見出し画像

(独学)社会保険労務士試験の合格体験記

1 はじめに

はじめまして。神庭社会保険労務士事務所の神庭豊(カンバユタカ)と申します。
2023年3月1日に開業登録をした新米の社会保険労務士です。以前は勤務社会保険労務士として登録してはいましたが、開業登録は初めてです。
コネもツテもない私がこれからどうしていくのか・・・全くもって想像がつきませんが、先ずは自分が目指している姿の実現に向けて試行錯誤で邁進していきたいと思っています。
(また別の機会でご紹介できれば・・・幸いです。)

話は変わりますが・・・

「社会保険労務士試験は独学で合格できますか?」

といったご相談を受けることがよくあります。
(社会保険労務士という資格、仕事に関心を持ってもらえる事はとても嬉しいことです。)
インターネットでも社会保険労務士試験をいかにして合格するか・・・という記事が多掲載されいることから、一定のニーズがあるように見受けますので、自分の取り組みを振り返る意味も込めて私の合格体験記をご紹介したいと思います。


2 結論から言うと


社会保険労務士試験は独学で合格可能です!

私は独学で社会保険労務士試験に合格しました。
とは言え、受験する方のスペック次第・・・に感じる方がいるかもしれませんので、私の受験時の情報をまず共有します。

  • 勉強開始時の年齢は28歳

  • 専門学校の講師として働いていた(人事未経験)

  • 地方の公立大学を卒業しています(秀才ではない)

上記の情報をご覧いただければ私が特別な人間ではないことはお分かりいただけると思います。むしろ、人事部や総務部での就労経験もありませんでしたので、知識0からのスタートという厳しい状況だったかもしれません。
しかし、もちろん運もありますが、私は独学で社会保険労務士試験(第43回・2011年度)を無事一発合格することができました。

独学で挑戦することに不安を感じている方がいましたら、私の記事をご覧になって励みにしていただけますと幸いです。また、これから社会保険労務士試験の学習を開始しようと考えている方がいましたら、是非ご参考にしてください。


3 学習方法の整理(スクールと独学)

まず資格試験の学習方法は大きく分けると、
(1)スクールに通う 
(2)独学 
の2種類があります。

さらに独学を詳細に分けると
(1)通信教育 
(2)完全独学 
の2種類があります。

私は完全独学でした。
本屋で社会保険労務士の教本や問題集、厚生労働省が案内している「厚生労働白書」や「労働経済白書」を利用して学習していました。
完全な独学ではあったのですが・・・
本当はスクールに通いたかったです。

スクールには以下のようなメリットがあります。

  • 講師が学習スケジュールを立ててくれるので計画的な学習ができる

  • 経験豊富な講師による分かりやすい講義で理解が進む

  • 不明点の質問が可能

  • 教材が豊富

  • 同じ目標を持った仲間たちと切磋琢磨して学習できる

これらのメリットを求めてスクールに通いたかったのですが、私が当時住んでいた地域にはスクールが無かったのです・・・
(また、当時はお金の余裕が無かったこともありました)

社会保険労務士試験の学習を紹介しているホームページで「2年目で合格しました!」といった記事を目にするたび、大変不安になったことを思えています。
自分のように人事労務が未経験で全く知識のない人間はいったい何年挑戦しなければならないのか・・・と学習する前から尻込みしていました。
しかし、独学には独学のメリットがある・・・と気持ちを切り替えて勉強を開始しました。

(独学のメリット)

  • 自分のペースで学習ができる

  • コストがかからない

特に自分のペースで学習できる点は個人的に大きなメリットでした。スクールの授業は全生徒に向けての授業なので、自分にとっては必要のない(例えば既に理解している単元)授業を受けることがあります。仕事をしながら勉強していた私にとっては、限られた時間内で学習しなければならない・・・という思いがあったので、結果的には全ての学習時間を自分のために使える独学の方が個人的に合っていました。

スクールと独学、それぞれの特徴を整理して、ご自身にあった学習方法をご選択することをオススメします。


4 合格までの道のり

(1)利用した教材 ※2010年頃

  • ユーキャンのテキスト(教科書)

  • ユーキャンの一問一答問題集

  • TACのテキスト(教科書)

  • 過去問題集(10年分)

  • 厚生労働白書

  • 労働経済白書

  • 労働裁判の判例集(図書館で借りました)

  • 法改正情報(インターネット)

教材の数としては少ないと思います。教材のコストは合計しても20,000円に至りませんでした。

(2)学習時間

  • 学習期間 2010年10月〜2011年08月(約10ヶ月)

  • 学習時間 1,500時間

平日は毎日4時間(朝出社前に1時間、終業後21時〜24時くらいまで3時間)、土日はそれぞれ10時間学習していました。
学習を休むと張り詰めたものが切れてしまいそうだったので、1日も休みませんでした。(試験前日だけは何もしなかったです)

(3)学習スケジュール

①基礎力アップ期間(10月〜1月ごろ)
先ずはユーキャンのテキストを熟読していました。
自分の中で「このテキストの内容を全て理解すれば試験に合格できるのではないか」という考えを持っていました。
記憶ではテキストは全部で1,000頁くらいのボリュームだったんですが、毎日50頁(土日で150〜200頁)ほどしっかりと読み込んで、理解できない箇所はインターネットで調べる・・・という地味な学習です。
人事労務の知識が全くない私にとっては労働基準法、労働安全衛生法等、全てが新しいワードばかりで新鮮でした。国民年金や厚生年金保険は苦手でしたが、労働基準法や労働者災害補償保険あたりは労働者である自分にとって身近な分野であったため関心を持って学習できました。
この時期で大体5週くらい同じ教本をただただ熟読していました。

②理解確認の期間(1月〜3月)
自分の知識が少しずつ蓄えられていた実感があったので、ユーキャンの一問一答の問題集を購入して問題にチャレンジし始めました。
従来のテキスト熟読に加えて、合計10科目のうち毎日1科目問題を解きました。
当初は思っていたより正解しなくて焦っていた記憶があります。
「結構テキスト読んで理解していたつもりなのにな・・・」と毎日不安になっていました。
社会保険労務士試験の学習をされた方はご存知だと思いますが、社会保険労務士試験の問題は細かい数字や表現を問われることが多い傾向にあります。
よって、中途半端な知識を持って問題を解くと、自分が正解しているつもりでも間違っている・・・という状況が多発します。
社会保険労務士試験の怖さを感じ始めたのはこの頃です。
私はユーキャンのテキストの各単語を緑マーカーで塗りたくり、赤シートで隠しながら細かい表現を正しく述べることができるかチェックし始めました。
案の定、ほとんど回答することができませんでした(色々な単語が混在していた)。
私は深く理解することを目指して、ユーキャンのテキストを問題集のような使い方に変えていきました。

③絶望期(4月〜6月)
ユーキャンのテキストは何周も読みこまれ、マーカーだらけでボロボロになっていました。
自分の中でも理解が進んだ結果、ユーキャンのテキストは1日1科目をスピーディに読むことができるようになり、また大枠の理解はできてきたという自負がありました。
そしてこの時期にとうとう社会保険労務士試験の過去問題集を購入しました。過去問題集は自分に自信がついた段階でチャレンジをすると決めていたからです。
択一問題は試験時間が3時間以上あるので、休日メインで挑戦しました(平日夜にチャレンジする時は、答え合わせや解説読みも含めると夜中まで時間がかかり、次の日の仕事が辛かったです)。

しかし、ここであまりにも正解できず絶望します・・・

あんなに勉強したにも関わらず、50%くらいの正解率だった記憶があります。あまりにも悔しくて涙が出たこともありました・・・
社会保険労務士試験の挑戦者であればお気持ちが分かると思うのですが、択一試験は5択のうち2択くらいまでは絞れるのですが、そこから先が全く分からない・・・というパターンばかりに陥ります。まだまだ真の理解に至っていない・・・ということです。
毎日落ち込みながら、解説をしっかり熟読して、なぜ自分が正解まで至らなかったのかをしっかりと検証し続けました。

加えて、ずっと相棒だったユーキャンのテキストの代わりにTACのテキストを購入し、毎日1科目のテキスト読みも継続しました。
(理由はユーキャンのテキストに掲載されていない単元等があるかもしれない・・・という懸念から、2種類のテキストを読んでみようと思ったからです。結果的にはどちらのテキストも近しい内容で問題はありませんでした)
また、労働裁判の事例を学んだり、厚生労働省のホームページに掲載している厚生労働白書や労働経済白書を読んだり・・・と、一般常識を蓄えて行くことも意識していました。

④覚醒期(7〜8月)
社会保険労務士試験の日程が近付くなかでも、手応えがまったくない日々が続いていましたが、試験日1ヶ月前くらいから覚醒したことを覚えています。
今まで正解を絞れなかった問題に対して、自信を持って回答できるケースが増えてきます(繰り返し問題を解いていることもありますが)。
無理くり詰め込んできた知識が整理されてきた感覚がありました。
テキストはまたユーキャンに戻っていました。
ほぼほぼ理解できていたのですが、せっかく得た知識を失わないようにテキスト読みは試験まで欠かさず行い続けながら、過去問題集も繰り返しチャレンジしました。
また、一般常識で足切りにならないよう、社会保険労務士試験対策のホームページで法改正情報をチェックすることに時間を費やしました。

⑤社会保険労務士試験
私は地方在住だったので、前日に試験地である福岡県博多市に前乗りして、ゆっくり過ごしました(どこかのラーメン屋で豚骨ラーメンを食べた記憶があります)。
試験当日はとても緊張しました。人生でここまで本気で勉強したことはありませんでしたので、この努力がたった1日で水の泡になるかもしれない・・・と思うと怖くて堪らなかったです。
択一試験が始まっても頭が真っ白で文章の内容が最初は入ってこなかったです。最初の5分くらいはほとんど問題を解けませんでしたが、このままじゃ絶対に落ちる・・・と自分を奮い立たせてからは意外に落ち着いて問題を解くことができました。
択一試験の最初の科目である労働基準法が自分の得意分野だったことも良かったかもしれません。択一試験が終わった後は「これは大丈夫だ」と思えるくらい手応えがありました。
午後の選択試験も、1科目を除き自信を持って回答することができ、自分の中では最高のパフォーマンスを試験本番で見せることができました。
(夜のインターネット速報で自信が無かった1科目も合格ラインの3点を確保していることが確認できた時は、珍しく家でひとり酒を飲みました)

そして、2011年11月に社会保険労務士試験の合格発表で、無事合格を確認することができました。

社会保険労務士試験学習の学力推移

5 大切なこと(まとめ)

こちらが私の社会保険労務士試験の合格体験記です。運も大きかったと思いますが、1回目の挑戦で合格できたことは自分にとっても大きな自信につながりました。

最後に私が独学で社会保険労務士試験に合格できたポイントを自分なりに整理します。

  • 1日も休まず学習を継続した

  • 毎日学習する内容を決めていた

  • 同じテキストを繰り返し使用し続けた

  • 1日の学習量にこだわりスピード感を持って取り組んだ

  • 絶対に社会保険労務士になる・・・という想いを持っていた

社会保険労務士試験は試験範囲が膨大なため、少しずつ学習をした場合、再度その分野を学習する頃には何も覚えていない・・・というケースが頻発していました。できる限り量を回す、そして同じことを繰り返す・・・という学習方法が自分には合っていました。

(絶対に社会保険労務士になる・・・という想いを持ったきっかけをお話する機会も別途いただければと存じます。)

私の至らない長文にお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。

私の取り組みがみなさまのチャレンジの参考になり、いつか同じ社会保険労務士としてご一緒できる機会を願っております。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?