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SQUA的連載コラム

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沖縄で暮らすひとびとの、日々のものがたりと、思うこと。
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記事一覧

vol.012 シロと見上げた夕空で

「どこまでもあきんどでありたいんよ。横の繋がりより何より大切なのは、私を食べさせてくれる目の前のお客さんじゃけん」 岡山県出身の大野華子は、2018年に沖縄へ移り住み、宜野湾市内に2店舗の飲食店を開業した。 海を望む閑静な住宅街に佇む「ソウエイシャ喫茶室」では、ナポリタンやオムライスなど、昔ながらの喫茶メニューを様々楽む事ができる。白を基調とする店内にはアンティークの木製家具が並び、壁一面のガラス窓からは燦々と陽が差し込む。 一方、廃れた社交街の雑居ビルに佇む「月を詠ム

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vol.040 再会

「東京行きたい」と娘が頻繁に言葉にするようになったのは昨年末ぐらいからだった。 私はコロナ禍でも一昨年前から母の顔を見に関東へと出向いていたが、娘は3年近く関東に住む親戚に会っていなかった。新型コロナウイルスの感染が心配だからと休みの度に「東京は、また今度ね」と先送りにしていた。 そんな中、今年の春休みは、1週間ほど母の家と姉の家へと行ってきた。旅好きな私に連れられて以前は飛行機に頻繁に乗っていた娘だが、「わ〜。飛行機ひさびさ過ぎてこわ〜い!」などと出発前は少し緊張気味だ

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vol.039 工房風花

北海道出身の中里ゆきさんは20代の頃、農業に携わる仕事をしていた。西表島との最初の出会いも、サトウキビ刈りのアルバイトで来島したことがきっかけだった。 20代後半の頃、腰を痛めたことがきっかけで、働き方について考えるようになったゆきさんは、以前から興味のあった陶芸への道を歩むため、益子にある職業訓練校へ通い、陶芸の経験を積んだ。 2年ほど経験を積んだのち、沖縄県読谷村の窯元へと弟子入りして本格的に陶芸と向き合う日々を過ごした。 5年半ほどたった頃、独立を考え始め、読谷村

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vol.038 タマリンド食堂

タマリンド食堂の永田かな子さんと出会ったのは、5年ほど前のこと。 2017年、かな子さんは石垣市内にスパイスカレーのお店「タマリンド食堂」をオープンさせた。私もカレーを食べに行く島民の中の1人だった。オープンから1年半が経ったころ、かな子さんの子どもがまだ幼く手がかかったことから、もう少し静かな場所に移転したいと思うようになり、2018年の末に店を閉めた。その後は、プライベートや結婚式などでの出張ケータリングサービスや、オフィスへのお弁当販売、カレーのレトルトパック製造など

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vol.037 ボーイフレンド

昨年末に、久しぶりに会う友人と石垣島でランチをした時のこと。 友人「私、好きな人ができたの」 私「えっ?!」 恋愛とか、付き合うとかそんな言葉からかなり離れたところで生きている私にとっては、なんだか違う国の言葉を聞いた気分になったが、抑えきれないような溢れる笑顔で話す彼女を見ていたらなんだかこちらまで一緒に浮き浮きした気分になってしまった。 5年ほど前に前夫と別れて以来初めて恋に落ちたらしい。 私「どこで出会ったの?」 友人「マッチングアプリ」 私「えっ!」

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vol.036 記憶

1年ぶりに関東で1人暮らしをする母を訪ねた。 数年前から記憶が薄れていく症状を発症している母は、昨年よりも熱心に、忘れてはいけない情報を卓上のカレンダーと戸棚の内側に貼ってあるカレンダーに書き込んでいた。それでもやっぱり忘れてしまうので、私から伝えられることは、その都度くりかえし伝えた。  使い込んだカメラは塗装が禿げて味がでたり、長年愛用した壊れかけのラジオや扇風機は、トントンっと角を叩くと「よっこらしょ」と動いたりして、その頑張りを褒めたくなるものだが、人も長年生きて

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vol.035 人と縁と時間と

ここ1週間ほど、出会いと再会の日々を送っている。  先週は仕事で竹富島から沖縄島へと行っていた。撮影の依頼主とは何と20年ぶりの再会だった。 私をSNSのInstagramから見つけだしてくれての撮影依頼だった。 私には20年前の記憶はあまり残っておらず、撮影を依頼してくれた本人と再会するまでは初対面の気分でいた。再会後にようやく当時のことを少し思い出すことができた。お互いにコツコツと続けてきた自分たちの仕事で繋がれたこと、そして何よりも私のことをずっと記憶していてくれ

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vol.011 ただよう気配に言葉をのせて

沖縄本島北部にある本部港からフェリーに乗り、伊江島にやってきた。 農地が延々と広がる穏やかな島を巡ると、自家製の登り窯で唯一無二のやちむん(焼き物)を生み出す陶芸家や、おばあたちが繫いできた文化を途絶えさせまいと「アダン葉帽子」の継承に尽力する編み手たちに出会う事ができた。 そんな素晴らしい手仕事の数々に魅了されっぱなしの旅だったが、今回僕が取材していたのはこの方だ。 セソコマサユキさん。 これを読んで下さっている方の中には、その名をご存知の方も多い事だろう。 当コラ

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vol.34 島のハロウィン

毎年この時期になると「英語で遊ぶ会」の子どもたちに、「もうじきハロウィンだけど何したい?」と聞いている。カボチャのクッキー作りをしたり、仮装をしてTrick or Treating に出かけたりしている。 今年も仮装した子どもたちを連れて、あらかじめお願いしておいた家々をTrick or Treating してまわってきた。途中、計画していなかった嬉しいサプライズもあった。集落を歩いていると、観光会社の事務所から「なにやっているの?」とお姉さんたちが出てきてハロウィンの仮装

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vol.033 雨の日

八重山の南の方を通過していった台風の影響から雨の日が続いている。 外撮影などの予定が入っていなかったので、心置きなく「雨の日は良いな」と雨音をBGMに室内作業に没頭している。ここ数日は、ネガフィルムのスキャンデータからプリントを作るためのデータを作成する作業をしている。大判のプリントになる為1つ1つ埃を取り除く作業に永遠の時間を費やしている。気が遠くなるような作業ではあるけれど外が薄っすらと暗い雨模様だったことで心が落ち着き作業がはかどった。 昨年末に友人の紹介で、197

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vol.032 ピクニックしながら英会話

娘が5歳ぐらいの頃から、島の子どもたちを対象に「英語で遊ぶ会」を開いている。 ひとりっ子の娘にお友だちと遊ぶ機会を作ろうと思ったことが始まりだった。小さい子どもを机に座らせ英語のお勉強をさせることに抵抗があった私は、友人や知人に「もし自分が子どもだったら、どんな英語教室に通ってみたい?」と聞いてまわった。その中でアイディアをもらったのが、「ピクニックしながら英会話」というものだった。これは大人でも楽しいと思った。せっかく竹富島のような自然豊かな環境の中で育っているのだから、

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vol.031 心の目

7月ごろから人を撮影する仕事が重なっていた。このご時世、人に会うのは気をつかい、親しい友人にもなかな会えない。そんな時期に仕事とはいえ対面で人に会う機会が重なったのは心配もあったけれど、素直に嬉しかった。 先日SNSのタイムラインに人類学者の山極壽一先生のインタビュー記事が流れてきたので気になり読んでみた。その中で、「共感を向ける相手をつくるには、視覚や聴覚ではなく、嗅覚や味覚、触覚をつかって信頼をかたちづくる必要があります」と話されていて、記事を読みながら深く頷いてしまっ

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vol.010 暮らしの蕾

沖縄市は園田という集落にある、一軒の古民家へやって来た。 庭で月桃(げっとう)を収穫していたのは、吉本 梓(よしもと あずさ)さん。彼女はここで、主に月桃を用いた物づくりをしている。 ウチナーンチュにはお馴染みの月桃だが、県外の方は聞き慣れないかもしれない。桃色の小さな蕾をつける、沖縄に自生するショウガ科の多年草だ。 ポリフェノール豊富な実を煮出して健康茶にしたり、防虫・消臭効果のある葉でムーチー(餅)を包んだり、精油を抽出してアロマにしたり… この島の暮らしに古くから

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vol.030 奈央ちゃん

高林奈央ちゃんは、焼き物屋の夫の一番最初のお弟子さんとして月に一度ぐらいの頻度でお手伝いに通ってきていた。約10年ほど前のこと。 石垣島から竹富島に日帰りで通ってきていたこともあったが、数日間泊まり込みでお手伝いにきていたこともあった。そんな時は、朝ごはんや晩ごはんを共にするのが嬉しくて、あれやこれやとテーブルに料理を並べては奈央ちゃんの嬉しそうな顔を見て楽しんでいた。 娘が生まれて1年目ぐらいに、子育ての疲れから免疫力が落ちてしまい肝臓周辺の炎症をおこしてしまった。1週

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