ひとつ、さよなら

ガラパゴス携帯からひとつ、メールが届く瞬間ありますよね。届いた相手の名前だけが見えるやつ。今じゃ既読とか未読がわかるようになっちゃって気軽になりすぎている。CDとか本とか今なんでもスマートフォンで完結してしまうから非常に悲しいですよ、紙の良さとかCDが擦れる音とかあー、もう今の現代には必要ないのかな、と。そう思わざるを得ない時代になってきたことを悲しいと思うのに自分だってサブスクリプションに入っている。映画と同じだ、青春が終わる音を立ててエンドロールも虚しく、しずかに文化も文明も消えていったのだ。

映画の半券ってぼろぼろになればなるほど味が出て好きなんですよ、このときあの人と行ったなとか簡単に思い出せるし、好きなんですよ。付き合ってもいないのに一緒にカップルが別れる映画を見たあの人は元気かなとかエヴァンゲリオンを見たのに逃げたあの人何してんだろとか。でも、言ってた、わたしの感性を狂わせたギターリストが『初期衝動は覚醒剤だ』と。原点に戻ったらどこへでも行けるんだろうな。くだらないやつなんか最初っからいなかったみたいに。だからもう2度とあの人は目の前に現れないんだろう。

本題、そう私の推しは結婚していた。それに8年間も何も言わず結局ゴシップとして起きたらネットに掲載されていた。ずっと涙が出るし思い出すだけで私はずっと苦しいのだ。結婚していたと知ってからもう3週間が経つ。それでも、今でもずっと好きだ。推しに出会い私の人生はまた変わっていろんな景色を見た。そんなにあったかくて優しい絵に描いたような王子様みたいな人ではなかったけど彼に出会ってから彼が私の全てだった。毎日起きてからは結婚してるっていうのが全て嘘だったらと考えているし通勤中も彼のことを考えている。結婚していたと知ってからより一層推しのことを考えるようになった。私はその結婚していたという事実に縛り付けられているのだ。

ねえ、私のこの世でたった1人の推しくん。わたし貴方と結婚すること本気で夢見たよ。貴方に可愛いと思ってもらいたくて化粧も服もね、たくさん買ってたよ。無理してでもたくさん会いたくて会いに行ったよ。ばかみたいだし、ううん、ばかなんだけど。結婚していたという現実にその努力は無駄だったよと言われて頭打ちつけられてる。推しくんと初めて目が合った時笑ってくれて本当に嬉しかったのに結局あの瞬間私と推しくんは正式にファンと演者になったんだね。遅かれ早かれわかっていたよ。そして結婚していた。今の私の年のころは奥さんと結婚していた。こんなファンでごめんなさい。推しくんの手を引くのは私が良かったよ。


この記事が参加している募集

#スキしてみて

526,895件

#眠れない夜に

69,479件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?