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映画「君を想い、バスに乗る」

 大切な人を亡くした後どんな行動を取るのか、あるいは取らないのか。いつか自分にも訪れるであろう別れに備えるように、そういった作品にはつい触れてしまいます。

 「君を想い、バスに乗る」は、妻を亡くしたおじいさんがバスでイギリスを縦断するという物語です。原題は"The Last Bus"なのですが、こちらの方がシンプルゆえに複数の解釈ができておもしろいと思います。上映時間86分と短めですが、十分に見応えのある作品でした。

 ただ、そこまで刺さらなかったというのが正直なところです。ひとりになったおじいさんが旅をして、いろいろな人と出会い、助け助けられ目的地へ辿り着く。流れは分かっていながらも感動しましたし、だんだんと明らかになっていくおじいさんの過去も切なく、涙する場面もありました。しかし、おじいさんの旅する様子が赤の他人によってSNSに晒されている、という状況がどうにも怖いと感じてしまいます。結果的に良い方向へ流れたからいいものの、自分の生活が知らぬ間に発信されるのはいかがなものでしょう。おじいさん本人はそう感じていないようなので私が口を挟むことでもないのですが、素晴らしい出来事として処理されるのは危険な気がしてなりません。

 女性に絡んでいる男性を止めようとした時、彼女は最初「お願いだからやめて。」とおじいさんを止めていました。事を荒げないのが最善だと判断した彼女に共感してしまい、どうしようもなく焦りを感じました。実際にこういう場面に遭遇したら、私にはなにができるのでしょう。目の前で傷つけられている女性を放置するのは心苦しい。しかし、この映画のように男性が怪我を負わせるほどの暴力をせず、他の乗客全員が自分の味方についてくれるとは限りません。最悪の事態を考えた時、物理攻撃に対抗する術のない私が真っ向から正義を振りかざしていいものなのか。映画に対してたられば論を語るのは無粋ですが、現実に即した物語である以上、いろいろと考えてしまいます。

 と、ここで下書きが終わっていたのですが、マイナスな感想なので途中でやめたのでしょう。せっかくなので記録として公開します。

 

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