ミラクルではなかったが、またミタクナル大分トリニータ!

 天皇杯第101回全日本サッカー選手権大会。コロナ禍の中で、静かな応援を強いられた中、新国立競技場で5万7千人を超える観衆を集めた。確かに、浦和レッズの赤いサポーター軍団が圧倒的な存在感を示していたが、決して、大分トリニータはひるんでいなかった。

 立ち上がりこそ、大分トリニータに固さが見えたものの、前後半を通じて、浦和レッズに決定機を数多く作らせなかった。準決勝の川崎フロンターレ戦よりも出来は良かったとも言える。強いて言えば、大分トリニータには「経験」という力が足りなかったと言えるのでなかろうか?

 立ち上がり、硬さの目立つトリニータは、浦和の圧力にじりじりと下がりセカンドボールをことごとく浦和にとられてしまった。こうなると、ディフェンス陣も足が動かなくなる。そのスキを浦和の攻撃陣が右から切り裂いていく、ペナルティエリア内で一時は大分のDF三竿がうまく体を入れてファールをもらったかに見えたが、審判はファイルと認めなかった。この審判の判断が、江坂の思い切ったミドルシュートにつながりボールはゴール隅に吸い込まれた。準決勝で神がかりのセーブを続けていたGK高木はいつもの高木に戻っていた。ディフェンスの集中した右サイドに自らも近寄り、ゴールマウスはがら空き状態となっていた。この時間帯、大分はボールしか見ていない状態に陥っていた。仮に江坂が決めなくとも、フリーになっている浦和の選手は3~4人はゴール前にいただろう。

 先制点を取られた段階で、大分トリニータの敗戦は濃厚かに見られた。しかし、1点とられてからの大分トリニータは、全半の中盤までこそ堅さがみられたものの、徐々にトリニータらしさを取り戻していく。中盤から後半にかけては、五分五分の戦いに持ち込んでいった。そして徐々に得点の匂いがしてきたものの、決定機をなかなか作れないで時間だけが進んでいった。

 起承転結とうが、浦和の得点で始まった「起」から「承」はながながと続き、このまま浦和が押し切るかと思われた終了間際に「転」「結」のクライマックスは最後の最後に待っていた。まるで、準決勝の延長戦の再現をみるかのように、準決勝とは逆の左からMF下田の見事なやわらかいクロスが弧を描き、これをペレイラが頭でゴールマウスにたたき込んだ。さすがのGK西川も反応ができない見事なゴールとなった。

 これで、延長戦に突入と思われたロスタイム、今度は、コーナーキックをトリニータDFエンリケがヘッドではじいたボールに、前が開いたトリニータのゴールに向けて、MF柴戸がダイレクトボレーで振り抜いた見事な右足のミドルシュートに退団が決まっているDF槙野がこれまた見事に合わせ方向を変えてゴールの中央部にボールを突き刺した。槙野が触っていなかったら、高木は確実にセーブできたポジショニングだった。全く、いいところをお祭り男槙野が持って行ってしまった。大分トリニータのミラクルドリームは万事休す。

 しかし、天皇杯で見せてくれた大分トリニータのパフォーマンスは、語り継がれるものとなったのではなかろうか。浦和のGK西川は、大分出身で、トリニータジュニアを経て大分トリニータでプロをスタートさせた。槙野も西川の言葉に押されて前でゴールに絡んだとのこと。これも大分がらみだ。

 片野坂監督が大分トリニータを去り大分でのカタノサッカーが見れなくなるが、GK高木、MF町田、MF下田はすでに残留を決めている。これにDFペレイラ、エンリケなどが続けば、J2でも期待が持てる。1年でのJ1復帰を果たし、再び、トリニータマジックを見せて欲しいものだ。また、ミタクナル大分トリニータと思わせる、新国立競技場で初めての天皇杯決勝だった。

※一部選手名が違ってるかも?許してくださいな。


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