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~中小企業の人事ご担当の皆さんへ~ 10月1日出生時育児休業制度がスタート。対応準備はお済みですか?

お久しぶりです。社会保険労務士の山地です。2か月ぶりの投稿です。
今日は施行が目前に迫った育児介護休業法の「出生時育児休業制度」について、労務管理の観点からお話します。

少子高齢化が加速する日本。令和3年人口動態統計の概要によると、出生数は81万1622人で、前年の84万835人より2万9213人減少し、調査開始以来最少になりました。

仕事と家庭の両立をめぐる現状として、約5割の女性が出産・育児を機に退職しておりその理由のトップは仕事と育児の両立の難しさと回答しています。((株)日本能率協会総合研究所調査)

一方男性が育児休業を取得しなかった理由は「収入を減らしたくなかったから」41.4%に次いで、「職場が育児休業制度を取得しづらい雰囲気だったから、または会社や上司、職場の育児休業取得への理解がなかったから」が27.3%になっています。(資料出所:同上)

このような背景から出産・育児による離職を防ぎ、男女ともに仕事と育児を両立できるように、出生時育児休業制度(以下、産後パパ育休制度)が創設されました。

産後パパ育休の特徴は
1.子どもが1歳になるまでの通常の育休とは別に取得できます
2.通常の育休では原則就業不可ですが、労使協定※1を締結している場合に限り就業可能です。

制度の概要
・対象期間 子の出生後8週間以内(女性の産後休業に相当する期間)
・取得可能日数 4週間まで。2回まで分割して取得することも可能。
この場合は初めにまとめて申し出ることが必要。
・申し出の期限 原則、休業に入る2週間前まで
(雇用環境の整備などについて、法を上回る取り組みを労使協定※2で定めている場合は1か月前まで)


労務管理において、検討すべき事項は2つの労使協定です。

※1.産後パパ育休期間中も就業可能とする労使協定
これは中小企業さんでも締結されるとよいと思います。収入を減らしたくないと考える労働者と休業期間中にたとえ1日でも2日でも、短時間であっても働いてもらえるならありがたい企業にとって合意できる内容と考えられます。

但し、協定を締結したからと言って企業側から休業期間中の就業日数や就業時間数を指定することはできませんので注意が必要です。あくまでも労働者本人からの申し出により、労働者が申し出た条件の範囲内で日時を提示し、労働者が同意すれば可能になります。


※2.産後パパ育休の申し出を2週間前から1か月前とする労使協定
こちらに関しては必ずしも締結するのがよいとは言えません。この協定は企業ができれば通常の育休同様に1か月前に申し出てもらいたいわけですが、労働者のほうは早く申し出なければならないため合意が難しいかもしれません。

企業は1か月前に申し出てもらうために、雇用環境の整備などについて法を上回る取り組みの実施を約束しなければいけなくなります。

法を上回る取り組みの実施とは、
①次に掲げるものから、2以上を実施すること
・労働者に育児休業の研修の実施
・育児休業に関する相談窓口の設置
・育児休業取得に関する社内事例の収集と提供
・労働者に育児休業制度及や育児休業の取得促進に関する方針の周知
・育児休業の申出をした労働者の育児休業の取得が円滑に行われるようにするための業務配分や人員配置に係る必要な措置
②育児休業の取得に関する定量的な目標を設定し、育児休業の取得促進に関する方針を周知すること
③育児休業を申し出た労働者の意向を確認し、その意向を把握するための取組を行うこと

いかがでしょうか? 結構やることがありますね。

①はよいとしても、②の定量的な目標とは育児休業の取得率や男性の育休取得に関する数値目標を設定しなければなりません。
③は妊娠・出産の申し出をした労働者に育休取得の意向を確認することが今年4月1日から義務付けられていますが、ここではそれを上回ることをしなければいけません。具体的には意向確認した後本人から回答がない場合、最低でも1回は再確認することが求められます。

また、労働者にとっても特に②は配慮が必要かもしれません。

中小企業でも毎年新卒者を採用できるような所は別として、地方の特に従業員規模が小さい事業所は従業員の高齢化が進み、若い人は数えるくらいしかいないところもあります。

目標はお飾りではなく当然達成するためのものです。未婚者や不妊治療中の人もいるかもしれませんから、目標設定が彼らにとってはプレッシャーになるかもしれません。

労使でよく話し合い、企業の実情に応じた取り組みを進めていただきたいと思います。(*^_^*)

参考URL: 000869228.pdf (mhlw.go.jp)  改正育児・介護休業法 対応はお済みですか?


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