2021.10.

私はいつもガラスの向こう側の人を眺めていた。
通りかかる人々はこちらの様子をガラス越しに眺めている。
私と目があっても、何も見えなかったみたいにまた正面をみて去っていく
こちら側の闇をガラス越しに見ている。
見えないふりをしている。

私は、それを良しとしている。

それでいい。何の問題もない。

ガラスの向こう側に視線をやるだけ、
出してくれと訴えることもない。

みんなガラス越しにちらりと見るだけで、こちらはこちらと割り切っているように見える。

ショーケースなんて美しいものではない。
強いて言うなら自分という無名作家の絵画の中。

私はそれで良いのだと思った。

絵画の中にいることに甘んじている。
そういう人生なのだと。

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