見出し画像

病院受診や介護保険の利用で親に無理強いしていませんか?

社会保険労務士の山地です。

先日、知り合いの女性からこんな話を聞きました。

近所に住んでいる実母を訪ねるたびに身体の不調を訴えられます。正確にはわかりませんが、関節リウマチのようです。医療機関を受診して医師から薬を処方され、様子を見てそれで良くならなければきちんと治療しましょうと言われても積極的に治療を受けようとしないそうです。

この痛みさえなければと、ある意味自分を“だましだまし”過ごしていらっしゃるようで痛みを自分に訴えられてもどうすることもできません。彼女にしてみればそんなに痛いならちゃんと治療すればいいのにと思うわけです。

どうしたものかと、こぼしながらため息をつく彼女に質問してみました。

「お母さんは何をするのが一番好きですか?」

「う~ん・・・ボケ防止にジグソーパズルをやっているみたいだけど」

「それって、ボケ防止のためにやっているのであって、お母さんが進んでやりたいと思っていることではないですよね? お母さんが心から楽しいと思えること、時間が経つのも忘れて夢中になれることはありますか?」

「・・・。あ~、わからないなあ」

「じゃあ、お母さんにぜひ聞いてみてください」

お母さんは何をしているときが一番楽しいのか?
毎日どんなふうに暮らせたらハッピーなのか?

娘や孫と食事に行ったり、お友達とおしゃべりしたり、何か趣味をお持ちかもしれません。お母さんにもきっと理想とする暮らしがあるはずです。でも、身体の不調のためにそれが実現できていません。現実と理想との間に大きなギャップがあるから苦しいのだと思います。

そのギャップを埋めるためにはどうすればいいのかをお母さんと一緒に考えてみてはどうかと伝えました。


これに似た話で要介護状態の親が介護保険サービスを使いたがらないというのがあります。かつて病院の医療福祉相談室で勤務していたときに、何度か私も経験しました。

介護する子ども世代は50代中心に多く、会社では管理職や中核人材として活躍している人たちです。仕事も忙しいし自分の家庭のこともあります。介護保険サービスは仕事と介護を両立させるためのいわば必須アイテム。使えばいいとわかっていても肝心の親が使いたがらない。

このとき注意しないといけないのは、自分の事情を優先してデイサービスに行かせようとしたりヘルパーさんを頼んだり、ろくに本人の意向も確認せずに強引に契約してしまうことです。

今までできていたことができなくなる。これは受け容れがたいことなのです。

いうことを聞かなくなった自分の身体に腹立たしさを感じたり、とうとう介護保険のお世話にならなければいけなくなったかと思うと情けなく感じたり、老いることへの恨めしい気持ちだったり、複雑な感情があるのです。

この場合もやはりどんな暮らしがしたいのか、どんなふうになればイキイキと充実した毎日を送れるのか、本人の理想とする暮らしを実現するためには何をすればいいのか一緒に考えましょう。

最初はとりあえず自力でトイレに行きたいということかもしれません。それが叶えば、ウォーキングを再開したい、友達と食事や買い物に行きたい、またゴルフができるようになりたいなど、いろいろあるでしょう。

介護保険サービスはご本人にとって、理想の暮らしを実現するために利用するものです。

あくまでも「手段」であって、サービスを利用することが「目的」ではありません。

高齢期は人生の集大成の時期です。生活の質を高めるためにサポートしてあげていただきたいと思います。(*^_^*)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?