ガラスを割れ!
欅坂46の6thシングル「ガラスを割れ!」のMVが公開されました。
以前書いたノート「アイドルとデザイン」でもお話ししましたが、欅坂46というグループは今放っておくのは非常に勿体無いグループです。ファンは皆、彼女たちについて何かと語りたくなるんです。そういう魅力があるんです。
そして、僕もその一人です。
欅坂46って?
知らないという方の為に基本情報を書いておきますね。知っている方は読み飛ばしちゃって下さい。
欅坂46は、秋元康プロデュースの女性アイドルグループです。AKB48の公式ライバルである乃木坂46の妹分として、2015年8月21日に結成され、翌2016年の4月6日、1stシングル「サイレントマジョリティー」でデビューしました。このデビューシングルで、CDの売り上げやMVの再生回数など、様々な記録を塗り替えて一躍トップアイドルとなり、センターの平手友梨奈(デビュー当時14歳)の圧倒的な表現力とパフォーマンスにも大変な注目が集まりました。そしてこの年、デビューしてから一年未満という恐ろしいスピードで紅白歌合戦にも出場しちゃったんです。
その後発表された
2nd「世界には愛しかない」
3rd「二人セゾン」
4th「不協和音」
5th「風に吹かれても」
も大ヒット。唯一無二の存在感を放つグループになりました。
欅坂46は、よく「笑わないアイドル」と形容されますが、割と笑うんですよ。「反抗」をテーマにした曲が多く、その曲のテーマをより深く表現する為にメンバーが「笑わない」事を選んだだけです。そういうグループにしようと思って作った訳ではない、と秋元さんも言っていました。曲によっては笑うんです。
孤高の天才「平手友梨奈」
グループの存在感の大きな大きな要因になっているのは、やはり平手友梨奈でしょう。今はまだ、彼女を軸に考えるしかないんです、このグループの事は。
僕がなぜ歴史も踏まえて過去作のMVのリンクを張ったかというと、とにかく観て感じて欲しいからです。
MVをよく観ていると判るんですが、平手はどんどん「孤高の存在」になっていくんですよ。デビュー当初は「主役」として一人だけピックアップされる場面が多かったんですが、どんどん作品を発表するにつれ、彼女の目つきが変わっていくんです。
活動を通して経験した事、感じた事、色々な物が彼女をどんどん蝕んでいったんじゃないでしょうか。僕らは想像する事しか出来ません。
彼女が自然とそうなっていったのか、演出が意図してそうしているのか、はたまたその両方なのかわかりませんが、彼女はどんどん「一人」ではなく「独り」になっていくんです。
その姿は痛ましく、もどかしい。でも、そこに人々はドラマを感じずにはいられないんです。残酷ですね。
秋元康プロデュースのアイドルグループは、MV制作に物凄く力を入れているので、MVに映っている物が、どんな形であれグループの「今」であると言っても過言ではありません。
早くガラス割れよ!
さあ、ここでようやく6th「ガラスを割れ!」です。まだの方は是非MVをご覧になってみて下さい。
センターは6作連続で平手友梨奈です。
曲調はハードで、「社会の犬になるな、己を貫け」といった強いメッセージを歌った曲ですね。
幕開けは、何だか疲れ切った平手のソロショットです。
その映像が映るテレビを見つめる平手。呆れたように、怒りをぶつけるように平手がそのテレビを蹴り壊して、曲が始まります。
前作「風に吹かれても」のラストで、平手は空へと飛んでいきました。
「風に吹かれても」のビデオは、全編を通して「平手の死」を描いていると僕は思ってまして、それは平手のセンターが終わる事の暗示なのではないかと思っていました。
結果として今回も平手がセンターになりましたが、やはり5thのビデオは、平手センターの終焉を描いていたのではないかと思います。
「終わったはずのセンターという呪縛から逃げ切れず、へたり込んだ平手」は5thのビデオの平手、そして「それを見つめ、壊す平手」は6thの平手という事なのかもしれません。
そこから始まる映像は、とことん平手を独りにしていきます。
平手の衣装だけ赤いですね。
ちなみにこのロングのMA-1、リバーシブルなのだそう。つまり、平手も衣装を裏返せば皆と同じ色になれるという事です。その逆も然り。
「ガラスに映る自分」を、対になって踊るダンサー達で表現しています。しかしそのダンサー達の中には赤い衣装を着た者は居ません。
ダンサーであり振付師であるTAKAHIRO氏によって緻密にデザインされた(あえてデザインと言います)ダンスは、この曲の攻撃性を表現しています。まるで戦っているようです。
ビデオが後半に差し掛かると、ほとんどのシーンで平手とそれ以外のメンバーが分離して描かれる事になります。
僕はこのビデオを観て、世間が抱いている「平手友梨奈だけが欅坂46の絶対的センターである」という印象を、平手含むメンバー全員が受け入れた事を表現しているのかな、と思いました。本人達がどうであれ。
個人的には、暫くは平手のセンターが続きそうな気がしています。どうでしょうね。
長々と書いてしまった…。
これはあくまでも僕の憶測の話です。本当にそれだけ。制作サイドが実際にこのビデオに込めた意図や思いはわかりません。
でも、こういう深読みが出来る余白はわざとデザインされているのではないかと思います。
「深読みをさせる」というのはとてつもない才能です。狙って出来る事ではありません。
その才能を上手く使って人々を熱狂させるというのも、また違ったとてつもない才能です。
僕は秋元康の手の中でころころ転がされているんだろうなぁ…でもそれが最高に楽しいんですよね。
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