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組織風土改革日報№.3_性悪説じゃん。俺。

①前回のあらすじ


某電子部品メーカーで、自律分散型組織の企画リーダーを担当する事になった私(キタ/北)。
異動先は予想に反して、設備や機械を扱う生産技術課。私にアサインした部長は、他事業所へ異動。チームメンバー4人で、揃いも揃って全員組織論はド素人のおじさん。
予想外の連続だが、一体どうなってしまうのか。

②ティール組織との出会い

チームメンバーとの自己紹介を終え、何となくフワフワした気持ちで、新しく用意されたデスクに着陸した私。
椅子のリクライニングをフリーにし、最近読み終えた1冊の本を手に、ギシッと背もたれに体を預けた。今日はこのまま内省に時間を使ってみよう。

『ティール組織』

フレデリック・ラルー著 ティール組織

約600ページの中に込められた、人類が辿った組織変遷と、現代社会に適合するであろうアイデアが、経営コンサル観点でまとめられた、実に学びの深い書籍だったと言える。

パラパラと、お気に入りのページを読み直す。

組織化された人の大半の認知によって、パラダイムは定着する。
(パラダイム:その時代の支配的な規範となる「価値観」。つまり物の見方や捉え方)

そして、歴史上の大きな事件や、広い範囲の社会潮流、人々の違和感や反骨精神によって、パラダイムシフトが起こる。

そうしてまた時間をかけて、シフト後のパラダイムが定着化する。
というサイクルは、かなりしっくり来た。

このパラダイムシフトによって成立した5つの組織モデルについても、なかなか上手く纏められていて、納得。

①→②→③→④→⑤の順に進化。⑤は1970年代頃から生まれた概念との事。

現代社会に適するとされる、このティール組織こそが、自律分散型組織形態としているようだ。
従業員1人ひとりが自ら考えて動き、現場主体のフラットな組織を目指す。その根幹には”性善説”に則って、従業員自らが社会性を磨いている所が特徴だ。

そして、このティール組織には、3つの価値観がある。
・エボリューショナリーパーパス(存在目的)
  →この組織はナゼ存在しているのかを認識する。
・セルフマネジメント(自主経営)
  →従業員が意思決定権を発揮する。
・ホールネス(全体性)
  →個人は組織上の機能に応じた能力だけでなく、自分にある全ての能力を活かす。

知れば知るほど、魅力的な組織論であると同時に、製造現場の到達可能性を疑ってしまいたくなる自分も居た。

自社がこの形になるのが先か、潰れるのが先か。
そんな元も子もない考えが、グルグル巡っていた。

③しっかり性悪説じゃん。俺。

ティール組織の本を読みつつ、ふと自分がこれまで見知ってきた製造現場を、歴史と共に内省してみる。

18~19世紀に起こったイギリスの産業革命は、大量生産という概念を見事に一般化させ、使役する側とされる側の立場を、くっきりと分別した。

定められた成果を出すことに価値を貫いた、徹底した統制下では、従業員はもはや交換可能な歯車だ。彼らの人権は、生命を繋ぐだけの糧を得る為に、一定おざなりになった。

時代背景的には、得てして妙なバランスだったのだろう。
いや、絶妙なアンバランスといった方がしっくりくるか。

21世紀の現代では、そんな呪縛から解き放たれ、完全にフリーとなった、性善説に則ったベンチャー企業も沢山あり、そんな彼らをティールと呼ぶのかもしれない。

けれども、なかなかどうして、大量生産を行う現場は、アンバーやオレンジに分類され、今だにさりげなく軽視され続けている人権があると感じる。

『雇用主と従業員の関係は対等』という概念を、組織内に存在する上下関係が打ち消すという矛盾。

表現の自由は、主体性という言葉に置き換わり、組織や上司の必要とする分だけ引き出す事にすり替わっている。

やりがいの搾取を恐れた従業員自らが、自分の身を手堅く守る為に、殻に閉じこもって職業人生を送る。

何となく自分の中にあった製造現場への気持ち悪さが、一つ一つ言語化されていった。まさに性悪説に則った社会性である。

と同時に、私自身が酷く落ち込んだのは、

それらが、社会人となって20余年、ただの違和感で留まり、表質化する事なく、したり顔で私自身の中に、どっかりと居座っている事への気付きだった。

性悪説に染まりきってんじゃん。俺。

思わず声に出していた。

中々やめられない煙草の煙を、デトックスのつもりで吐き出すような、ヘンテコな感覚だった。

まずはこの気付きをアウトプットするところからスタートする事にしよう。
そう決めて、パワーポイントにイメージを落とし込み始めた。

この頃は、まさにティール組織の著書に関わる、重要な方との出会いがある事を、私は知る由もなかった。(これはもう少し後の話。)

日報④に続く

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