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[高校生や学部生の方へ]論と計の科学とは何なのか、そしてそれは高校生・学部生のあなたに何を与えるのか?

近年、学問や社会の様相は急速に変化しています。その中で、数理論理学と理論計算機科学がこれから重要になると論計舎では考えています。両学問は様々な意味で一体であり、われわれは両者を合わせて「論と計の科学」と呼びます。この記事では、論と計の科学を紹介しながら、あなたがこれを学ぶことにより学問や仕事、人生に独自の視座という強みを得られることを提言していきます。

論と計の科学

論と計の科学について強調したい側面: 規則

まず、数理論理学も理論計算機科学も、規則に従って振る舞う現象を記述する数学という側面を持っています。この両者は推論と計算という表裏一体にあるものを数学的に分析しているのです。

論と計の科学と確実性

推論には帰納と演繹の二種類があると聞いたこともあるでしょう。論と計の科学が扱うのは演繹の方です。
帰納は、個々の特殊な現象や事柄から一般的な原理や法則を導き出す手法です。AIや統計処理の進化は、コンピュータによる帰納的推論の会得と言えるでしょう。しかし、帰納の弱点は確実性に欠けることです。それに対して演繹は、一般的な原理から具体的な事実を導く手法であり、確実性が保証されています。

AIや統計処理が大きな影響力を持つこれからの社会で、確実性の保証は極めて重要です。そのため、論理学や計算機科学の知見を活用することが必要となると考えています。

それでは、どのような強みが得られるのか考えていきましょう。

論と計の科学がもたらす強み・独自性

学問にとっての論と計の科学

「論と計の科学」は、さまざまな学問領域においても有益な手法です。

法学には、人間行動における法則つまり「法」とはなにか、またその法則に対して存在する「法律」とはなにかの分析という側面があると思われます。そうであるところ、民法にせよ刑法にせよ、ある物事の結果に対する因果関係が問題となります。このような因果関係の証明プロセスにおいて、論理的な繋がりの整理は不可欠です。また、判決文が何故説得力を持つのか、という点についても実は論と計の科学との関わりが強いのです。従って、法学部を志望する、または現在、法学部で学ぶ方々も論理学に是非取り組んでみてください。そうすることで、あなたは他の方にない独自の視座と強みを得られるでしょう。

もう一つ論と計の科学と密接な学問を紹介しましょう。言語学です。
人間は、ことばの持つ「意味」やそこに込められた「意図」を理解できるという能力を持ちます。この能力はどのような仕組みを持つのでしょうか?言語学の中でも形式意味論という分野では、上述の問いに対して言語学的なアプローチで答えようとします。さらにそこには数理論理学と理論計算機科学の、つまり論と計の科学の考え方が用いられています。言語現象を、論と計の科学により、統一的に説明できるかもしれないですし、その背後にある構造を追求できるかもしれません。というのも、言語現象は規範や規則に関連する現象だと考えられているからです。

他にも、人間の営為の中に規則に従ったものは普遍的に存在します。したがって、論と計の科学は、多くの学問分野で優れた知見を提供していくでしょう。

しかしながら、論と計の科学は注目を集めているとは言い難いのが現状です。だからこそ、数理論理学や理論計算機科学を学ぶことはあなたの相対的な学問的強みとなると信じています。

現代社会一般と就活・就業にとっての論と計の科学

学問を離れても論と計の科学は有用だとわれわれは信じています。

数理論理学は、さまざまな「論理的正しさ」を相対化し、数学的に分析します。就活や就業においては「ロジカル・シンキング」という言葉が頻繁に使われますが、その「ロジック」は一つだけでしょうか?
論と計の科学を通じて、論理的な正しさに対して相対化された視点を得て、その視点から考えることで思考を整理し、より柔軟に対応できるかもしれません。

法律の条文作成者が論理学の基本事項を知らなかったことにより、条文内に論理的誤りが含まれたことがあるそうです。ド・モルガンの法則をはじめとする論理学の極めて基礎的な知識を持っていれば、この誤りを避けれたはずでしょう。
また、自動運転の実用化においても、論と計の科学が重要になるでしょう。統計処理をはじめとする帰納的手法により自動運転の安全基準は策定されます。その基準や実際のプログラムの確実さを理論計算機科学の演繹的手法を通して保証・検証する必要があるでしょう。

もっと身近なところでも、演繹によって確実さを保証できる能力があなたに職業人や生活人としての独自の視点と揺るぎない基盤を与えるでしょう。
例えば、現代においては、AIが資料作成やプログラミングすら行う時代です。しかし、彼らの生成物を正しく読解する能力はますます重要となっています。
さらに、先に述べた通りにコンピュータが帰納的推論をエミュレートできるようになったからこそ、帰納とバランスをとりながら演繹を、確実性の保証であったり判断や推論自体の効率化のためだったりに、活用できることがあなたを基盤が確固とした独自の強みになるでしょう。

おわりに

このように論と計の科学は学問の場だけでなく、現代社会において広く大いに役立つものです。しかしながら、決して注目されていないからこそ、この分野に関心を持つことは個人の成長や社会の発展につながると信じています。ぜひ「論と計の科学」の世界に飛び込んで下さい。

本記事を書くにあたって助言をくださった方に感謝を申し上げます

数理論理学と計算機科学のオンライン私塾論計舎の代表。論と計の科学についての情報を発信していく予定です。