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誘惑

甘美なる誘惑が僕を襲う
愛するものに向かって激情をぶつける
怒りでもなく悲しみでもなく
ただ受け止めてくれる
受け入れてくれる安心だけを求めて
何度も繰り返す
暴力的な言葉と攻撃
そしてそれを正当化する論理を押し付け
愛という御旗の下で声を荒げる
いつかこの偽りが暴かれ
僕は孤独になるだろう
甘美な香りは一抹の寂しさ
絶望の予感
抜け殻の蝉のような愛は
実体を失ったまま
まもなく晩夏を迎えるだろう
その先にある秋は
さらに厳しい冬の予感
春を感じようと思いながら
寒さに命尽きるだろう自分
引き返すなら今だと
本能の馬が急ぎ足で教えてくれている
すがる枝がまだ若く撓ってくれているうちに
蜘蛛の糸を掴め

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