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障害年金申請を社会保険労務士に依頼するメリットはあるのか?

1 はじめに

障害年金は病気や怪我によって、生活や仕事などが制限されるようになった場合に受給することができる年金です。
障害年金には、①障害基礎年金 ②障害厚生年金 の2種類があり、病気や怪我によって初めて医師の診療を受けた日(初診日)の国民年金、または厚生年金の加入状況によって請求可否が判断されます。

突然の病気や怪我で生活環境が変わることは、ご本人だけでなくご家族にとっても大変心配なことと容易に想像ができます。
(仕事を休職したり、場合によっては退職するケースもあるかもしれません。)
障害年金はセーフティネットとして国民の生活を支える役割を担っており、障害年金を受給することで、金銭的な観点だけでなく、精神的にも楽になり、日常生活や就労状況にも良い効果をもたらすことが期待されます。
私としても、この社会保障制度を有効活用し、前向きに日常を過ごすことができる方が1人でも増えていくことを願い、1人でも多くの方をご支援したいと考えています。

しかし、障害年金制度は知名度は高い・・・とは言えません。
(年金=65歳から受給できる老齢年金・・・というイメージが強い)
障害年金は「請求することで初めて受給することができる(もちろん障害認定されることが条件)」制度のため、障害年金を受給できるほどの障害が残存しているにも関わらず、請求の申請をしないまま時間が過ぎていく・・・というケースが考えられます。
(ご勤務先や医療機関の理解も濃淡がございます)

また、障害年金の申請は初見の方にとっては大変複雑なイメージを持たれるかもしれません。申請書類を作成するにあたっては、ご自身だけでなく医療機関の協力も必要です。また、ご自身の傷病が障害年金の認定に値するのか否かご不安な気持ちを持ったまま手続きの準備を進める・・・という心労もかかることと思います。

そのような問題を解決するために社会保険労務士へ障害年金の申請を依頼する方が一定数いらっしゃいます。
「障害年金」とGoogleで検索すると、障害年金専門の社会保険労務士事務所がGoogleの広告として何件も表示されています。
「数多くの事務所が障害年金の申請代行のPRをされていることで、かえって社会保険労務士に依頼することを躊躇する」・・・というお声を伺った機会があったことから、私も社会保険労務士の立場ではありますが、障害年金の申請を依頼することのメリットについて整理をすることとしました。


2 障害年金の実態を理解する

社会保険労務士に障害年金の申請を依頼するメリットにつき整理する前に、先ずは、障害年金の実態を理解することが重要です。
これらのポイントを参考にすることで、ご自身で申請手続きをするか否かのイメージが少しずつ沸いてくるかもしれません。
(次の章で社会保険労務士に依頼することのメリットを整理しますので、本章の内容と比べてみることをお勧めします)

(1)障害年金の認定における重要項目

障害年金の認定を受けるには以下の3点を「すべて」満たす必要があります。

①初診日の特定
年金の加入期間中に、障がいの原因となった病気やケガで初めて医師等の診療を受けた日を特定することが必要です。
初診日はカルテで特定が可能ですが、カルテの保存期間(5年)を過ぎて初診日を特定できない場合には、転院先や第三者情報等で初診日を特定できる情報を探す必要があります。

保険料の納付要件
保険料の納付については、以下2点のうちいずれかに該当している必要があります。

  • 初診日の前日時点で初診日の前々月までの年金加入月数の3分の2以上が保険料納付済みか免除されている月であるとき

  • 初診日の前日時点で、初診日の前々月までの年金加入月数の12カ月すべて保険料納付済みか免除を受けた月であるとき

つまり、年金保険料の未納が続いている方が、傷病が発生してから遡って保険料を支払ったとしても、納付要件を満たすことができません。

③一定の障がいの状態にあること
後遺障害の認定基準は公表されています。

(参照:日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」)https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/ninteikijun/20140604.html

「両上肢の全ての指を欠くもの」という明確な基準もありますが、「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、 日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの」という曖昧な基準もあります。
残存する障害によっては、後遺障害を認定する組織が適切な判断ができるような資料を丁寧に整える必要があることをご留意ください。

(2)障害年金の認定状況

令和4年9月、厚生労働省年金局日本年金機が公開している「障害年金業務統計」では、新規裁定における決定区分で障害認定非該当は7.8%と紹介されています。

(参照:障害年金業務統計)
https://www.nenkin.go.jp/info/tokei/shuyotokei/shuyotokei.files/r03.pdf

つまり90%以上の方達が障害年金の受給権を得ていることになります。

もちろん傷病によって非該当割合は大きく異なります。

  • 精神障害と知的障害 非該当6.1%

  • 内部障害(呼吸器や循環器の疾患等) 非該当31.1%

  • 外部障害(眼や肢体等の障害) 非該当15.2%

「後遺障害の認定割合が高い=申請のハードルが低い」と判断することは浅はかかもしれません。
しかし、障害年金には曖昧な基準もあるものの、一定の認定基準や手続きフローは共有されているという事実はご理解いただけますと幸いです。

(参考:厚生労働省が紹介している障害年金に関するパンフレット一覧)
https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kyufu.html#cmsshogai

(3)社会保険労務士への報酬

障害年金の申請を社会保険労務士へ依頼する場合、以下のような項目で費用のお支払いをする必要があります。
(各事務所によって方針は異なることをご理解ください)

①着手金
社会保険労務士へ依頼する際にお支払いする費用です。
2、3万円〜5万円くらいが相場という認識ですが、着手金が無料の社会保険労務士事務所も一定数ございます。

②成功報酬
無事、障害年金の受給が決定した際にお支払いする費用です。こちらの費用が主なものになることから、社会保険労務士と契約する際にご確認いただきたい項目です。

(成功報酬の主な例)

  • 支給される年金月額(配偶者や子の加算分を含むケースが多い)の2〜3ヶ月分

  • 初回に振り込みされる年金額の10〜25%

  • 固定金額で○○万円

上記のいずれかの条件を設定し、その計算式の中から「1番高額」なものを成功報酬として定めているケースもございます。

③必要経費
郵送費や電話代、調査にかかる交通費、医療機関等への同行報酬等、申請に必要な資料や情報を取得するための必要経費をお支払いする必要があります。
着手金をお支払いすることで、上記費用の一定額を請求しない・・・というケースもございます。

依頼主さまの状況によりけりではありますが、障害年金の申請を社会保険労務士に依頼し、無事受給決定した場合、少なくとも20万円近くの報酬を支払うものとご理解ください。

なお、医療機関への文書料の支払い(診断書・受診状況等証明書の証明書)
も依頼主さまのご負担になることをご留意ください。

これらの状況を理解した上で、社会保険労務士へ障害年金の申請を依頼することにメリットがあるか・・・につき、私見を述べたいと思います。


3 社会保険労務士に障害年金の申請を依頼するメリットはあるのか?

結論から申し上げると・・・やはり、社会保険労務士へ依頼するメリットは大きいと言えます。
しかし、数十万円の報酬は決して安いものではありませんので、ここからは各メリットをご紹介すると同時に、社会保険労務士へ依頼する必要ないタイプの方も合わせてご紹介して参ります。

(1)申請手続きの時間を削減できる

障害年金の手続きをご存知ない方にとって、申請の準備をご自身で進めることは大きな負担に繋がります。
調べものに多くの時間を費やしたり、手続きのやり直しが発生したりすることは肉体的にも精神的にも疲弊します。
社会保険労務士へ申請を依頼することで、これらの課題をクリアすることが期待できます。
しかし、比較的時間のゆとりがある方にとっては、このメリットは魅力に感じないかもしれません。障害年金を申請する際の相談窓口を活用し、少しずつ準備を進めることも問題はございません。

(2)申請内容の精度を高めることができる

障害年金の認定において何より重要なことは「一定の障がいの状態にあること」を証明できることであり、お医者さまが作成する「診断書」の内容にかかっていると言えます。
なお、お医者さまは医療のプロではありますが、文書作成のプロではありません。よって、診断書の作成をただ闇雲に依頼するのではなく、適切な診断書を作成できるよう、患者さま側も日頃から情報を提供し続ける必要があります。
(お医者さまは患者さまの日常生活をご覧になっている訳ではありません。患者さまが普段どのような点に苦労されているかは、意識的に伝えていくことが大切です)
社会保険労務士は患者さまの実態を理解した上で、その実態に即した内容が反映された診断書をお医者さまにご作成いただけるよう尽力します(医療機関の特性を理解している社会保険労務士も存在します)。
後遺障害認定が非該当であった場合、異議申し立て自体は可能ですが、一旦下された判断を覆すには一定ハードルが高いことは言うまでもありません。

しかし、前述しました通り、「両上肢の全ての指を欠くもの」といった明確な認定基準の障害を負っている方にとっては、非該当のリスク自体はほぼないものと言えますので、ご自身で手続きを進める上でも問題はございません。

(3)心の拠り所になる

社会保険労務士と二人三脚で後遺障害の申請を手続きすることで、認定結果が出るまでのご不安な気持ちはいくばくかは安らぐことが期待できます。
また、社会保険労務士は障害年金の手続きに限らず、障害者手帳や労働者災害補償保険(業務災害や通勤災害による傷病の場合)、健康保険等の観点からでも、患者さまにとって有益なアドバイスを提供することが可能です。
障害年金の手続きは、社会保険労務士と長期的なお付き合いになることから、手続きの依頼のみに留まらず、社会保険労務士の存在が心の拠り所になるケースも多いと言えます。

4 最後に

障害年金の手続きにおける実態を共有した上で、社会保険労務士へ障害年金の申請を依頼するメリットにつきご紹介しました。
障害年金は基本的に長期間受給することができるもので、患者さまの人生・生活設計に大変大きな影響を与えることでしょう。
今回ご紹介しました内容をひとつの参考情報として、障害年金の申請方法につきご検討をいただけましたら幸いでございます。

最後にPRになりますが、神庭社会保険労務士事務所でも障害年金の申請依頼を承っています。
これまでのキャリアで医療機関と豊富なコミュニケーションを築いてきたこと、幅広いコネクションを持っていることを強みにしています。
まずは無料WEB相談からお気軽にご相談ください。
(障害認定のハードルが低いケースの場合は、ご自身での手続きを提案、または廉価版のサポートもご用意します)

(お問い合わせ先)
https://home.sr-kamba.jp/contact





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