れ曲がりの発生が少なくなります。

左右のカッターの差を埋める目立てのコツ

 これは求められる結果から体の動きやポジションを逆算するか、できない部分は治具や機械に頼るしかありません(私が知る限りピッチングマシンの代わりに生身の人間が投げてくれるバッティングセンターはありません)。たとえばチェンソーをフリップオーバーするとか、チェーンを一旦外して逆回転の向きに付けるといったひと手間が必要になります。

左右の差を打ち消す目立て治具

メンテナンス作業の最終段階で帳尻を合わせてくれる目立て治具です。左右の差で1つ1つのカッターのノギスの数値に振り回されるよりはよっぽど良いと思います。

「左右のカッターの差」の帳尻を合わせてくれない目立て治具

コンスタントデプスゲージ式

この手のタイプは前後のカッターの長さ=高さが異なると狙いのカッターのデプスの狂いに直結します。

左右の差を「ノギス」で合わせると

 左右の消耗は常に等しいわけではありません。せっかく揃えた後に今度は右側が、今度は左側がと… バーが何よりも大事なのであれば別ですが、伐木競技者以外では「あまりに遅い」「切り口が波打つ、曲がる」という時以外は、数値を揃える必要は実務観点では無いように思います。市販のノギスではカッター形状により「上刃の長さ」を正確に数値に出すことはできません。

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