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Twitter社のレイオフからみる日本の「解雇」が簡単にできない理由

イーロン・マスク氏がTwitter社を買収し、直後に従業員の半数近くが「レイオフ」されTwitterJP社員も漏れなく「レイオフ」されたとのではないかと報道されています。
「切捨御免」が罷り通った江戸時代とは変わり現代日本では通じなくっています。労働者を守る「労働法」が制定され「解雇」は簡単にできるものではありません。日本の労働法を解説するとともに、現在の方向性をご提案します。

解雇が容易ではない日本

Twitter社のレイオフは、業績不振による人員整理といわれています。それは日本における「整理解雇」にあたります。

もし同じように国内企業が「急遽整理解雇」し、従業員から訴訟された場合、解雇が正当かどうかの判断の要件をみていきます。

  1. 客観的に合理的な理由あり、社会通念上相当であると認められること(労働契約法第 16 条)

  2. 労働基準法、労働組合法などに定められている解雇禁止事由に該当しないこと

整理解雇の4要件(要素)

さらに日本の労働法では、経営上の都合での解雇(整理解雇)を厳しく制限しています。整理解雇に正当性があるかどうかは主に以下の4要件によって判断されます。

①人員削減の必要性
 どの程度整理解雇による人員削減の必要性に迫られているか?
②解雇回避努力義務
 整理解雇を行う前に、新規採用の停止、希望退職者の募集等の解雇に代替的な手段をとったか? 
③被解雇者選定の妥当性・基準の公平性
 対象者の選び方に合理性があるか?
④労働者への説明義務、労働組合との協議
 説明や話し合いにおいて納得を得られるような努力をしたか?

以上の要件を踏まえると、本件では解雇に至るまでの企業努力がみられず裁判に勝つ余地がありません。解雇は、会社がいつでも自由に行えるというものではなく、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、労働者をやめさせることはできません。解雇は被解雇者本人及びその家族の生活を破綻させかねない重大な事態です。そのため裁判で整理解雇が有効とされるケースはかなり少ないです。

Twitterjp社のレイオフとは

日本における上記の解雇規制を踏まえるとTwitterjp社の「レイオフ」は実際には解雇でなく「退職勧奨:退職を会社から提案して合意を得て退職」である可能性も考えられます。
あるいは今回、世界中のスタッフに向けて一斉にレイオフの通知がなされたとの報道が事実であれば、ツイッター社についてアメリカ本社に強い人事権がありアメリカの法律(「差別」と「報復」という理由以外において使用者は自由に解雇できる)が適用されたものかと思われます。

まとめ

コロナ禍によりかなり浸透した「テレワーク」、終身雇用から転職・副業を認める動きなど昨今の人事労務環境もかなり変化してきています。Twitter社のレイオフまでの一連の動きは、労働者保護のための強い解雇規制よりも「雇用の流動性」を高めるために解雇規制を緩めたほうがよいという声が大きくなってくることも考えられます。
現時点においては、突然の「解雇」は難しいため従業員に納得してもらったうえでの「合意退職」を提案していますので、業績不振による人員削減の必要性を感じたり、問題社員によるトラブルが続出し社内への悪影響を感じた時などは、社会保険労務士にご相談ください。