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SQUA的連載コラム

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沖縄で暮らすひとびとの、日々のものがたりと、思うこと。
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2020年6月の記事一覧

vol.001 『ヌンちゃん』

プラウマンズランチベーカリーをオープンして間もない頃の話。 店の隣にはとても物腰の柔らかい、初老のアメリカ人が住んでいた。奥さんは20代のタイ人で、しばらく「ご夫婦ですか?」と聞けなかったことを覚えている。 ある日、奥さんがフェンス越しに、「人手は足りているか?」と聞いてきた。 オープンして1ヶ月。お金は無く、寝る間も惜しんで働いていた時期だったので、手伝ってくれるなら是非! と思い話を聞くと、どうやら奥さんの姪っ子がタイから3ヶ月ほど遊びに来るから、うちの店で社会勉強

tram po line , 002

Nanjo , Okinawa 2017 【大城 亘 プロフィール】 写真家。沖縄県糸満市出身。東京代官山スタジオ勤務後、写真家大森克己氏に師事。2006年独立。2011年より故郷沖縄に拠点を移し、様々な媒体で活動中。

vol.002 せまりくるパラダイス

竹富島には食材や日用品を販売するスーパーマーケットやドラッグストア、コンビニなどは存在しない。小さな商店が数軒あるが、大抵の買い物は石垣島に渡って行う。 先月の自粛期間中は、石垣島へと渡るフェリーも減便され、気軽に買い物へ出かけられなくなった。 そんな中、私の暮らす集落のお母さんグループLINEでは、「今日、意を決して石垣島に買い物に出ます!必要な物がある人は、遠慮なく連絡ください!」というメッセージや、「夕方5時〜6時の間、野菜や惣菜を販売します。豆腐なども前日に注文した

【犬、哲学をひろう】 01 / 変わる

はじめに。 お読みくださりありがとうございます。コピーライターの中山理恵です。私は、クライアントをはじめとする様々な方の話を伺い、その方が考えていることや伝えたいこと、その世界観を、広告や各種メディアの文章にする仕事をしています。ある時ふと、話が面白い方には共通して「その人が自ら手に入れた哲学」があることに気づきました。その哲学こそ、いまこの世界にとても必要なものだと。 セソコさんからSQUAで連載を、というお話をもらったとき、「哲学で何かしたい」と思いました。「犬、哲学

tram po line , 001

Itoman , okinawa 2014 【大城 亘 プロフィール】 写真家。沖縄県糸満市出身。東京代官山スタジオ勤務後、写真家大森克己氏に師事。2006年独立。2011年より故郷沖縄に拠点を移し、様々な媒体で活動中。

vol.001 ポップソングはソプラノ調で

娘のうしろ姿を追うように、毎日お散歩へ出かけたのは、コロナウイルス感染予防対策の為に学校が臨時休校となった今年の春だった。 色々なことがカタカタと音を立てるように形を変えていった。 仕事も、学校も、日々の過ごし方も、全部。 いつもと変わらなかったのは、それらをとりまく島の自然と娘の鼻歌だった。  娘が今よりもずっと小さかった頃、毎日のように島をお散歩していたことを懐かしく思い出した。 あの頃は、5分でたどり着ける場所に1時間かけて到着するという気が遠くなるようなお散歩をして