Google Workspace の(メールの)代替サービス

Google Workspace は 2006年2月に Gmail for Your Domain としてサービスを開始、その後 Google AppsG SuiteGoogle Workspace と名前を変えながらサービスの提供を続けている。

2006年当時、Google のサービスを使うには Gmail アカウントを取得するしかなかったが、Gmail for Your Domain によって自分で使用している独自ドメイン名を使っても(Google Account として)、Google のサービスを使えるようになった。

料金が異なるいくつかのプランが用意されていて、プランによって使える機能に差があるが、もっとも安い無料のプランでも Gmail(もちろん、独自ドメイン名で送受信できる)や Google Maps、カレンダーなど主要なサービスは使える。

2006年のサービスインからユーザ獲得のため、無料プランを用意してユーザを集めていたが、この無料プランでのサインアップは 2012年に終了し、以後登録するユーザは最低でも $4.99/月の有料プランから選択する仕組みに変わった。

しかし、2012年当時に無料プランで使用していたユーザは継続して使用することができていた。この 2006年から最大で 16年間、無料プランで提供していた Google Workspace が 2022年7月1日で終了、以後ユーザは有料プランに移行するか、アカウント削除するかを選択する必要がある。

私も所有する独自ドメイン名は Google Workspace に登録して Gmail を使っていたので、プラン変更か他社への乗り換えをする必要がでてきた。いま、日本で登録できる最も安いプランは 680円/月の Business Starter だが、これは 1ドメイン名あたりではなく、1ユーザアカウントあたりの料金である。エイリアスはカウントされないが、メイルボックスを共有しないユーザとして使いたい場合は、1カウントずつに 680円/月が必要になる。

もちろん、Gmail の優秀さは身にしみてわかっているし、自分は使っていないだけで Google の他の便利なサービスを使うことだってできる。しかし、Gmail でメールアドレスを維持するだけ、と考えると 680円/月の利用料金が安いとは思えなかった。いまアクティブなメールアドレスだけを有料プランに移行すると考えても、毎月数万円は必要になってくるので Google Workspace の利用継続は断念し、他社のサービスに移行することにした。

もし今後 Google が、Gmail の利用だけ、という限定的なプランを 100円/月くらいで提供してくれるなら、喜んで Google Workspace に戻りたい。

実を言うと、これと言って代替先に候補があったわけではない。Google Workspace無料プランを使えなかった独自ドメイン名利用者のみなさんが、どうやってメールアドレスを運用しているのか想像がつかないが、やはり Gmail が強力すぎてこれといってライバルサービスもなかったように思う。

ライバルの一つとして、Amazon が AWS で提供している、Amazon WorkMail というクラウドサービスがある。各ユーザ50GB のメールボックスを使えて Gmail のようなウェブインタフェイス、モバイルアプリも用意されているが、ほぼメールだけのサービスで $4/月は Google Workspace に比べて魅力ある価格とは思えない。こちらも同様で、メールボックスの容量は 10GB も要らないので $1/月から提供してくれれば、乗り換え先として候補に上がってくる。

私は独自ドメイン名の管理を、eNom (と表記したくなるが、いまは enom)というレジストラに任せている。どちらかというと価格重視のチープなサービスだが、独自ドメイン名なんていうのは取得してあとは毎年の利用料を支払えばいいだけのことなので安いにこしたことはなく、20年ほど enom を使い続けている。この enom の管理画面を見ていると、Email というサービスがあることに気づいた。

早速、enom Email のサービス概要を見てみると、ウェブのインタフェイスなども用意されているシンプルなメールサービスのようだ。もちろん、既存のメールクライアント(MUA)からも POP3/SMTP を使ってアクセスできる。料金の方は、ユーザごとに容量10GB のプランが $0.5/月、容量25GB だと $1.0/月、容量50GB だと $1.75/月となっており、私の求めている 10GB で 100円/月の基準を満たす。

ものは試しと思い、いくつかの独自ドメイン名で登録してみた。

独自ドメイン名を enom の提供する Nameserver で運用している場合は難しいことはなく、enom Basic Email のライセンスを購入し、割り当てたい独自ドメイン名を選ぶだけで良い。

独自ドメイン名の管理画面の、Email SettingsEmail Accounts を選べば必要な設定が DNS に反映され、しばらくするとルーティングが enom のメールサーバーに切り替わる。

自前の Nameserver を使っている場合はちょっとコツが必要で、同じように Email Settings の Email Accounts を選ぶが、DNS の MX レコードを追加しないといけない。

このあたりの設定のためのドキュメントがあまり整備されていないが、必要になる MX レコードの設定方法は、

IN MX 10 mx.(独自ドメイン名).cust.a.hostedemail.com.

となる。使用したい独自ドメイン名が example.net の場合、

IN MX 10 mx.example.net.cust.a.hostedemail.com.

と追加すれば良い。

ウェブメールのインタフェイスにアクセスする場合は、https://mail.hostedemail.com/ へアクセスする。

独自ドメイン名まるごとの転送(ドメインエイリアス)の場合は無料で使えるがこちらも設定が必要で、enom の Nameserver で運用している場合は管理画面の Email Settings で Email Forwarding を設定するだけで良い。

自前Nameserver の場合は、Email Settings で設定した上で、上記と同じ MXレコードを設定する。

ウェブメイルのインタフェイスに関しては、Gmail と比べると一昔前の ISP が提供するようなレベルのものだが、緊急で使う分には問題なく使えると思う。もちろん、POP3/SMTP でアクセスできるので使い慣れた MUA を使えば良いと思う。

もし、Gmail を使っているのであれば、外部のサーバを介したメールのやりとりもできるはずなので、設定してしまえば Gmail のインタフェイスでメイルを扱うことができるはずだ。

なお、メールサーバーの設定情報もなかなか見つからないところに書いてあるが、POP3/SMTP ともサーバ名は mail.enom.com で、ポートはそれぞれ 995(POP3)、465(SMTP)を使う。どちらも over SSL での使用が必要。(STARTTLS は不要)

2022年1月から enom Email を使い始め、約3ヶ月使ったが、いまのところ大きな問題点はなさそうなので、しばらく他の独自ドメイン名も含めて enom Email を使ってみようと思う。


さいごに


技術的な小難しい話題でしたが、最後まで読んでいただいてありがとうございました。

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