テレパシー

最も親しい人、
例えば、熱愛の恋人、長年連れ添った配偶者、
そういう相手のこころの底まで知りたいと願う人は多い。

しかし、どんなに願っても、
相手を知るには限界がある。
どうしてだろう。

自分自身の内面の声を聞く、
心身のメッセージを感じとる、
そのときも、
言葉を聞きとるのではない。
感じるのだ。

一種のテレパシー。

人と人のコミュニケーション能力は、
話し言葉が生まれる前から、すでにあった。

話し言葉の歴史は約10万年にすぎない。
言葉を使わないでの、意思疎通の時代が長い。
たぶん、百万年以上。

言葉を使わない会話というと、
今の人たちは、
不可能に感じるだろうが、
今も、類人猿たちは、そうしている。

カラスさえも、30種以上の鳴き声がある。

人も昔は、言葉なしで会話していた。
目や顔の表情、
身振り手振りで大体のことは通じる。
スキンシップもある。

言葉はなくても、声は出せる。
音楽もある。

同じ生活習慣で、共通の暮らし方、
意思の伝達は充分にできる。

今の時代で、
言葉によって相手を理解しようとすると、
どうしても袋小路に入る。
迷路をさ迷うようになる。

言葉は、記号と概念。
道具にすぎない、
万能と勘違いする人が多い。

例えば、「愛する」という言葉一つ取り上げても、
言葉を使う場と事情の文脈が違えば、
まったく異なる意味になる。

つづく


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