「短時間正社員制度の導入(4)処遇〜人事評価と教育訓練」
社会保険労務士の山地です。
前回は短時間正社員として働く人にとって関心が高く、また事業所にとっても重要な賃金ついてご説明しました。
今回は、人事評価と教育訓練についてご説明します。
人事評価のポイントは次の3つです。
1.目標の「量」は労働時間に合わせて減らし「質」は変えない
これが原則です。但し短時間正社員になったことで仕事の内容が変わる場合は、同じ仕事のフルタイム正社員の目標設定を参考にしましょう。目標を設定するときは管理職が短時間正社員と面談し、育児や介護など本人の状況やキャリア形成に対する考えを考慮して互いに納得できるようによく話し合って決めましょう。
2.フルタイム正社員と同じ評価基準・要素を用いて評価する
評価は目標に対する達成状況に基づいて行います。能力や行動などに対する評価の場合は、フルタイム正社員と同じ評価項目・基準で評価しましょう。
3.昇進・昇格は、フルタイム正社員と同様に決定する
短時間正社員であることが理由で昇進・昇格に遅れが出ないように、公正に評価しましょう。
勤続年数を「昇進・昇格」の基準にしている場合は、短時間正社員の期間を「そのまま勤続年数として通算する」か、または「労働時間に応じて減らす」か、を検討してください。
制度導入後は、短時間正社員が達成困難な目標を設定されていないか、短時間正社員であることを理由に一律に低い評価をされていないかなど、人事担当者が確認しましょう。必要に応じて評価者(管理職)に対して意識啓発や評価者研修なども実施しましょう。
教育訓練のポイントは次の2つです。
1.フルタイム正社員と同等の教育訓練機会を与える
OJTの場合は労働時間が短いためにOJTを受ける機会が限られます。積極的に責任のある仕事を担当させる機会を与えるなどの工夫が必要になります。
2.研修の実施は、短時間正社員の勤務時間内に行うよう配慮する
Off-JTの場合もフルタイム正社員とできるだけ同等の教育訓練の機会を与えるために、時間設定等を工夫しましょう。
例えば、
・任意で受講する時間外の研修なら子ども連れでの受講を許可する
・自宅からオンラインでの受講を許可する
・やむを得ず受講できない場合は、研修終了後に資料を配付する
・受講した社員が後日、伝達研修をする
などが考えられます。
OJTやOff-JT以外にも、自己啓発も人材育成に有効です。
雇用保険の教育訓練給付金は労働者のスキルアップを支援するため、厚生労働大臣の指定を受けた教育訓練(講座)を受講・修了した人に、受講費用の一部が支給される制度です。
教育訓練講座はレベルに応じて3種類あります。介護福祉士、社会福祉士、看護師、保育士などの資格取得講座であれば、最大で受講費用の70%が支給されます。
短時間正社員の自己啓発を奨励し、支援しましょう。
次回は、(5)将来的なフルタイム正社員への復帰・転換について検討する、 (6)短時間正社員制度を導入し、周知する について、ご説明します。
出典:これで解決!人材確保と定着 「短時間正社員制度」導入・運用支援マニュアル(看護師・介護士・保育士) 厚生労働省
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