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「高齢者は応募できない? 困った求人票」

社会保険労務士の山地です。

前回は人材紹介会社を利用するなら、紹介されて成約した(採用した)場合は紹介手数料の支払い義務が生じるため、利用するなら覚悟をもって利用しましょうというお話でした。

今日はちょっと困った求人票についてお話したいと思います。

福祉人材の確保と定着支援事業にも従事している私ですが、事業所向けだけではなくキャリアコンサルタントとして、求職者の就職支援も同時に行っています。

ある求職者から求人票を見て応募しようと問い合わせの電話をしたら、年齢を理由に断られたという話を聴きました。実はその方は73歳になるのですが、就労意欲がとても高い方でパートタイマーとして週に3日程度働きたいと考えていました。

求人票には「年齢不問」と書いてあったから応募できると思ったと言います。求職者にしてみれば当然のことでしょう。

雇用対策法(現.労働施策総合推進法)が改正され、労働者の募集時に年齢制限が禁止されたのは平成19年のことです。あれから15年。私の中では「年齢不問」は当たり前のことになっていました。

事業所は原則年齢不問で募集しなければなりません。昨今の人手不足を反映して、高齢であっても、積極的に採用するというところは増えています。

その一方で年齢不問にしなければいけないからそう書いているだけで、実際には高齢者はお断りしたいと考えている事業所もあります。

では、どうすればよいのでしょうか?

考えられる方法としては2つあります。

ひとつはご存知の方も多いと思いますが、パートタイマーであっても定年を定めて求人票に定年の年齢を上限として、その年齢に満たない人を契約期間の定めなしで募集することです。(例外事由1号)

正社員の募集だとこの例外事由1号で募集している求人は多数ありますが、パートタイマーになると激減します。

求職者に期待を持たせておいて断るくらいなら、パートタイマーにも定年を設定して募集したほうがお互いにストレスがないと考えます。

ちなみに高年齢者雇用安定法により、現在60歳を下回る定年は認められておらず、65歳までは雇用確保措置が義務付けられ、70歳までの就業確保措置は努力義務になっています。

もうひとつの方法は求人票に求める能力を余すところなく、しっかり記載することです。肝心なことを書かずにただ年齢不問としか書かないから、ミスマッチが起きるのです。

高齢者からの応募を断りたい理由としてよく聞くのは体力が必要とか、パソコン操作や夜勤があるなどです。

体力が必要であれば、

一日何人の利用者の入浴介助を担当しなければならないのか?

利用者の要介護度は平均いくつで、常時何人くらい利用しているのか?

パソコンは文字入力だけできればいいのか?

表やグラフの作成も必要か?

クラウドツールの操作も必要か?

夜勤は何時間拘束で実働何時間か?

独り立ちするまでにどのくらいサポートがあるのか?

月に何回くらいあるのか?

(業種が違っても夜勤の経験のある人もいます)

何も高齢者に限ったことではありませんが、一般的に世間の求人票は求職者が求めている情報が足りなさすぎます。自分に応募する資格があるのかどうか、判断できません。

若い人と違って高齢者はかなり個人差があります。年齢だけでは判断できません。履歴書の内容や人物本位の面接でも、求めている能力が確認できないなら実技試験をするのもよいでしょう。

可能性を頭ごなしに否定せず、より良い人材と巡り合うチャンスを掴んでほしいと思います。

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