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装丁おぼえがき(2022下期)

はじめに

去年の11月くらいに頒布した同人誌2冊の装丁に関するおぼえがきです。どちらも中綴じステッチ(ミシン)製本です。
紙とかフォントとかデザインの話とか。
二次創作(男女CP)の要素を含みますのでご注意ください。


『おやすみユートピア』

【仕様】
A5正方形/28p
表紙:マーメイド 160kg スノーホワイト
本文:ニューシフォンクリーム 75.5kg
加工:中綴じステッチ、本文色刷り(マルベリーパープル)

【印刷】オレンジ工房.com様

▲オレンジ工房さんのこのツイートを見て急遽つくった本です。以前どこかでお見かけしたミシン綴じにずっと憧れていたので、復刻されてとても嬉しかった。


仕様について

サイズはA5・A5正方形・長方形から選べるのですが、本の内容が童話モチーフだったので絵本っぽいイメージにしたくて正方形にしました。

表紙用紙のマーメイドは画用紙っぽい素朴な手触り。人魚姫テーマの話を収録していたのもあってこれは即決しました。柔らかいので、通販作業の際はうっかり折り目がつかないように気を使いました。
本文用紙のニューシフォンクリームはクセのない薄クリーム色。ざらざらめで、文章のテカリはあまり気になりません。イラストの塗りつぶし部分とかはさすがにちょっと気になるけど。裏写りもそんなにしない印象です。

綴じ糸の色は表紙側が紫、本文側が黒。収録カプのイメージカラーです。紫の糸はかなり濃く、ぱっと見黒にも見えそうなくらい。

表紙側。写真で見るとほぼ黒
本文側。真っ黒な糸。漆黒感が推しそのもので大変よい

本文は色刷りも選べたので、せっかくならと挑戦することにしました。
ただ画面上だけだと色のイメージがつかなかったので、サンプル等はないのか印刷所に問い合わせました。
「サンプルの用意はないが試し刷りで希望色の印刷は可能」との回答だったので、提示いただいたやり方で試し刷りを注文しました。(その節は丁寧なご対応ありがとうござました)※今も対応可能かは分かりません。

本文試し刷り2種類

色数がかなり豊富で迷ったのですが、可読性や雰囲気を考慮してミッドナイトブルーとマルベリーパープルの2色でお願いしました。
どちらも読むのに邪魔にならない色味だったので、表紙の色味と合わせてマルベリーパープルにしました。マルベリーはクワの実なのですが、クワの花言葉が「彼女の全てが好き」「ともに死のう」らしくてオタクは震えました。

ミシン綴じって耐久性はどうなんだろうと思っていましたが、1年弱経った今もほつれ等はなく、普通に読む分には問題ないです。
とにかくかわいい。中綴じなので開きやすいのもいいですね。ノドをどれだけとるか悩まなくていいし。


デザインについて

表紙・裏表紙

童話モチーフ短編集なので、表紙は「舞台の幕が上がる」「各話のモチーフ」「かわいらしいけどどこか不穏」とかをイメージして作りました。

題字フォントはくまもと本丸ゴシック銀杏の秋と冬。かわいらしい丸さをベースにしていて読みやすいので好きです。一部の崩れた文字から、日常のすぐそこに闇が潜んでいる感じとか儚さとかが出ていたらいいなあと思ってこうなりました。
裏表紙の英文フォントはSkiaです。ライトはちょっと細すぎたのでレギュラーがちょうどよさそう。あとは困ったときのリボンと放射線状のアレ。

ちなみに表紙デザインについても前述の試し刷りで事前確認しました。

花がでかすぎた

右案の色味は全体的重くなりすぎると感じて左案を採りました。最終稿の実物は想定よりもくすんでしまったので、やっぱり印刷難しい…と思いました。どうなるかなっていうドキソワ感も楽しいんですけどね。

本文フォントは筑紫Aオールド明朝。
オールド感と可読性のバランスを考えて選んだのですが、ちょっと細くて掠れる感じ……。サイズをもう少し大きくすればよかったかな。不穏感は出ていたのでまあとりあえずいっか。
筑紫明朝と迷っていたので、試し刷りではサイズ別に合計4種類印刷してみました。雰囲気優先で結局筑紫Aオールド明朝に。
オールドの方の「Q」がすごく好きなのでタイトルとかでまた使えたらいいな。あと「ら」とか「ち」とかの縦線がまっすぐで美しい。背筋のすっと通ったお淑やかな着物美人みたいな印象。うっとりします。

あと、今回は全体的な世界観を大事にしたかったので、詩的なものを挿入してみました。表紙をめくって童話のなかに没入できる感じにしたく……。導入は受けの女の子側の視点、締めは攻めの男の子視点でした。
もやもやのサイズ感で夜が更けていくのを表現したのですが、裏表紙には結構透けちゃいました。白くて薄い表紙だとやっぱり遊び紙が欲しいですね。

導入
締め


『bouquet.』

【仕様】
A5正方形/40p
表紙:(上)トレーシングペーパー 74㎏
   (下)ファーストヴィンテージ 135kg ベージュ
本文:ニューシフォンクリーム 75.5kg
加工:中綴じステッチ

【印刷】オレンジ工房.com様

▲再びオレンジ工房さんが衝撃的な可愛さのセットを出していたので飛びつきました。


仕様について

上の中綴じステッチセットに白印刷トレペがついたものです。ツイッターでドライフラワーのトレペを見た瞬間、「このセットで絶対に花言葉モチーフ本を作らねば」と思い立ちすぐに準備を始めました。

正方形が気に入ったので今回も正方形に。組版も前回のものを流用できたので楽でした。
表紙用紙のファーストヴィンテージベージュは、模様のような繊維がナチュラルな感じで植物モチーフとの相性抜群です。トレペはしっかりしていて半年経ってもヘタっていません。

綴じ糸は表紙側が赤、本文側が茶色。花壇のイメージでお花と土っぽい感じにしました。表紙全体がくすんだ色だったので、赤い糸はいいアクセントになりました。とっても可愛い。

推しカプを綴じ込む赤い糸…


デザインについて

表紙・裏表紙

トレペのデザインは定型なので、そのデザインに合わせて表紙を作りました。
お花トレペにお花畑とかを重ねるとくどいかと思い、グリーンベースにしています。写真素材をイラスト風に加工して、そこに溶けこむように女の子をどうにかこうにか描きました。ドレスを着た女の子を描いたつもりなんです。
裁ち落とした側は広がりが出るので、写真の上部を切って緑のトンネル屋根側の印象を強めました。覆われてひっそりしている感じとか秘密の花園感が出ないかなあと。
上からトレペを被せるのでイラストも文字も色を濃くしています。

ファーストヴィンテージベージュは紙色の主張がそんなに激しくないので、使いやすい紙だと思います。色褪せた写真みたいな感じにしたかったのでイメージ通りになって嬉しい。

題字フォントはAcademy Engraved LET Plainだったはず。他の英文は多分Gill Sans ライト。(ラスタライズ後データしか残っていなかったので曖昧…)
本文フォントは夜永オールド明朝。端正だけど可愛らしさもあってとても好きです。なんとなく花束に合う感じだなあと思って選びました。読みやすくてよかった!

試し刷り。フォント名間違っててすみません

このセットは40pというページ上限があったので少し苦労しました。
5つの短編を収録していて、話ごとに花と花言葉を載せた扉ページを作りたかったのですが、入り切らず断念。結局冒頭に挿し込む形にしましたが、これはこれで結構気に入っています。数字フォントはDidot。かわいい。

各話タイトル表記はこんな感じ

あと目次は締切前に焦って作ったせいか、ごちゃついてしまった……頭の中の混沌具合が紙面に出てしまったので反省。デザインに迷ったら引き算!


さいごに

中綴じステッチセットはちょこちょこ復刻しているようなので、ご興味ある方はぜひチェックしてみてください。今は糸の色もすごく増えているみたいです。金糸いいなあ…!

そしてこのゴールデンウィークにまた1冊作りました。秋あたりにまた新しい本を作りそうな感じがあるので(またIndesignの契約しちゃったし……)、それはまとめてnoteに書けたらいいな。

最後まで読んでくださりありがとうございました。