ミステリの賞って、調べてみるとかなりの数があるので驚きます。
年末の各種ランキングをはじめ、新人賞のほか、
本格ミステリ大賞や作家の名前を冠した賞、そして、
今回の話題である日本推理作家協会賞。
毎年、私はこれら賞を楽しみにしながらミステリ小説を読み進めているわけですが、先日3/15に第77回日本推理作家協会賞の候補作が発表されました👏
まずは〈長編および連作短編集部門〉から。
この中だと地雷グリコとアリアドネの声が読了済みでした。
地雷グリコはとにかくエンタメとしても頭脳ミステリとしても爆発級に面白い。「早く続編を出してくれ……!」と私は射守矢真兎の活躍を待っているのです。しかも本格ミステリ大賞の候補にも挙がっているんですよ……?
アリアドネの声は久しく「うぉぉ、めっちゃ読みやすい!!」となった作品で、手に汗握る緊張の後に待つ結末には「くぅぅぅ」と噛み締めた歯の隙間から息を漏らすほどでした。アリアドネも発売から瞬く間におもしろさが広まっていきましたよね。
その他の作品は書影は確認していたもののついに手に取ることはなく……候補に挙がるということはそれだけ面白い作品なのだろうなぁと、だけど読むことなく結果を知ることになるだろうなぁと、多くの積読を後ろに控える私は思うのでした。
本当はそれら作品も全て読み切ってから賞に臨みたいのに……懺悔として、あらすじをご紹介します。
『焔と雪』伊吹亜門 著
『楽園の犬』岩井圭也 著
『不夜鳥』荻堂顕 著
──そして〈短編部門〉がこちら。
天祢涼先生が候補に入ってる〜〜〜!!!!
2012年に単行本が刊行、2015年に文庫化され、2022年に再文庫化された『葬式組曲』に収録の『父の葬式』もまた2013年の推協賞短編部門候補に挙がっていたのです。それから11年ぶりの再登場。
その『一七歳の目撃』は現在刊行されている『少女が最後に見た蛍』に収録されている、一七歳の高校生を主人公にした、社会派ミステリの短編です。
ひったくり現場を偶然目撃してしまった高校生の葛藤と、ホワイダニットが至高なのです!
受賞したら嬉しいなあ。
また、宮内悠介先生も、同じく2013年に『青葉の盤』で候補に挙がっていたので、ここが揃うのはなんとも面白い偶然。
そしてこの中ですと、太田愛先生の『夏を刈る』は積読しているので時期を見て読めたらなぁと思っています。
短編部門に関しても、未読かつ手元にない作品はあらすじだけでもご紹介。これが私にできる精一杯の盛り上げ……!
『消えた花婿』織守きょうや 著
『ベルを鳴らして』坂崎かおる 著
『ディオニソス計画』宮内悠介 著
〈評論部門〉はこちら。
以前には阿津川辰海先生の『阿津川辰海 読書日記 かくしてミステリー作家は語る〈新鋭奮闘編〉』が候補に挙がった(こちらは本格ミステリ大賞の〈評論・研究部門〉を受賞)こともあるので、普段から馴染みない畑ではあるものの、ミステリ評論本というのはミステリの造詣を深めるためには必読なのです。
候補作はどれも未読なので、あらすじをご紹介。
『舞台の上の殺人現場 「ミステリ×演劇」を見る』麻田実 著
『ミステリ・ライブラリ・インヴェスティゲーション 戦後翻訳ミステリ叢書探訪』川出正樹 著
『江戸川乱歩年譜集成』中相作・編
『謎解きはどこにある 現代日本ミステリの思想』渡邉大輔 著
こうしてあらすじを読むだけでも、非常に興味が湧いてくる作品があるのです。
小説原作の映像化や実写化の話題に興味がある(結果的に鑑賞するかはおいて)私は、『舞台の上の殺人現場 「ミステリ×演劇」を見る』や、時代と共に変化する探偵像を論考した『謎解きはどこにある 現代日本ミステリの思想』が気になります。
また、翻訳ミステリに詳しくないので『ミステリ・ライブラリ・インヴェスティゲーション 戦後翻訳ミステリ叢書探訪』はその量に圧倒されるだろうし、江戸川乱歩の「ら」の字も読んだことのない私にとって『江戸川乱歩年譜集成」は濃密な情報量に潰されかねません。
ミステリのジャンルや作家像を独自の視点で再構築して文章にまとめ上げるその力に、読書の魅力を発信したいと切望する私は憧れを抱きます。
どれも素晴らしい作品なのでしょう。
最後に、〈試行第二回翻訳部門候補作〉です。
前回からはじまった、翻訳部門。二回目となる今回は、以下の作品が候補に挙がっています。
タイトルを目にしたことはあってもどれも未読かつ積読にもないので、やっぱりあらすじを紹介。
『厳冬之棺』孫沁文・著 阿井幸作・訳
『トゥルー・クライム・ストーリー』ジョセフ・ノックス・著 池田真紀子・訳
『頰に哀しみを刻め』S・A・コスビー・著 加賀山卓朗・訳
『哀惜』アン・クリーヴス・著 高山真由美・訳
『死刑執行のノート』ダニヤ・クカフカ・著 鈴木美朋・訳
この中で発売から気になっていたのは『厳冬之館』でした。「密室殺人がすごい!」って聞いていたのです。ただなかなか書店で見つけられず……現座に至っています。
その他の作品についても知っている著者名ばかりで、これもひとえに阿津川辰海先生による『阿津川辰海 読書日記 かくしてミステリー作家は語る〈新鋭奮闘編〉』のおかげです。
また、表紙でインパクトがあったのが『頬に哀しみを刻め』ですね。あらすじを読んだだけでもミステリを支える骨太の人間ドラマがあるのだと伝わってきます。
『死刑執行のノート』は一人の人間が多面的になっていく構成(だろうと思われる)に、常に心が揺さぶられるのかなと予想。タイトルとは裏腹に表紙は非常にオシャレです。
『トゥルー・クライム・ストーリー』における、『被害者も関係者も、作者すら信用できない、サスペンス・ノワールの問題作』は、完成させた犯罪ノンフィクションというワードから、“手記モノ” の気配を感じますね。ノワール小説はあまり読んだことのないので、しかも問題作ってどういうことなんでしょう……? 想像が膨らんでしまいますね。
『哀惜』は、小さな町で起きる奇妙で複雑な事件という点に惹かれます。小さいからこそ扱われる事柄が少なくなり、その少なさゆえに一つ一つが次第に厚みを増して、思いもかけない真実が浮かび上がる……みたいな。海外の推理小説を(国内と比べると限りなく少ないながら)読んでいると、たびたびこうした作品と出逢います。これは相関図をきちんと押さえなきゃいけなそうですね。
さあて、全ての部門についてコメントしていきました。どれも面白そうで、ここからどれが選ばれるのかはまったくわからない。
願わくばあの作品が……はあるものの、完全に予想してしまうのとはまた違った楽しみを噛み締めつつ、発表を待ちたいですね。
新年度に向けていよいよ期待が増していきます。
ここまでお読みくださりありがとうございました📚