TEN colorsの中の人 スタッフH

新年を迎え、久しぶりに新しいスニーカーを買った。
今どきのスニーカーは素材がいろいろあって、一見ゴム底のようだが、まるっきり軽く、年々脚力の衰えを感じる中年にはすごくありがたい。
いつもより足取りも軽く歩き出したら、素材は違えど、ソールがアスファルトをキュッと掴むような感覚が蘇る。おろしたてのスニーカーでしか味わえない不思議なそれをこそばゆくも感じながら、新しい事に食いつくと言えば彼女だよなぁと思い出した。
スタッフHにはそんなところがある。

彼女は我々のリーダーだ。
元来、表に出たいタイプでも、率先して引っ張るタイプでもないが、代表からそのように指名されてこの方、名実共にこの事務所のリーダーとして他のスタッフを牽引している。
言うなれば、背中で語る昔気質の職人のような姿勢で、あるべき姿を率先して見せてくれる。
しかしTENcolorsの文化の一つには、そんな言わずもがなの佇まいに相反するように「言語化しないと伝わらない」というものがある。空気を読んで思いを汲んで欲しいなど、非効率だし誤解を生む可能性が極めて高いのだから、何事も言葉で伝え合うべきだという考えだ。
だから、月に一度の会議など、皆に伝える機会ではリーダーHは苦悩する。いつも見せている背中の意味を、ちゃんと伝わるように言語化して、ちゃんと伝わるように音声に変換して、たくさん神経を使って、発信する。
繰り返して言うが、元来好んで人前に立ちたいタイプではない。
だのに、彼女は「言いにくい事を言う」という重責を担っている。時折、いろんな立場のことを考え過ぎて、目に涙を滲ませながら。

他のスタッフは、彼女があらゆる事に心を砕いている事を知っている。だから、言葉を詰まらせながら言いにくい事を言うHの姿を見て自省する。そうやって彼女は言語化の外に気持ちをまとわせる。もちろん、計算でこんな事はできない、全ては彼女の真面目さ、責任感の成せる事である。

さて、しかし人というのはいろんなところでバランスを取る生き物だとつくづく思う。
そんなぬかりないHが、ふとした瞬間にとんでもないズレを披露する。
ある時は、マウスと間違えて、ハンドクリームのケースを必死に動かしていた…とか、またある時は、自席のPCに繋げたワイヤレスイヤホンをつけたまま別部屋の会議に集合してもしばらく気づかなかった…とか、また、ぶっ飛んだ読み間違いや聞き間違いも一度や二度ではなく、私はもう付き合いが長いからいい加減慣れたが、新しく入ってくるスタッフ達はその落差に心が追いついてないかもしれない…本人はどこ吹く風、つっこまれなければズレてることにさえ、たいてい気づいていないが。
しかし反面、冒頭で話したように、新しいこと、特に初めて出会ったパソコンの技や、ちょっと変わった言語表現などにはいち早く食いつく。目をキラキラさせて、どうやるの?どうやって使うの?と興味津々で、ひとしきり聞いた後、「今度使おう」と満足気な顔をする。好奇心のアンテナの動き方が、そんな風でちょっと面白い。聞けば休みのたびに、有名スイーツやパンの店などに、車で何時間もかけて行くらしい。新しいことに貪欲なのも、彼女を彼女たらしめる原動力の一つなのだろう。

今日は我らがリーダースタッフHのお話。
ただの手前味噌と言われてしまえば全くそれまでだが、どうか、我々の働く仲間を皆様にも知って欲しい。
TEN colorsの中身をちょっと覗いて欲しい。

また来月、次の誰かのお話。
どうぞお楽しみに。

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