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6/29(日記)

 一年で髪もずいぶん伸び、一年でずいぶんと私も私を取り巻く状況も変わったように思う。一年前のフォルダを漁っていたら、ヘッダーの写真が出てきた。一年前。つまり2023年の私は、7年前である2016年に撮った写真を見返していて、ちょうど6月の末に暮らしている部屋のスナップを懐かしんでいたようだ。

 今日は遅い朝に起きて、実家に帰った。先週も夫を連れて遊びに行ってた。今日は一人で帰った。ボーナスが入ったから何かちょっとご飯でもご馳走しようかねと思ったのと、先週帰ったときに母が全然呑みたりなさそうだったから、帰って飲酒に付き合おうかと思ったのだ。

 生まれてから22歳まで実家に住んでいた。私が実家を出てしばらくして、実家のリビングと水回りを総リフォームしたので、私が子ども時代を暮らした実家と今の実家は、器は一緒だけども、内装が全然違う。指で押すともろもろと崩れる黄色い土壁も、色褪せたふすまも、ふて寝して涙で濡らした黄色い畳も自室も平成初期的な色合いのダイニングキッチンももうなくて、令和的な二重窓と、料理しやすい対面キッチン、軽くて閉まりやすい扉と、明るいベージュのフローリングが「ずっと前からこうでしたけど?????」みたいな表情で、私の実家を演じている。

 実家のみんなと、実家の近くにある焼肉屋さんに行った。私が子どもの頃から存在していた焼肉屋さん。地元で評判の焼肉屋さん。だけど、家族で行くのはおろか、足を踏み入れるのも初めてだった。ちゃっちゃと昼間に電話で予約を入れる。弟が「うおー、今晩は焼肉かー!」と、湧く。節制家の父は「えー、もっと安いとこでええのにー」とぼやく。母は、「肉はともかく、ジョッキでビールを飲みたい」と、目を輝かせていた。

🍺🍺🍺

 店に入ると、元気な-しかし、昔から知っていたような顔立ちの-地元の人っぽい店員さんが笑顔で出迎えてくれた。生ビールを四つ頼み、「高っ、このお得セットでええやん」などとぼやく父に「野暮なこと言うなよ」と制止しながら、赤身の盛り合わせと牛タンを注文する。ジョッキがキンキンに冷えてて、ビールがおいしい。網でジュージューと焼く。(ちゃっかりホットペッパーの10%offのクーポンも出した。)
 サラダのとりわけを弟に頼み押し付け、先が細くて挟みやすいトングで、繊細にタンをひっくり返す。母のお酒の進みが早い。父と弟は、ジョッキ半分でもう真っ赤だ。ハイボールを二つ頼む。お酒がしゃりしゃりに凍っていて、おいしい。

 「家族で暮らしていて、こんな風に焼肉屋さんで飲むのは初めてだね。あんたたちが大人になってからは、いろいろと大変だったから…」と、母がへらへらと笑いながらそう言った。確かに、大変だった。何が、どう大変だったかをここに詳らかに書くのは難しい、、、のだけども、よくある一般的ないろいろなことでして、いろいろと困難なことがあった。平たく言うと、家族の心身の病気とか介護とか、進路とか、仕事とか、そういう誰にでも起こり得ることが重なって起こった時期があった。
 
 ジョッキを傾けながら、そうだね、10年ぐらい前は今よりも大変だったよねー、よく乗り越えたよねー、なんて肉を食べながら話し合った。ちょっとジーンとしながら。

🥩🥩🥩

 生ビール、ハイボール、弟(ド下戸)から奪った生ビール、翠ジンソーダと、外で大きなグラスのお酒を4杯も飲む母親のことを、生まれて初めて見た。
 楽しそうに笑いながら、しゃっくりが止まらないようでヒックヒックしながら、時折カベに頭をぶつけつつヘラヘラとしていて、「しあわせだなあ」「たのしいなあ」と、幸せそうだった。

 「へへへへ、全然酔ってないよ、正常だよ、大丈夫だってば、へへへへへへ!」
と、やたらと上機嫌な母を左右と後ろから挟むようにして、家までの道、15分ほどを歩いて帰った。
 帰って、楽な格好に着替えたかと思うと、母はフローリングの床に横たわって気持ちよさそうに眠ってしまった。実家のクセして私の子ども時代を知らない、にわかなフローリングも、しっかりこの家の人たちの安らぎの床なのだ。

💤💤💤

 順番に風呂に入り、母も真っ当に起き上がり、風呂に入って上がってきた。
 私はこうして、これまた私の子ども時代を知らないソファに寝そべり、アルコールが残った頭でnoteを書いている。もう私はこの家の住民ではない。近所の面々も年老いてきた。私が帰ったあとも、この知っているようで知らない家は、家族にとっての家であり、内部はリフォームしてると言ってもガワは築30年を越えていて、耐震とか防水とか防虫とか劣化とかいろいろな懸念事項を抱えている。

 同じ屋根の下にいても、違う悩みも同じ苦しみも抱えていたみたいだ。こうして10年ぐらい経って、お酒の力を借りつつも、初めて話しができた。とても幸せなことだなあと思う。言葉を交わさないと、なんとなくの共通認識?みたいな感じです終わっていたと思う。

 私は大丈夫なんだろうか。家族も、大丈夫なんだろうか。夫も、職場も、友達も、政治も地球も、心配なことだらけである。わかんないな。
 まとまらない頭なのだけれど、おいしいものを食べて、なんか飾らない言葉で元気に話し合って、とってもいい時間だったから、まとまらない言葉だけど書き留めとく。

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