マガジンのカバー画像

45
詩です。
運営しているクリエイター

記事一覧

「さようなら」を聴くために

この耳は 君の「さようなら」を聴くために 生えてきたのでしょう 出逢えなければ別れもなかっ…

4

わけもなく

朝になるたびに カーテン開けるのは面倒だから もうずっと開けっぱなし 眠れない夜も開けっぱ…

3

やさしかった僕

僕をやさしいひとだと言った あなたはもういない 僕にも悲しむ権利はあるか だれに問えばい…

1

その声でこの首を

君の声にこの指で触れたい どんな肌触りなの どんな温かさなの 君の声をこの指でひっぱりたい…

1

An-i ‘n’ Stole

すべてを壊してしまいたいと こんな世界を崩してしまいたいと なにもかも捨ててしまいたいと …

1

星たちの心中

天の川で入水した 星のなきがらが ひとつ ふわふわと流れてきました 身元のわからない その星…

3

美しい不幸

あの人の不幸は美しかった 可哀想で憐れむべき存在 愛されるべき存在 死ぬ間際に ハッピーエンドが来ることを 約束された存在 そんなあの人を どんなに真似したところで わたしに ハッピーエンドが来ることなど 誰も約束してくれなかった わたしの不幸は醜かった だから隣に あの人の美しい不幸を 並べないでください わたしは あの人の不幸の美しさを 際立たせるために ただそれだけのために うまれてきたのでしょうか

そのまま通りすぎて

空が晴れて見えたのは 網膜が青く 塗られていたから 逃げるために歩いていたのか 追いかける…

1

マチカド

細い道を一人で歩く 行きたい場所などない 会いたい人などいない あてどなく一人で歩く マチ…

2

ひっくり返った勿忘草

小さな青い花に 幼い頃は見蕩れていた  わたしを忘れないでください 勿忘草が泣き喚く 耳障り…

2

海が始まる

わたしの涙腺の中を泳いでいる あの子の名前をもう一度 呼ばせてください 始まってしまうこと…

1

無機物になって

胃袋が空っぽで 死んでしまいそうなほど 飢えているのに 愛なんて 欲しがってる場合じゃない …

1

気の狂れた時計

僕はあなたのように 狂ってしまうことができない あなたの龍頭は滑らかに回るけれど 長針と短…

珈琲

その黒い水面にミルクを落としても 灰色にはならない 僕はつまらない色覚正常者 空調の効きすぎた店内で 心臓だけが寒さに震えていた 五百円で買える週刊誌の一ページに 少女Aとしてあの子の顔が写っていた 出来合いの安っぽい愛を売って 金にかえられると知ってしまったあの子は 薄っぺらい好奇心の餌食になって だんだん擦り減ってきっといつかいなくなる 涙も流せないほど からからに乾いてしまった がらんどうの体の中に 流行りのラブソングが不協和音となって なりひびく 今日も一日生き