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組織風土改革日報№.16_私ではない誰かの挑戦の為に

①前回のあらすじ

2021年4月から自律分散型組織の企画運営リーダーとしてアサインされた私(キタ)。
2022年1月に、製造部企画管理係という、新設された組織に配属され、これまでの『自律分散型組織事務局』に加え、『組織風土変革』『キャリア支援』という職務上の肩書が付与された。
そんな中、他拠点の女性係長から、コーチング講習についての問い合わせを頂く。その彼女は、私が繋がりを求めていたプロコーチであった。

~登場人物~
辰巳さん:他拠点の女性係長でありプロコーチ
小田さん:コーチング講習受講済みの主任(トライアルメンバー)
     ※友情出演


②私の挑戦を誰かの為に

北陸の冬は激情的。
”ぶりおこし”と呼ばれる、空中の氷雨を幾度となく切り裂く様な雷が、絶えず轟いている。

数年前、東北から出張に来られた方は、このぶりおこしを初体験し、
『なんだこれは?天変地異か!?』と、恐怖を感じたらしい。
そんな状況下で、ケロっとしている北陸人には、さらに恐怖を感じたそうだが(笑)

さておき、先般コーチングについて問い合わせ頂いた、辰巳さんとの打ち合わせに向け、私はこれまでのコーチングに纏わる情報を整理していた。

私が関わっているコーチング関連の業務は、2つ。
 ・私が主催するコーチング講習プログラムの運営
 ・本社主催の管理職向けコーチング研修のサポーター参加

まずは、私が主催するコーチング講習プログラム運営の実績を整理した。
2022年2月時点では、自拠点の係長/主任向けに3回、他拠点の組織風土変革チームに1回の、トータル約40名ほどに、コーチング講習を開催し、講師としての経験を積ませて頂いていた。

個人的には、中々好評の様に感じていた。
講座修了後のアンケートの満足度は、平均で5段階中4.5と、高評価を頂いており、コメントにも、ポジティブな反応を多く寄せてもらった。
・部下の育成に活かします。
・子育てで使えそう!
・自分のこれまでの行いを見返すきっかけになりました。

   etc…

改めて、受講者達のコメントと向き合う事で、コーチングを普及する事の意義を、尚更に強化された。

もう一つ、本社主催の管理職向けコーチング研修のサポーター参加については、前期コーチング講習プログラムを企画するにあたって、本田さんに相談した際に、『是非コッチの研修も手伝ってもらえないか?』というご提案を頂いたのがキッカケであった。

企業にとって、肩書上要職でもない私が、組織管理者しか参加できない研修に現れ、そして彼らをサポートする。
これが、自組織へのブランディングに、実に寄与したものである。
(実際に、自組織に向けて新たな企画を伝えると、まぁキタがやるって言うんだったら、やってもいいよ。そのアイデア。と反応頂ける状況には、なってきていた。)

この辺りの情報を、辰巳さんの勇気付けになればいいなぁと、願いを込めながら、パワーポイントにせっせ落とし込んだ。

これは、辰巳さんの挑戦を、サポートするという、私の挑戦。


③私ではない誰かの挑戦の為に

日はやや移って2月。この時期になると、ぶりおこしはやや落ち着きを見せる代わりに、空からは大量の雪が、静けさを携えて落っこちてくる。

いよいよ辰巳さんとのセッション当日を迎え、定刻に合わせ私はウェブに繋いだ。

2画面に分割された、その左側に、良く知ったマスクおじさんが映った。
あ、私や。

片や右側には、セミロングの前髪を、持ち上げて横に流しつつ、
しっかりとした眉に、キリッと猫の様な形の大きな目が、凛とした印象を伺わせる、マスクの女性が映し出された。

『はじめまして、辰巳と申します。今日は宜しくお願い致します。』

彼女の声は、無理のない高さを備えた穏やかさがあり、それでいてよく通った。

「はじめまして辰巳さん、キタと申します。ご連絡頂き有難う御座います。」

まずは接続の背景を伺う。
彼女自身が、コーチングスクール修了に至るまでの学習経験を、職場へアウトプットすべく、そのアイデアを模索。
ある本社主催の研修に参加した際に、講師として登壇されていた本田さんへ問いかけ、私を紹介されたとの事だった。

求めよさらば与えられん。叩けよさらば開かれん。

キリストが後世に残したアイデアは、神への祈りという文脈を除いても、現実的に恐らく正しいのだろう。
いつの時代も、”挑戦”とは新たなドアをノックするところからスタートするものだ。
本田さんに求め、私というドアを叩いた。そして彼女にとって今がある。
問題は、果たしてノックしたドアを開いたのが、私で良かったのか?ここだ。(笑)

もう少し深堀しつつ、暫くお話を聴かせて頂く。

彼女が今もたれている背景を、私は以下のように理解した。
・コーチングの技術は、職場管理者の支えになるのでは。
・コーチングについての理解をさらに深めたい。
・辰巳さんの所属する部にも、コーチングを普及したい。

この辰巳さんという女性は、特徴的な話し方をする人だった。

論立てて、端的な言葉選ぶ。抜群にうまい。知性的だ。
他方、こうした方が良い、だけどそうならない、というギャップは、私に向けて、独り言のように、口に出しつつ整理する様な話し方をする。
そして、私の問いに対しては、内省する時間をたっぷり取る。
この辺りは情動的。
総じて、独特な魅力に置き換わって、彼女を纏う様に、醸し出ていた。

一通り話を聴きながら、彼女の主訴を、私なりに捉えた。
どうやったら、彼女の職場にコーチングを普及出来るか。
ここにあるようだった。

「もし宜しければ、こちらでの活動実績をお伝えしましょうか?」

是非に。という事で、今日に向けて整理した私の活動実績を、お伝えした。

途中口を挟む事もなく、じっくりと私の話に傾聴する姿勢は、私の主訴を捉るべく、穏やかに聴き切る、熟練のカウンセラーの様であった。

15分ほど話をしただろうか。
止めどなく自分の経験を語るクライエントの話を聴き切った彼女は一言。

『キタさんのコーチング講習は、私の所でもやってもらえるのでしょうか?』

「はい、他拠点向けにも実績ありますし、ニーズがある限り、どこでもやらせて頂きます。そういえば、そちらにコーチング講習のトライアルメンバーが一人、先日異動されたはずです。」

『えぇ!誰ですか?』

「小田さんです。彼もコーチングに意味を感じて、普及を目指していたはずです。」

『え?小田さん?あの小田さん?』
実は辰巳さんどうやら知り合いだったようで、
『そうなんだ、ちょっと聴いてみます。』
と嬉しそうな顔をされた。

終了時刻が近づき、彼女はこう締めくくった。

『今日は有難う御座いました。これから小田さんとお話しながら、コーチング講習の開催準備をします。今後とも宜しくお願いします。』

そうして、辰巳さんとのセッションを終えた。

結論から言うと、このコーチング講習開催は、辰巳さんと小田さんの行動力によって、なんと翌3月に実現し、結果的に辰巳さん自身が、コーチングに関する社内活動を、スタートするに至ったのである。

彼女が求め、叩いたドアを開いた者として、何とかその役目を果たせた気がし、どことなく私は安堵した。

自分でやり遂げるよりも、私ではない誰かの挑戦をサポート出来た事への、充分な満足感。
私の価値観である、人の笑顔を見る事に動機づけられた活動と感情が、そこにはあった。


外は、あれだけ力強く降り注いでいた雪も、
『今年はこんな感じで宜しいでしょうか。えぇえぇ。それではこの辺で失礼おば。』と、しおらしく別れを告げる。

代わりに勢いよく登場した花粉が
『こんちはーーー!!鼻掃除しに来ましたーーー!!』と、その勢いに毛嫌いする人達の反応を、お構いなしに、鼻腔に張り付き、過激に暴れまわっていた。

その不快極まりない花粉の攻撃に耐えつつ、私は3月末、今期最後の挑戦に臨んでいた。

自律分散型組織ウェビナーの開催。
コーチングとは別の講師活動が、いよいよスタートするのである。


日報№.17へ続く。

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