天使と暮らして その1

南無南無(なむなむ)

 娘が発病し激変した生活の中で、興味深いのは、
同じやり取りを繰り返す恒例行事が大幅にふえたことだ。

 例えば、娘は多い時、日に16回も
ベッド傍のポータブルで小用する。

 下着の着脱は介助を要する。体力低下で悩む
69才の私は足腰や腕に負担を感じる。
「どっこいしょ」と掛け声が口をつく。
「ファイト」と応える娘。

「年なの」と私。
「もちこたえてよ」と娘。

「神様に祈っておいて」と私。
 すると娘は、
「南無南無。何度でも言ってやる。南無南無・・」と続ける。

 この会話は毎日繰り返される。
 単調な反復だが、私はむしろ安心する。

娘の病は進行性なので、現状維持で大満足。
昨日と同じでいいのだ。

 続く。

(上記は2016年5月の日記)

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