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「わかりにくさ」の価値

何だかすっかりアイドルの話しかしていない気がしますが、欅坂46の6thシングル「ガラスを割れ!」のジャケットデザインが公開されました。
いや、これが素晴らしいんです。

これだけでご飯何杯もいけちゃう。

この「ガラスを割れ!」という曲は、「社会の犬になるな、自分を貫け」といったメッセージのこもった曲です(詳しくはこちら)。

以前「アイドルとデザイン」というノートでも書きましたが、欅坂46は曲の世界観をジャケットでもゴリゴリに表現するグループです。
今回も、アイドルの既成概念という名のガラスを粉々に割るジャケットを投げつけてきました。

上に貼った画像はType-Aの物で、写っているのは6作連続でセンターを務める平手友梨奈です。
これ、知っている人が見ないと欅坂46のCDだってわからないですよね。

・グループ名のロゴが読めない
・タイトルもよく見ないと見つからない
・そのタイトルもパッとは読めない

ザッと見てもこれだけ「わかりにくい所」があります。加えて、これがアイドルの作品だという所も踏まえると

・目が隠れていて顔がよく見えない
・顔に文字がかかっている
・ヤバそうな色の煙が何か怖い

この辺の話も浮上してきます。
他のタイプの物も見てみましょう。

・表情が怖い
・遠くてメンバーの顔がよく見えない
・やっぱり煙怖い

「アイドルとデザイン」でも触れましたが、欅坂46のジャケットは、あくまでも世界観が主役です。言い方はあまり良くないんですが、メンバーは楽曲の世界観を表現する為の一つの要素でしかありません。
随分と多様になった「アイドルの当たり前」をもぶち壊す事で「ガラスを割れ!」の世界観を表現しているんですね。

読めないロゴ

「ガラスを割れ!」のジャケットを美しく鋭い物にしているのは、写真は勿論ですが、ロゴの存在感でしょう。あそこに普通の文字が書かれているのと、あのロゴがあるのでは全く印象が違います。
ここ最近の欅坂のアートワークは、可読性があまり高くないロゴが多用されています。

エキセントリック」MV

月曜日の朝、スカートを切られた」MV

MVだけでなく、アルバムの盤面にも、荒ぶる文字のデザインが施されています。(興味が湧いた方は是非ご購入をオススメします。ガチの名盤です。)

欅坂に限らず、パッと見で読めない文字を使ったデザインは最近主流になりつつありますよね。「アイドルとデザイン」でも取り上げたRYUTistの「柳都芸妓」のジャケットのタイトルロゴデザインも、スッと読める物ではありません。

昔から読みにくい文字のデザインはありました。
でも、ひと昔前と比べると文字の崩し方が派手になっている気がします。読めなさのレベルがアップしているというか。

ここ数年で「コンテンツ」や「作品」と呼ばれる物の在り方が変わってきました。
SNS等の発達により「発信」という行為がとても身近になった今、ユーザーは「何かを受け取る」というよりも「何かの当事者になる経験」に価値を見出すようになっています。
ただわかりやすいデザインを受け取るのではなく、ユーザー自身が読み解く経験を作れるデザイン。受動的ではなく能動的に楽しめるデザインが、現代のユーザーに響いているのかもしれません。
読みにくいロゴデザインが増えている背景には、そういう事情があるのかな、と欅坂46のアートワークを見ていて思ったのでした。

「わかりにくさ」にこそ価値がある。
デザインという物の幅がグッと広がる、ワクワクする価値観です。でも、物を創る人間として、デザインとアートの境界はしっかり意識しなければいけないなぁとも思います。
何かと複雑な時代になりました。これからもっともっと複雑になっていくんでしょう、きっと。たくさんたくさんガラスを割って、良いデザインを創っていきたいですね。

#デザイン #欅坂46 #ガラスを割れ

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