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雇用調整助成金特例措置について厚生労働省より発表されました(令和2年4月10日)


新型コロナウイルス感染症の影響により、経済的な理由により休業をされる事業主が、労働者に対して、休業手当を支給した場合、雇用調整助成金を受給することができます。

休業手当とは

経済的理由等により、事業活動を縮小した事業主が、労働者を休ませる(休業させる)場合、休業手当を支払うことが必要です。

休業手当は労働基準法第26条に次のように定められています。

「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。 」

お客様が来ない、材料の仕入れができない、という場合で、出勤してもらっても仕事がないというような状況では、休業手当を労働者に対して支払うことが必要となります。

そして、休業手当については、【平均賃金の100分の60以上】の支払が必要となります。

平均賃金とは

平均賃金は、同じく労働基準法第12条で次のように定められています。

労働基準法第12条

「この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前3箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。ただし、その金額は、次の各号の一によつて計算した金額を下つてはならない。

一 賃金が、労働した日若しくは時間によつて算定され、又は出来高払制その他の請負制によつて定められた場合においては、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の百分の六十
二 賃金の一部が、月、週その他一定の期間によつて定められた場合においては、その部分の総額をその期間の総日数で除した金額と前号の金額の合算額


平均賃金は、”算定すべき事由の発生た日以前3か月間”で算出します。賃金締め日がある場合には、直近の給与の締め日以前3か月間で算出します。

例として、末締め翌月10日給与支給の会社で令和2年4月10日に休業し、休業手当を支払う場合には、

1月の給与(21日出勤):月給200,000円・役職手当30,000円・残業代20,000円

2月の給与(20日出勤):月給200,000円・役職手当30,000円・残業代10,000円

3月の給与(22日出勤):月給200,000円・役職手当30,000円・残業代30,000円

平均賃金

この労働者の平均賃金は、3月の総額:750,000円をこの間の暦日数91日(1月:31日・2月:29日・3月:31日)で割りますので、8,242円となります。

平均賃金には最低保障額が定められています。日若しくは時間によって算定されているような場合は次のような計算式になります。この例では残業代が該当します。時間給や日給制の場合はこちらの計算式となります。

3か月の残業代60,000円÷3か月の労働日数63日=953円となります。

これに100分の60を乗じますので、①572円となります。

これに基本給と役職手当の総額:②690,000円÷91日=7,583円となります。

①+②=8,155円となります。この8,242円と8,155円のいずれか高い方が1日当たりの平均賃金となりますので、この例では8,242円となります。

休業手当は、この8,242円の100分の60=4,946円以上の額を支払う必要があります。

雇用調整助成金について

雇用調整助成金を受給しようとする場合、通常であれば先に休業計画届を所轄のハローワーク経由で各都道府県労働局へ提出します。

この度の新型コロナウイルスの影響による特例措置においては、6月30日までの間の休業については、事後の提出が認められています。

また休業計画においては、「休業協定書」を添付します。

労使間で、休業に関して、休業期間、対象者、休業手当の支払方法や計算方法等を取り決めることとなります。

休業協定書_page-0001

就業規則を作成されている会社であれば、通常、休業手当について規定されており、平均賃金の100分の60を支払うなど、規定されていると思います。

休業協定書を労働者の過半数を代表する者と締結することで、就業規則よりも効力の強い、休業協定の効力が発生します。

この休業協定書で定めた率が、雇用調整助成金の1日当たりの算定の率として用いられます。

実際に雇用調整助成金はいくらくらいになるか
休業手当を支払った事業主に対して、雇用調整助成金は支給されます。

社員一人一人の平均賃金を計算し、その100分の60以上を支払えば、労働基準法では問題はありません。

雇用調整助成金の支給率は、中小企業では、通常2/3とされています。

この度の新型コロナウイルスの特例では、中小企業では、4/5とされ、解雇等がない場合には、9/10とされています。

では先ほどの平均賃金(60%)の4,946円の社員への休業手当がそのまま、100分60で協定を結ばれた場合、実際に支払う休業手当は4,946円となります。

その4,946円の4/5若しくは9/10が雇用調整助成金の1日当たりの支給金額となるかといえば、計算式が異なってきます。

雇用調整助成金の申請に当たっては、前年度の雇用保険被保険者に支払った賃金総額を用います。

毎年、労働保険の申告で用いる申告書から計算します。

労働保険料申告書

④の賃金総額を⑧の雇用保険の被保険者数で割り戻します。それを年間の所定労働日数で割り戻し、1日当たりの平均の賃金相当額を出します。

例として、賃金総額が2千万円・被保険者数5人・年間の所定労働日数が260日とすると

20,000,000円÷5人÷260日=15,384円となります。

この15,384円に労使協定で定めた率が60%とすると、9,230円となります。

この金額の4/5若しくは9/10が支給されます。

4/5=7,384円となり、9/10で8,307円となります。

助成金の上限額は8,330円となっています。これを超える場合には、8,330円となります。

ポイント
①平均賃金で支払う場合には、先ほどの年間所定労働日数ではなく、暦日数で割り戻すことになります。

つまり、先の計算式の例では、

20,000,000円÷5人÷365日=10,958円が1人1日当たりの平均額となります。

休業協定書の例にあるように、基本給等を所定労働日数を用いて協定したほうが、1日当たりの額が高く算出されることになります。

②平均賃金の6割以上を確認すること

労働基準法で定められる休業手当の最低限、平均賃金の6割より下回っている場合には、助成金が支給されませんので、確認をしておくことが必要です。

平均賃金の算出は、支払われた賃金総額で行われますので、そこには時間外手当等も含まれてきます。基本給の6割等で協定をしてしまうと、平均賃金の6割を割ってしまうケースがありますので、注意が必要です。

まとめ

この度の新型コロナウイルスにより、世界中で影響が広まっています。少しでも会社の存続、雇用の維持や労働者の方の生活を守っていくため、助成金等を活用していただければと思います。

手続き等が分からない場合は、社会保険労務士など専門家に依頼をしてください。

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