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【鋤】お灸とデザインとわたし

皆さまはじめまして、京都で『新町お灸堂』というお灸の治療院をやっています鋤柄(すきから)です。開業してからこの5年はお灸お灸の毎日でしたが、最近はデザインにも興味津々。お灸の鋤柄改め、お灸×デザインの鋤柄です。以後お見知りおきを。

さて、このブログはメンバーが自発的に、またはテーマを振られて情報を発信している。今回は先の記事を更新した横山氏より「お灸とデザインとわたし」というバトンをいただいた。こんなのはmixi以来だね。「お灸」と「デザイン」については先日自院のブログにそれらしいことを書いたので(「お灸堂×デザイン」)この記事では「わたし」の比率多め版で「お灸とデザインとわたし」についてお話したい。なぜ「お灸」と「デザイン」だったのか……?

1.ようこそ「べき」の世界へ

同じ業界に長くいると業界特有の「べき」に染まってしまうことがある。「べき」とは業界に蔓延する「これが正解だ」という風潮(本当かどうかは別にして)のことを指す。「べき」のなかには少しばかり正しさのエッセンスが含まれているので迷える人々は自然とそちらへひきつけられる。正しさは強い。きっと正しいものは自分で主体的に選ぶ必要がないからだろう。夢いっぱい、希望いっぱいで鍼灸師になったこの私も卒業する頃には目は曇り「べき」で頭の中がいっぱいのつまらない大人になり下がっていた。その当時私が考えていた「べき」はこうだ。

・鍼灸師たるもの古典文献に精通するべき
・鍼灸師たるもの個人開業するべき
・鍼灸師たるもの開業したら1000万円を稼ぐべき
・鍼灸師たるもの鍼灸で患者さんの悩みをなんとかするべき
・鍼灸師たるもの臨床だけではなく研究もするべき

たくさんの「べき」にしばられてべきべきになり、身動きがとれなくなっていた。「なぜそうするのか?」と問われても「そういうものだから」と返事をするのがやっとだ。理由なんかない。そうするべきだと思い込んでいたのだから。

2.「べき」から「すき」へ

こんなべきべき人間な私にも自分を振り返るタイミングがあった。きっかけは開業である。お灸堂を開院する前、私は一度往診専門で開業をしている。しかし、開業したものの仕事はほとんどなく、暇を持て余して一日の大半を自宅で家族と過ごしていた。お金はないからやることといえば勉強するか、内省するかぐらいである。忙しさは心を亡くすというが、暇は心を亡くさない代わりに悩みが大きくなる。あの時期があったから今があるとは思うけれど、あんなことはもう二度とごめんだ。

暇も半年、一年と続くといよいよ「べき」もゆらいでくる。なにせ「べき」では飯は食えないから。どこかのタイミングで別のベクトルへと頭が思考をはじめた。これが私にとってのターニングポイントになる。そもそも私はこの仕事に憧れて、私が好きでこの業界に入ったクチだ。「すき」で入ったはずなのに気が付けば「べき」に囚われていた(これを目的と方法が入れ替わると呼ぶ)。「べき」を「すき」に戻す作業をしようじゃないか。

なぜこの仕事を選んだのか?
どこが好きなのか?
自分が好きなものはなんなのか?

問い続けた中でキーワードとして残ったのが「お灸」と「デザイン」だった。自分の中でキーワードが決まった瞬間から、劇的ではないけれど世界の見方がちょっとだけ変わる。今まではマイナスをゼロに戻すためにやっきになっていたわけだから、ゼロからスタートする分には一応全部プラスにはなるわけでこれは大きな進歩だ。

3.「すき」を深堀してみよう

じゃあどうやって自分のキーワードを探すんだい? となると思う。私がよくしていたのは「すき」の深堀だ。自分が「すき」なものを寄せ集めて、それのどこが「すき」なんだろう? と考えて(聞いて)みる。良い年の大人ならそうやって集めていくとなんとなく傾向みたいなものが浮き彫りになるはずだ。私の場合は

「少数派」「シンプル」「ドキドキ」「温かい」「視点が変わる」

といった要素がそれにあたる。無意識にこういったものを選ぶ傾向がある。(先日も葉山の中華料理屋で無意識に麻婆ラーメンを頼んでいた)このエッセンスが集約した私らしいものが「お灸」と「デザイン」だったのだろう。そのベースの上に鍼灸が乗せることで自分らしい鍼灸師像が構築されていく。

 とはいえ、こんな作業は一人でやっても楽しいものではない。できれば信頼できる環境、仲間うちでやるのが良い。ひょんなことから参加したこのブログの母体でもあるSQ-SALONではそんなことが日夜行われている。「すき」を深堀すると自分への理解が深まるうえに、それを共有すれば信頼できる仲間ができる。あなたも一緒に「すき」を深堀してみませんか? すきからなだけに。(お粗末様でした)

【書いた人】
鋤柄 誉啓(すきから たかあき)
お灸と豚肉と家族を愛する人。お灸と東洋医学をデザインすることが個人的なテーマ。京都の居酒屋に出没します。
◆新町お灸堂
http://okyudo.com/
◆ふれあい灸活プログラム
https://www.felissimo.co.jp/shopping/I180782/I280783/GCD127845/?vf=01
◆きょうの灸せんせい
https://www.akitashoten.co.jp/comics/4253156436

このサロンの活動は鍼灸業界、その先にある社会をより良くしていくことに繋がると信じています。 活動の幅を広げる為のご支援をよろしくお願いいたします。